2017/08/26 のログ
ご案内:「保健室」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > ──夏が終わる。少なくとも、暦の上では。

保健室の壁に掛けられたカレンダーを眺めながら、俺は物憂げな表情を浮かべていた。
別に憂鬱な気分と言うわけではない。悩みがある訳でもない。
夏休み期間中に色々と済ませておきたいと思っていたノルマがぜーーーーーんぶ片付いてとにかく暇になっているだけだ。

「……はぁ、残りの夏を全部費やす様な壮大なジュブナイル的スペクタクル的何かが起きねえかなあ。」

出来れば美少女ヒロイン付きで!

ご案内:「保健室」に藤巳 陽菜さんが現れました。
藤巳 陽菜 > 「先生、何馬鹿な事言ってるんですか…?
 流石に先生の歳じゃそろそろジュブナイルは厳しいんじゃないですか?」

どうやら、その教師の言葉はこの部屋を訪れた少女にも聞こえていたようでそんな心無い言葉を言ったりする。
格別には美少女というわけでもない少女は慣れた様子でその下半身を巻きつけるように椅子に座る。

「こんにちは、暁先生。
 用事とかは…なさそうですね…。
 今日は質問とあとお願いがあってきたんですけど…。」

暁 名無 > 「ま、そんな都合よくラノベ的な出来事が起こる訳もねえか。」

ラノベと言えば図書室で何冊か借りて積ん読してるのがあった気がする。
そろそろ返却期限も近いし、折角だから読んでしまうか。
ええと、どこにしまったっけかな……。

「もしかしたら家か?
 いや、それとももう返したか……?」

とりあえず乱雑に散らかったベッドの上を漁り始める。
そんな折、背後から急に声が掛かった。

「おう、何だ藤巳か。来てたんなら入る時に声掛けてくれりゃいいのによ。」

ラノベ探し中断。
俺は無精ひげを剃り上げてすべすべになった自分の顎を撫でながら、ソファへと戻った。

「質問とお願い?
 ……良いだろう、他でもない藤巳の話なら聞こうじゃねえか。」

藤巳 陽菜 > 「すいません、先生しかいないかなと思ったので…。」

夏休みに入ってからこの保健室が使用されているのを見るのは少ない。
いや、正式な目的で利用されているのを見たのが殆んどない。
養護教諭でさえもあまり来てないのではないだろうか?

「えっと、じゃあ早速質問の方から行きますね。
 先生、ラミアについて改めて聞きたいんですけど…。
 異種族のじゃなくて…魔物とか呼ばれてる方のラミアについて…。」

所謂、蛇の獣人としてのラミアではなく魔物としてもラミア。
形として大きな変化はないが一方は転移荒野や遺跡などで人を襲い一方は人と共存できている。
その違いについてとか…。

ノートとペンを取り出してメモを取る用意までして教師へと視線を向ける。

暁 名無 > 「まあ、実際居なかったけどよ。
 これでも結構利用者は居るんだぜ?……いや、居るのもどうかとは思うけどさ。」

まあ、それはそれ。
別に見られて困るような事をするわけでもなし、多少俺がビックリするからってだけなんだけども。

「ほう、魔物の方のラミアね。
 まあ大した違いは無い──って言うと語弊があるな。
 肉体的には、さほど差は無い。精神性の問題だ。
 
 これはラミアに限らず、他の種族でもそうなんだが」

さてどう説明したものか。
これが普通の教室での授業なら資料も交えて仔細に説明するとこだが。

「難しい言い回しを抜きにして言うと、人と共存してるラミアの大半は、精神構造が人間とほぼ同じと言えるな。
 人の形質を有した蛇と、蛇の形質を有した人の差と言えば何となく分かるか?」

藤巳 陽菜 > 「いるんですか?じゃあ、偶々会ってなかっただけなんですね。
 でも、普段よりはサボりとかで来る人もいなさそうですし…。」

そう考えると本当の意味でここが必要な人か養護の先生に用事がある人。
それか、この先生に用事がある奇特な人くらいしか訪れないだろう。

「精神性ですか?」

考え方とかの差?
人を害するか害さないかの差?

