2017/07/12 のログ
筑波 察 > あはは、思ったことをそのまま言ったわけだけど、
そのままよりかウソをついた方がよかったかな?

(目の前の少女は内心穏やかではないのだろう。それはなんとなく察した。
でも怒っているというより、もう少し沈んだような気分、とても言った感じか。
そんな相手に対して、ふわついた、いまいち誠意のない笑顔を見せる)

不便ってもんでもないよ。目が見えない代わりに能力が使えて、
その能力のおかげで見えない眼を補ってる。結果だけ見ればプラスしかないさ。
それでも不満みたいなものはあるけどねぇ。

(今となっては肉眼で見るよりも能力を使った方が「よく見える」ことだってある)

そうかい。じゃあ君は後天的な能力者か。
慣れてても、気にしないわけじゃないだろう?

(慣れたといえば聞こえはいいが、ある種の感覚麻痺と同じだ。
今この会話の種をまいたのは間違いなく自分だが、
後天的な能力持ちの気持ちはなんとなくわかっているつもりだ>

藤巳 陽菜 > 「まあ、謝るつもりがあったならもう少し言葉を選んでくれても良かったと思うわ。」

…今の表情をみたらそこまで真剣に謝るつもりもなかったのでは?
そんな気がしてならない。

「まあ、プラスならいいんじゃない?
 不便もないし、悪戯にスペースとって邪魔になったり
 見た目で異邦人って断定されたりもしないんでしょ?」

夜に目が見えないというマイナス分も補えるのであれば問題はないだろう。
確かに不便な時もあるだろうけど…。
蛇に変わった自分のその下半身に手を触れる。

「まあ。この四月に発現したばかりの新人よ。
 ええ、凄く気にするわよ。…正直、間違えてきた相手の第一印象は最悪になるわ。」

作った感じのする穏やかな表情でそんな風に言ってのける。
言われ慣れたと言っても最初の頃のよりは慣れたぐらいで不快な気持ちは変わっていない。
だから普段はなるべく、自分から人間である事を明かすようにしている。

筑波 察 > 今まで話した人たちにもそんな風に言われてきた。
たぶん誠実さとか、繊細さとか、そういうのが足りないんだろうねぇ。
4月か。まだ季節を一周していないなら、得意も不得意もわからないんじゃないかい?
まま、見た目に特徴があるっていうのは良くも悪くも不便だろう。

(「よくも悪くも不便」この言葉が意味するところはある種の皮肉であり、
その皮肉が向けられる対象は人間以外、
つまるところまだまだ一般的ではない存在に向けられるものだ)

そうだね、昼間は人間と何ら遜色のない生活を送っているよ。
この島に来る前だって黙っていれば「普通の人間」だったしね。
能力を持ったことでいじめられたこともないし、親に敬遠されたりもないよ。

(でも、自分にとってそれがある種の悩みでもあった。
明らかに他と違うというのに、分け隔てなく接してくる周りが不気味だった。
生き物として当たり前の反応を放棄しているように思えたこともあった>

藤巳 陽菜 > 「…そうね、少し話しただけでもかなり足りてないと思うわ。」

確かに繊細さも誠実さも足りてない。
割とズバズバ、ザクザクした感じのタイプだ。

「得意も不得意も分からなくて結構よ。
 私はこの異能を消すためにこの島に来たんだから。
 良くも不便てなによ?悪くて不便しかないわよこんな異能。」

きっと、不便である事の恩恵はある。同情や優しさを受けやすいという事。
でも、それを陽菜は無自覚に受けている。
陽菜には自分の異能の悪い部分しか見えていない。いや、悪い部分しか見ていない。

「それなら別に問題なく普通の暮らしも出来るじゃない。
 私は異能が発現してからすぐにこっちに来たから分からないけど…。
 向こうにいたらまあ、そう言う被害にはあってたでしょうね…。
 まあ、見た目に特徴がありますし?」

きっと、人は自分と違うものを受け入れない。
こんな姿では仲間に入れないに決まっている。
だから、普通の身体に戻らなければ元の場所には普通の生活には戻れない。

その思いが陽菜が元の身体に戻りたい一番大きい理由。

筑波 察 > あはは、どうにも、僕が相手にする女の子は気が強い子ばかりだなぁ。
君は見た目以上に思い込みで損をしそうだ。
得意も不得意もわからないのに、他人から不快感を感じて、
元に戻る方法を探している、そんな口かい?

