2018/01/27 のログ
ご案内:「屋上」にアリスさんが現れました。
■アリス >
溜息をつく。
どうしてこうなった。
私、アリス・アンダーソンは四月から常世学園に通うことになっている。
前いた学校での異能の暴発を理由に現時点から常世島にいるし、勉強のために通っていることも確か。
でも。
だからってこの島に来て数週間でいじめっ子に絡まれるとか思わないじゃない。
『あんたさー、前の学校で異能騒ぎ起こしたんだって?』
『何で黙ってるの? 喋ればいいじゃん、口がついてるならさ』
二人のちょっとガラが悪そうな先輩方に囲まれている。
本当……どうしてこうなった。
■アリス >
『異能見せてよ、なんの異能? ねぇ、無視とか感じ悪くない?』
『先輩にさー、ちょっと芸でも見せてくれればいいじゃん』
異能は芸? 違うと思う。
この人たちの異能がどうかは知らないけれど。
早くこの時間が終わってくれないかと視線を逸らした。
『髪どうなってんの? ナニ人? 日本語話せるでしょ』
女生徒が私の髪に手を伸ばす。
私は咄嗟に頭を庇ってビクッと反応した。
『アハハ! なぁにそれ、いじめられっ子ってやつ?』
私は顔が真っ赤になった。
■アリス >
『ねぇ、いじめられっ子ちゃん? あんた本当に異能とか持ってるの?』
『嘘でしょ、そのリアクションで異能者ってー』
ニヤニヤと笑いながら女生徒二人は私に距離を詰めてくる。
いじめられていたことは事実。
今でも頭に手を伸ばされると咄嗟に庇ってしまう。
目の前に二人分の悪意に満ちた笑顔。嫌い。
ご案内:「屋上」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 「―――オマエら何やってんの?」
唐突に、そこに3人以外の声が響いた。何処かダウナー気味なやる気の無い声。
3人が振り向けば、そこには一人の少年が佇んでそちらを眺めているだろう。
黒髪に目付きの悪い紫暗色の瞳。怪我か失明しているのか左目には眼帯を付けている。
更に、左腰には一振りの刀を差しておりそのコワモテと相俟って、独特の雰囲気があった。
少年はチラリ、と3人それぞれに視線を走らせる。金髪の少女は見ない顔だ。
ただ、いじめ連中二人は見覚えがある。と、いっても覚えがある程度で少年はさして興味は無かったが。
「やれやれ、自分の力に自信が無いからって、影でこそこそイジメか?くだらねぇ」
■アリス >
『ああ?』
女生徒二人が振り返ると、そこに刀を差した男の姿。
『…追影!』
『何よ、あんたには関係ないでしょ』
女生徒たちはしらーっとした表情で男を追い払うように手を数度払った。
「…………」
オイカゲ? 変わった名前。
でも、助けてくれるのだろうか。
■追影切人 > 「ああ、関係ないしどうでもいいが、人がこれからサボろうとした先で白ける事してんじゃねーよ。
…つーか、見覚えある顔だが誰だっけ?…面倒だからA子とB子でいいか」
何気に酷い言葉を平然とのたまっているが、少年は平常運転だ。そして、確かに相手の言う通り少年には関係ない。
「…で、そこの金髪頭。こいつらに何を言われた?」
そして、ダウナー気味の態度のままでAとBの二人を無視して少女に問い掛ける。
少年からすれば、別に彼女を助ける義務も理由も特には無い。質問もただの気紛れに近い。
■アリス >
『……! あんた、バカにしてんの!?』
『待ちなって、あいつ確か戦闘型だよ』
A子とB子と呼ばれた二人が顔を見合わせる。
金髪の玩具で遊んでいたらとんだ冷や水を浴びせられたというリアクション。
「……異能を見せろって言われたわ」
どうしてだろう。正直に答えてしまう。
気まぐれの第三者。先行きがわからなくなってきた。
■追影切人 > 「馬鹿にしてる訳じゃねーぜ?…ただ、特に覚える程度の存在でもないってだけだ」
まるで路傍の石ころでも眺めるような、冷めた言動と視線を二人へと向けて。
直ぐに興味を無くしたかのように、改めて金髪の少女へと視線を戻したが。
「ふーーん…じゃ、その異能でそこの馬鹿女2人をぶちのめせばいいんじゃねーの?」
サラリと恐ろしい事を口にする。だが、そのダウナーな態度は冗談やふざけた調子は無い。