「なるほど、つまり人と暮らしているラミアはその…私みたいな感じで…
 逆は蛇から上半身が生えてきたみたいな感じ…何ですね。
 なんか微妙な例えなんですけど…。」

自分を例にすれば考えやすいが自分は別にラミアではない。
でも、分かる。自分が人の考え方を持ちながら蛇の身体を操るように。
蛇の精神性、生き方を持ちながら人の知能を操るのだ。

「ここが一番気になるところなんですけど
 …じゃあ、例えば蛇の方のラミアの人が生活できるようになったり。
 その逆で、今まで普通に生きてたラミアの人が人を襲いだしたとかはないんですか?」

暁 名無 > 「まあ、確かに授業そのものが無いからな。
 それでも事実、こうして律儀に制服まで着て来る生徒も居るわけだし。」

そんな奇特な人が居るのだから世の中は解らんね。
そもそも藤巳は毎度学校には何しに来てるんだろう……?
入学して早々追試や補講の山?まさか、昔の俺じゃあるまいし。

「そ、精神性。
 まあ厳密に言えばラミアはラミアとして生まれるから、藤巳は本当にレアケースなんだけどな。
 そもそも発生方法からして幾つか種類があるもんだし。」

ふーむ、一番気になるところ……ねえ。

「そういう事なら、この島での前例は無かった気がするが。
 まあ調べた訳じゃないから断言は出来ない。
 ただ、本土の方や日本国外でならそういった例は幾つかあるみたいだ。

 まあ、これもラミアに限らず大抵の獣人が抱える問題でもある気はするが。
 精神は肉体や周囲の環境の影響を徐々に受けていくもんだ。
 人間部分に引っ張られていけば人間らしく、蛇の部分に引っ張られていけば次第に獣じみてはくるもんだろ。」

俺だっていつまでもウサギのままだったらどうなっていた事か。
きっと今頃バーニャカウダをもりもり食ってる気がする。

藤巳 陽菜 > 「着れる私服があまりないんですよ…
 ここに来てるのも図書室で調べ物をするついでですし。」

この身体になってから服を買ったりできていない。
そして元の身体の時の服はまるでサイズが合わない。
つまり、制服しか着る服がないのだった。

例えば、ラミアの言葉の元になったギリシャ神話の人は神の呪いでこんな姿になったらしい。
もの凄い理不尽な目に合っている。
きっと、他にも様々な方法があるのだと思う。

「影響を受ける…。
 やっぱり、獣じみてくるんですかね…私も。」

自分の蛇の身体を見る。

食欲が増した。余り物を噛まなくなった。肉が好きになった。
…そんな些細な変化が気になる。
もしかしたら引っ張られているのかもしれない。そんな不安が頭をよぎる。

今はまだ4か月だからこんなものだけどこの先、戻れないまま1年経てば?10年経てば?人を襲わない保証はどこにもない。

モヤモヤとする感情を払いきれない。

暁 名無 > 「夏休みくらいもうちょいラフな格好で良いんだぞ?
 普通にTシャツとかは着れないのか?
 スカートも胴回りに合せればそれなりにあるだろ。」

もしや上半身もラミア化によって成長を?
まさかとは思うが、でもこないだむぎゅってやられた時の感触からすると十分あり得るかもしれない。
俺はそっと頬に手を添えて回想した。


「お前さんがそれを嫌だと思っていれば大丈夫さ。
 精神修養としての場所だって立派な学校の役割だ。
 獣性に負けない精神を育む。うん、何か凄く真面目で学校っぽいな。」

あまりにも慣れない事を言った所為か、我ながら鳥肌が立って来た。

「それに、周りの環境だって影響する。
 俺はどんな時だってお前の事を人だと思ってるから、お前も遠慮なく自分を人間だと思って居れば良い。」

うんうん、我ながら良い事言った気がする。

藤巳 陽菜 > 「上は持ってますけど下は…スカートはあまり持ってなかったですし。
 その…買おうにもお金が…あの…食費に消えてしまって。」

徐々に声が小さくなっていく。
日常生活を送ることが難しい異能があることによる学費の一部免除や
異能を研究されるかわりにくれるお金、そして親からの仕送り三つ合わさっても学費と食費に消えてしまう。
しかも、節約しているにも関わらずだ。