(この発言も、十二分に失礼だろう。でも今更気にすることなんてあまりない。
初手で最高に悪い悪手をさしたのだ。詰みまで一直線)

ああ、まったく不便なく暮らせたよ。
人間のために作られた社会の中でも、異能持ちの人間が虐げられる社会の中でも、
異能を持った僕は何一つ問題なく生きてこれた。学校に行って、彼女がいて、
親と一緒に暮らして、友達と遊べた。

――最高に違和感があったねぇ。

君は見た目から来る違和感を気にしているようだけど、
内側に抱える違和感も意識してあげた方がいい。>

藤巳 陽菜 > 「得手も不得手そんなの関係ないわ。
 他人から感じる不快感も大きな理由じゃない。
 …私は、私は普通に戻りたいだけよ!それの何が悪いの!?」

この身体で出来る事なんてどうでもいい。
せっかくだからこの身体を生かせばいいとか、君にしかない個性だとか…
そんな耳障りのいい言葉は聞き飽きた。

きっと、力は弱くなるだろう。折角覚えた進み方も意味を無くす。
身体の頑丈さもなくなってすぐ怪我をしてしまうかもしれない。
今みたいに何も考えずご飯を食べていたら一瞬で病気にかかってしまう。

それでも陽菜は元に戻りたい。
元の身体を元の生活を取り戻したい。

「知らないわよ、人の内側なんて。
 自分の事でいっぱいいっぱいなのにそんな余裕なんてないわよ!
 そんなに仲間外れにされたいんだったら異能者ですって名札でも付けてればいいじゃない!
 人とは違うところを見せびらかしたらいいじゃない!」

人がこんなにも周りと違う事で悩んでいるのに、溶け込めようがない見た目で苦しんでるのに
周囲に溶け込めている事に違和感があったと言われても。

筑波 察 > ……おっと、こりゃなんだか悪いことを言ったかな?
残念だけど君が人間の頃の姿を僕は知らないし、興味もあまりない。
そしてさらに言えば僕は君の将来にも"現時点で興味がない"
君はさっき僕に対して不快感を抱いたね。
普通ではないと認識されたことに不快感を抱いた。
でも僕から言えばその驚きだけだ。
君が思っているよりずっと、僕も周囲も君に無関心だ。
見た目に特徴があるのは良くも悪くも不便だねぇ。
心で感じる評価と周囲の評価が食い違う思い込みは。

(別にこの少女が悪いことをしたわけじゃない。
この少女が望んでこんな姿になったわけじゃない。
この少女は自分の境遇に酔っているわけじゃない。
普通の人間の感覚だ。
普通の人間ならこの少女と同じように感じ、考え、行動するだろう)

自分の事?君自身にかかわるのはその蛇の身体だけだ。
周囲の評価を君が覆すことなんてできないだろうし、
君がもとに戻れる希望は…なくはないんだろうけど、
楽しいことじゃないだろうね。自分の粗探しなんて。

仲間外れになることを望んでいないって言ったらウソさ。
でも正確には違和感を消したくてここに来た。
今じゃ能力もゴーグルも馬鹿にされたって僕の一部さ。
一部だけど、完全に混ざっているわけじゃない。>

藤巳 陽菜 > 「…じゃああなたも変わらないじゃない!
 あなたが感じてる違和感も私の食い違いと似たようなものでしょ!?
 自分の事を特別だとか考えてるからそんな風に普通に接されることに違和感があるとか言えるのよ!
 どれだけ自意識過剰なのよ!このナルシスト!」

自意識過剰。その言葉は少女の身にも跳ね返ってくる。
十代に異能に目覚めれば多かれ少なかれ良かれ悪かれ自分を特別だと思うだろう。
その、不幸さに不便さに幸福さに快適さに。
人と違う事に様々な感情を持つだろう。

「私の事をなにも知らない癖に!
 頑張れば周りからの評価だって変わるわ。
 違和感を消えないのは異能とか関係なくてあなたの場合中身に問題があるのよ!」

異能を持っていたとしてもきっと彼と同じ異能を持っていたとしてもそんな風に思う人は多くないだろう。
いや、問題がある彼だからこそ異能に目覚めたのだろうか?