彼女の異能がどういうのかは勿論彼は知らない。知らないがぶちのめせば?と、当たり前のように口にする。
■アリス >
『追影、あんたねぇ……!!』
女生徒の一人がヒートアップしてきた。
どうしよう。このまま何事もなく終われる道はないだろうか。
「異能の制御、難しいから」
流暢な日本語で、言い間違いとは思えないその言葉が紡がれる。
「殺してしまうかも知れないわ」
その言葉を聞いてさっきから語気が荒かった女が。
『…っざけんな!!』
ヒステリックに私の髪を掴んで引っ張った。
痛い。痛い。ママに梳いてもらった、髪……
足元には、雪が見えた。
■追影切人 > 「……何だやんのか?手足の一本くらいは切り飛ばされる覚悟があんだろうな?」
相変わらずダウナーな態度のまま、ただしその瞳だけがまるでエモノを見つけたかのように細められる。
戦闘狂の部類に含まれるこの馬鹿男は、戦いとなれば場所は選ばないし相手が誰でも構わない。
もし、女子二人が仕掛けてくれば躊躇わず切り捨てる事くらいは平気でするだろう。
と、そこで金髪少女の流暢な言葉にそちらへとまた隻眼を向けて。
「制御ねぇ。そりゃまた難儀そうだ。流石にここで殺しはマズいだろうよ」
彼女の言葉を疑う、という事は考えず少女が言うなら彼女の異能は殺傷力が高いのだろうと納得する。
そして、その言葉が挑発にでも聞こえたのか、ヒステリックな方が金髪の髪を引っ張った。
…次の瞬間、少年が一つの動作を行った。何の事は無い。ただ右手を軽く上に上げて下に振り下ろしただけ。
それだけの筈なのに、金髪少女の髪の毛を掴んだ女子の手の甲をスッパリと何かが切り裂くだろう。
「何、俺の前でくだらねぇ事してんだ。次はテメェの髪の毛でも全剃りしてやろうか?」
■アリス >
『……!』
髪を掴んでいた女生徒の手の甲が切れて、血が流れる。
『ちょっと、血、血!!』
『あああ……! 追影、あんた…!』
大した出血量ではない。それでも切られた女生徒の狼狽は激しかった。
『まずいって、戻ろうよ……』
『覚えてなさいよ!!』
捨て台詞を吐いて女生徒二人が走り去っていった。
雪がまだ残る屋上で、あっという間の事態収拾を見る。
「……今の、異能?」
キョトンとした表情で少年を――少年と言っても大分年上に見える彼を見上げた。
■追影切人 > 「たかが掠り傷程度だろうが。きゃんきゃん喚くんじゃねぇよ、発情期の獣かテメェは」
実際、手の甲を少し切った程度だ。そのくらいの調整は斬る事に優れた少年には児戯に等しい。
何やら捨てセリフを吐いて、そそくさと立ち去る女子二人を冷めた目で眺め。
「面倒だから忘れるだろうけどな。斬られたくなかったら、もう少しマシになれや」
そう、言葉を吐いてから残った金髪少女へと顔を戻す。相変わらずダウナー気味のまま。
「…あ?ちげーよ、ただの技術とか技能だ。俺は斬る事だけは得意だからな」
と、軽く手刀を振る動作をしてみせる。とはいえ、今度は何も斬らなかったが。
「んで、オマエ学園じゃ見ない顔だがアレか?転校生とか新入生ってやつ?」
■アリス >
「技術? 手のひらで遠くのものを切るのが?」
そう言われて自分も手刀を振ってみる。
とてもじゃないが、何かを切断するような力は生まれそうになかった。
三度ほどその動作を繰り返した後。
「…四月から一年生。今は仮の生徒みたいなものなの」
「ありがとう、追影先輩。私はアリス。アリス・アンダーソン」
ポケットから櫛を取り出すと、掴まれて乱れた髪を梳いた。
痛んでいたら嫌だな……
■追影切人 > 「少なくとも、学園で検査されたがそういう異能やら魔術は俺は持ってねぇとさ」
だから技能としか言いようが無い。幼い頃から斬り続けてきた経験と、あとは天性の才とでも言おうか。
己の真似事をする少女の動作をダウナー気味の態度で眺めていたが。
「…ふーん。つぅか先輩はいらねぇよ、何かそういうの苦手っつぅか。しかし、アリスね…悪くねぇ響きの名前だな」
先輩、という呼称にはダウナー気味の態度を何処か困ったような、何とも言えないものへと変えて。
明らかに既に在校生である少年は、これから入学を控える少女からすれば先輩ではある。
だが、その呼称が少年は苦手らしい。気に食わない、という訳でもないようだが。
