2017/08/21 のログ
ご案内:「ロビー」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 「うーむ……そろそろ朝晩が過ごしやすくなってきたな。よい季節だ」

朝。
広々としたロビー内、設えられたテーブル席のひとつに腰掛けたヨキが大きく伸びをしている。

今日は補講も雑務もなく、自分の研究と制作のために学園へやってきていた。
作業に入る前のちょっとしたひととき、という訳だ。

部活や委員会、補習といった用事のために学内を訪れる学生らを、ペットボトルの緑茶を片手に挨拶して見送る。
ヨキに好意的な学生があれば、その逆もある。反応はさまざまだ。

ヨキ > にこやかに手を振るヨキはといえば、女性もののシャンプーの、仄かにフローラルな香りがする。
その顔はどことなく小ざっぱりとして、見る者が見ればシャワーを浴びて間もないことを察するのは容易いだろう。

正義の体現者であるヨキは、正しいことしか行わない。間違っていると思うことは絶対にしない。
彼は人の死臭をこびり付かせたままで居るより、明け方に女性の家で風呂を借りて出勤することを選ぶ男だ。

そのきっちりとした行動のために浮かび上がるきな臭さが、ヨキの評価を二分する要因の一つでもある。

ヨキ > ぐびりと茶を飲んで口腔を潤す。
臭いも味も、気取られるほどの余韻さえ残っていない。

ヨキがそうしてまで自らの殺人を緻密に隠し通すのは、後ろ暗さのためではない。
人びとの平穏な生活を驚かせ、脅かしてはならないという強い正義感のためである。

一通り学生が通り過ぎたあと、ロビーは再びしんとした。
ガラスを隔てた屋外に、遠くセミの鳴き声が響き渡っている。

ヨキ > やがて、小さく息をつく。

椅子から立ち上がり、ヒールの密やかな音を鳴らしてロビーを後にする。
清涼感のある洗い上がりの香りも、すぐに空調に呑まれて掻き消えてしまう。

ご案内:「ロビー」からヨキさんが去りました。