「…第一印象は少し間違ってたわ。今のあなたの印象は超最悪。
 この島に来てからあった人の中であなたの事が一番嫌いよ。」

少し涙ぐんだ目を軽く拭いながら言う。

筑波 察 > あはは、そりゃどうも。でも僕は君とはちがうよ。
そして僕は周りの人間ともちがう。
下手に君に希望を持たせたり、君を慰めたりもしないさ。
実際君を慰めるような言葉も、君に同情するような言葉も僕は言っていない。
言っていないし、思ってもいない。君に関心がない。
君の持つ僕への第一印象が最悪から超最悪になったって、
関心がないから何ともない。

でも君は僕の言葉にいちいち傷ついて、不快感を抱いて、
自分の身体のせいだと思って、やけになって戻る方法を探して、
元に戻ることを渇望してやまない。

気づいたかい?君は「あなたも変わらない」って言ったけど、逆。
全然違うわけ。僕には今君がどんな表情をしているかわからない。
もう暗くなって見えないからね。ゴーグルを掛ければ君の表情がわかるし、
きっと君の心情だってもっと細かくわかるだろう。
でも、残念なことに今の君にはそれをするだけの魅力がない。

僕には問題があるかもしれない。
そういう意味では、君が僕に向けるきらいっていう感情はうれしいものかもしれない。
お互い気の知れない者同士、嫌い同士になるのもまた面白いかもねぇ?

(ここまでくるとイジメだ。でも、言葉は止まらない>

藤巳 陽菜 > …きっと彼は違うのだろう。
きっと誰とも共感しないし、誰とも共有しない。
人に何を思われても何とも思わないし。人をどうとも思わない。
人とは違う。異能者とか異邦人とかそんな種族や産まれた世界の違いじゃない違い。

それに気がついた時。怖くなった。
さっきまで感じていた口惜しさとか嫌いとかそんな感情よりも上回ってくる恐怖。
この薄暗さで表情が見難い。いや、見たくない。

「…確かにそうかもしれないわね。」

曖昧に言葉をかえしながら…少しずつ距離を離す。
きっと、音は近づいた時と同じほどには出ている。
荷物を擦るような音。蛇の身体を這わせる音。

ガタン

身体が机とぶつかり大きな音がする。

「っ!」

その音を合図にするみたいに薄暗くなった教室から急いで抜け出す。
身体が机にぶつかって音を立てる。
きっと、追われるような事はないのだろうが少しでもその相手から逃れたかった。

ご案内:「教室」から藤巳 陽菜さんが去りました。
筑波 察 > ……悪いことしちゃったかな、名前も聞いてないや。

(さっきまであれほど反論してきた相手が、ぴたりと言葉を止めて、
教室から出ていく。そして思うのだ。名前を聞いていなかったと。
名前を名乗っていなかったと。申し訳なさも感じているが、
それと同時に名前を聞きそびれたことの後悔が先に立った。
関心がない。そういったが、名前くらいは聞いておけばよかった)

僕はいつも自己紹介が遅れるなぁ。
名前を覚えてもらえていないんだから、そりゃ関心なんて持ってもらえないか。

(外はすっかり暗い。ゴーグルをつけて、
結局完成まで行きつかなかった絵を丸めてしまう。
元よりたいした意味なんて持っていない絵だ。
捨てるのが一番だろう。
「完成させればいいのに」
彼女の言葉が頭の中に木霊した。
不思議と、涙がこぼれた。
これが嫌われる痛みなのかもしれない>

ご案内:「教室」から筑波 察さんが去りました。