2017/11/19 のログ
■暁 名無 > 「こらそこ、あんまりはしゃぎ過ぎて廊下を走るな。
生徒や先生以外にも来てるんだからな。」
渡り廊下を駆け抜けていこうとした二人組に注意する。
いや、気分が上がるのは充分理解出来る。俺も昔はそうだった。
……そういや、この年の学祭は何をしてたっけ?
ふと、そんな事を考えて記憶を漁る。
多分例年通りあちこちの屋台を梯子して、くたくたになって帰宅して、その日の出来事を語って聞かせてたんだと思うのだが。
「……あーれ。」
思い出せない。
仔細までは当然思い出せないとしても、おおまかな流れは覚えていそうなものだし、
何よりも話して聞かせた相手の顔も、どんな表情だったかすらも思い出せない。
……忘れるはずがないのに。
「あーあ、やだやだ。俺も歳食って物忘れが激しくなったかねえ。」
心の奥の方がざわつくのを、小さな舌打ちと大きな独り言で流して、大仰に溜息を吐いた。
■暁 名無 > 「折角の祭りだってのにぼさーっとしてるからバチでも当たったんかねえ。」
どっこいせ、と背を預けていた窓枠から離れて廊下を歩き出す。
後ろから走って来て追い越して行った生徒に、さっきと同じ様な注意を飛ばしつつ、ふと窓の外へと目を遣る。
屋台の列、楽しげな人々の中に、一人の生徒を見つけて、
「……あんなとこ行ったっけか。やっぱ覚えてねえなあ。」
もし、これが単なる度忘れなんかじゃなく。
本当に記憶に残っていないものなのだとしたら
今居る俺と、未来から来た俺に僅かな差異が生まれ始めている証左。
俺が───ではなく、暁名無という人間として世界に定着しつつあるということ。
「………首尾よく行ってるわけだけど、まあ。」
やっぱりこういう時に頭空っぽに出来ないから、喫煙スペースは残して欲しい。
そう思いながら、俺は校内をうろつくことにしたのだった。
ご案内:「廊下」から暁 名無さんが去りました。