「暁先生が良い先生っぽい事言ってる。
 いえ、普段が良い先生じゃないわけではないんですけど…。
 珍しいなって…。」

酷い事を言う。

「何か先生に言われてもあんまり説得力はないですね!
 …でも、ありがとうございます。」

お礼とともに笑顔を見せた。

口ではこんな事を言ってしまったが本当はとても安心できた。
ちょっと、良い事言ったな!ドヤって感じが透けているのはともかく…

自分を人間だと思っているのは自分だけじゃないと言葉にしてくれたのが嬉しかった。
…良い事言った感はともかく!

「それとこっからはお願いなんですけど…
 先生に少し付き合ってほしいんですよ。」

暁 名無 > 「そういう食欲に抗うことも覚えて行こうな。
 でないと上も着られなくなるぞ。まだ夏だから良いけど。」

冬になったら目に見えて丸くなりそうではある。
肉付きが良いのは好ましいが、あんまりぷくぷくになられるのはいや冬場なら見た目温かそうだけども。

「俺も自分で珍しいなって思ったよ。
 とりあえず何か帳尻合わせが必要かもなぁ……。」

具体的にはもっとこう、普段の俺っぽいことを言うべき。
でないとアライメント調整がうんぬんかんぬん。

「俺に?付き合って欲しい?
 今の話の流れだと、服屋に行くとかそういう事か?」

藤巳 陽菜 > 「頑張ってるんですよ?
 でも、やっぱり身体が大きい分たくさんいるんだと思います。
 …異能がこれもこれも全部異能が悪いんです。」

そう、この身体はかなり長いし蛇と違って恒温だからガンガンエネルギーを消費する。
そして、栄養を吸収する内臓系は人間とあまり変わらない…。
だから食費が多くいるのは異能のせいなのである。陽菜はあまり悪くない。

「別にいらないと思いますけど…。
 普段下げてる分を貯金してるので帳尻は合っていると思いますよ。」

もう借金と言っても差し支えない。
普段から、ちょくちょく真面であるべきなのだ。

「嫌ですよ!何で先生と服買いに行かなくちゃならないんですか?
 男の人と服買いに行くとか何か、デートみたいじゃないですか…。
 ま、まあ、服買ってくれるなら良いですけど…じゃなくて…違くて。」

服を買いに行くなら一人で買いに行く。
そうでなくても、同性の友達と買いに行く。
この教師と買いに行くことはまあ…まあないだろうな。

「変身魔術使うのに必要な材料が転移荒野にあるので一緒に来てください。
 ほら、先生ってあそこのプロみたいなもんじゃないですか?」

暁 名無 > 「はいはい、何でも異能の所為にしない。
 とすると案外無駄にエネルギー使ってるところがあるか、エネルギーを貯蓄してるところがあるかもな……」

釘を刺しておきつつも、実際のところは彼女の言う通りなのだろうと思う。
藤巳の身体データを実際に見たわけじゃないので何とも言えないけども。

「毎日リセットされてんだから、必要なの。
 何で持ち越し制なんだよ。やーめーろーよー」

人からの印象は兎も角、俺の中ではそうなのだ。
そうなのだったらそうなのだ。

「うおっ、即答。
 そんなに嫌か、良いじゃん別にデートくらい……。」

そんな口実でもない限り俺も外に出ないからな。
それはそれで無益な休日の過ごし方みたいで何とも言えない気分になるのだ。
まあ、それはともかく。

「ほう、転移荒野に。なるほど、変身魔術のねえ……
 別に構わないが、俺一人でぱぱっと行って必要なもんを回収してきた方が良いんじゃねえか?」

わざわざ藤巳自身が出向いて危険に身を晒す必要は無いだろう。