「…で?アリス。オマエの異能って結局どういうのよ?」
何となく先ほどの話の流れから思い出し、そう尋ねてみたりする。
とはいえ、あの女子二人と違い無理に聞き質す事も、まして見せろという事も無い。
■アリス >
「ふーん……?」
ぶんぶん手を振っていた手を見て、相手の手と見比べる。
「じゃあ、追影さん?」
「自分の名前、気に入っているの。パパがつけてくれた名前だから」
異能について聞かれると、深呼吸をした。
異能が暴発しないように。落ち着いて、心を穏やかに。
足元の雪を掬い取ると、手の中でそれは鉛筆になった。
鉛筆はナイフになり、拳銃になり、湯気を立てるピザに変わり、最後に手鏡になった。
見る間に手の中で姿を変えた道具、その鏡を見ながら髪を梳く。
「手品が上手くできる異能よ」
そう言ってふ、と薄く笑った。
ご案内:「屋上」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 「…別にさんも特にはいらねぇが、まぁいいや…そうかい。じゃあ大事にしねぇとな」
親から貰った名前…無論、それが平和な家庭では当たり前なのかもしれないが。
少年には、その平和な家庭と縁が無かったのもあり、少しだけ感情を込めてそう答えるに留めた。
「……へぇ?」
アリスが足元の雪を掬い上げたかと思えば、それが彼女の手の中で鉛筆に変わる様子に目を丸くする。
そして、今度は鉛筆なナイフに、ナイフは拳銃になり…挙句の果てにホットなピザだ。そして手鏡へと戻る。
「ふーーん。何か便利そうだな」
面白みも無ければ捻りも無い、そんな少年の感想だが同時に本心でもある。
少女が異能を持った経緯も何も知らない少年からすれば、少なくとも自分の異能より使い勝手がよさそうという認識だ。
「ま、でも武器に変化させられるなら殺傷能力はやっぱ高ぇわな。…で、深呼吸してたって事は集中か気分を落ち着ける必要がある、と」
男は馬鹿だが無能ではない。彼女の動作や仕草を観察していたのか、そうボソリと述べる。
■アリス >
「うん……あんな奴らに名乗りたくなかった。誇りある名前だから」
いつか知られるにしても、人の髪を掴んでくる奴らに語る名前は持っていない。
「便利よ、便利だけど、暴発したら怖いの」
「……うん、私の異能『空論の獣(ジャバウォック)』は制御ができていないわ」
「だからこの島に追放されたの」
視線を下げる。
家族はそれに巻き込まれたようなものだ。
生活環境が変わる負担。それで私を責めたことなんて、一度もない。
それが苦しくもあった。
「追影さんはそのカタナ? を使うのが上手いとか、そういうのかしら」
「漫画で見たことがあるわ、異能者より強いのよね?」
髪を梳き終わると手鏡をその辺に放る。
投げられた鏡は地面に落ちる前に雪へと再変換されて崩れた。
■追影切人 > 「ああ、あんな有象無象は気にするだけ時間の無駄だ。次に脅されたら拳銃でも鼻先に突き付けてやればいい」
サラリとまた物騒な事を言うが、少女ならいざとなればそのくらいはするだろう、と少年は勝手に思っている。
だが、彼女の異能…と、いうよりこの学園に入学する事になった経緯を端的に説明され…
「…追放、ねぇ。俺は物心付いた時からこの島で暮らしてるから、追放っつぅ感覚はわかんねぇけどよ。
…ま、俺に言えるとしたら早く制御して親御さんを安心させてやりなって事だな」
ロクなアドバイスを出来る頭の良さは無い。だから、こういう時は思ったままを口にするだけだ。
そもそも、ついさっき面を合わせたばかりの少年が少女の苦悩をどこまで理解できるものか、という話で。
「ん?ああ、恩人からの貰い物でな。まぁ特に刀が一番だが、斬る事全般は得意だぜ」
と、左腰の刀の柄に左手を軽く添えるように乗せて僅かに笑ってみせる。
たかが斬るしか能が無い自分でも、まぁ一応は生徒をやれているのだから。
だから、根拠は欠片も無いがアリスも多分何とかなるだろう、と少年は思っている。
「…けど、異能者より強いかどうかはわかんねーな。ヤバい異能持ちはゴロゴロ居る島だしよ。
ま、斬り合いに関しては負ける気はサラサラねーが」
そう口にしつつ、彼女が放り捨てた手鏡や雪へと戻っていくのを眺めて。
ご案内:「屋上」に追影切人さんが現れました。