2017/10/04 のログ
ご案内:「屋上」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
■鈴ヶ森 綾 > 今夜は中秋の名月。
空には僅かばかりの雲と星の光、そして一際強く輝く月の光。
きっと多くの人がその光を目当てに、夜空を見上げている事だろう。
この校舎屋上にも、ベンチに腰掛けてぼんやりと空を見上げる人影が一つ。
月光をその身に浴びて、特に何をするでもなく時を過ごしている。
その手には月見酒…ではなく、
階下の自販機で買ってきたおしるこ缶が一つ、未開封のまま握られている。
■鈴ヶ森 綾 > 「はー…温かい…」
吐く息が白くなるほどではないが、ひんやりとした夜気は秋の深まりを実感させる程度には冷たい。
手の中の温みは 飲んでしまうのがもったいなく感じられる程心地よい。
暫くの間手の中をころころと行ったり来たりさせて弄んでいたが、
上下を確かめて缶を立てるとプルタブを引き起こしてカシュッ、と小さな音を立てさせる。
さっそく口元に運んで一口。
暖かさは未だ損なわれていない。
喉を通ってゆく熱と口の中に残る優しい風味に思わず表情が緩む。
■鈴ヶ森 綾 > うん、バターの効いた焼き菓子やクリームも嫌いでないが、
やはりあんこが一番口にあう。
こんな安っぽい缶飲料でもそんな風に感じてしまう。
缶から口を離し、はぁ、と小さく息を吐く。
吐き出された温かい空気は冷たい外気と混じり、風に吹かれて霧散する。
再び見上げた上天には、満月に僅かに満たない十三夜月が先程と変わらぬ様子で居座っている。
■鈴ヶ森 綾 > 空を見上げ、時折思い出したように缶の中身を啜る。
そんな事を繰り返してどれぐらいの時間が経っただろうか。
中身の無くなった小さなスチール缶をベンチ脇のゴミ箱に放り、立ち上がって軽く伸びをする。
「んんっ…!さて、と」
そうして建物の中へ戻るかと思えば、外周を取り巻くフェンスの方へと歩いて行くと、
ひょいとまるで小さな段差を飛び越えるような調子でその上へと飛び乗ってしまう。
本来人が上に乗るようにはできていない細い金属の上でバランスを崩す様子もなく、
先程よりほんの僅か近くなった月を見上げる。