2018/07/29 のログ
黒笹 紗矢 > 「そうですね、ただまあ、こう見えて身体そのものは鍛えてもいますから。
 文庫本より重い物は持ったことが無い、なんて言いませんよ。」

ふふふ、と微笑みながら。
そう、良く見せようとしないのだな、この教師は。
単純でもなく、価値観がカッチリと定まっている相手には慎重にもなる。
教師を見るたびに、この教師の仕置きはどんなものだろうか、と考えるのも楽しみの一つだが。

「……ああ、それはもう。
 そんなことはしませんよ? ええ、当然です。
 ただ、思ってもみないところでルールを違反してしまい、人を傷つけてしまうこともありますから………。」

小さく微笑みながら、相手の言葉に胸がとくん、と鳴る。
ただの小難しいお説教で終わら無さそうな気配に、もう一度唇をぺろりと舐めて。

「……ええ、もちろん。
秘密ですよ?」

頬を染めて、ウィンクをぱちり。
ダメだと言われると踏み越えたくなるのを少し堪えて、文庫本で口元を抑えて可愛らしく笑った。

ヨキ > 「それは頼もしい。ふふ、勤勉な学生は男も女も美しい大人になれるぞ」

美しい、などという言葉を臆面もなく使う。
薄い唇を裂いて笑むと、牙に似た犬歯が垣間見えた。

「それでいい。秘密は秘密のまま隠してあるから甘く蕩けるのさ。
 堪えようのない者が得意になると、すぐに見せびらかそうとしてしまっていけない」

肘を背凭れに置き、半身を紗矢へ向けると、真正面から相手の顔を見据えた。

「悪い子への仕置きは当然としても、良い子で居てくれたならヨキは褒美も奮発するぞ。
 無事に卒業を迎えて、我々が教師と学生の枠組みから外れたそのときに、な。
 ヨキのご褒美とお仕置きと、どちらを味わいたいかは君に任せる」

不敵に笑って肩を竦め、まるで睦言みたいな声音を作ってみせる。

黒笹 紗矢 > 「では、そうなれるように努力をしましょうか。
 ふふ、……私は出来る限り勤勉でいたいと思いますけれど、どうにも堪え性は無くて。
 でも、本分は忘れぬようにしますよ。」

じい、と見つめられれば、微笑みながら目を細めて、笑う。

「………あら、やだもう。
 そんなこと言われたら期待しますよ?
 いいんですか、そんなこと言っちゃって。」

なんて、照れながら笑う。
……そりゃあ、もう。 ご褒美もお仕置きも。

どちらもに決まってるじゃないですか。

心の声を文庫本で隠しながら、すい、と立ち上がり。

「先生、ありがとうございました。
 すっかり時間も過ぎてしまいましたし、図書室に戻って私にある数少ない仕事らしい仕事を片付けてきます、ね?」

頬を染めたままの生徒は、立ち上がりながら微笑み、お辞儀を一つする所作を見せ。

ヨキ > 「そうしてくれ。女性には、がっつかれるよりも御される方が好きでね。
 単純な好みの話さ」

前髪を掻き上げる。湿った額に冷えた夕刻の風が心地よい時刻だ。

「ヨキは嘘を吐かないことが誇りなのでな。期待してくれていい。
 君がそれだけ努めてくれるのなら――ヨキの方こそ、期待しておく。君の行く末に」

立ち上がる紗矢を目で追って、一礼に手を振って応える。

「ああ。ヨキももうそろそろ、下へ戻るとしよう。
 お疲れ様、黒笹君」

笑って、相手をそのまま見送ることになる。
紗矢が踵を返す折には、ひとつだけ言葉を付け加えて曰く。

「ふふ。――くれぐれも、このヨキを裏切らんようにな」

黒笹 紗矢 > 紅茶の缶と本を片手に、大人しい笑顔を作り。

「………ふふ、そうですね。
 では今日はありがとうございました。ヨキ先生。
 また図書室にでもいらしてくださいね。」

するりと背中を向けたところに投げかけられる言葉が聞こえなかったかのように、足を止めずに歩いて。
………角を曲がったところで、文庫本をぎゅう、と握りしめる。
この学園、そう簡単に物事が上手くいく場所ではない。
危険も何もかも段違いなのは、匂いだけで良く分かる。


「………ええ、もちろん。
 努力は十二分に、させてもらいます。」

階段を下りながら、文庫本で顔を隠しながら誰にも聞こえぬままに呟く。
踏み越えたらどうなってしまうのか分からない感覚が、ぞく、ぞく、ぞく、っと背筋を滑っていって止まらない。

疼く。

己の下腹部を撫でながら、ふぅう、と僅かに吐息を漏らしつつ壁に背をつけ。
この島に来たことを一人こっそり、喜んだ。

ご案内:「屋上」からヨキさんが去りました。
ご案内:「屋上」から黒笹 紗矢さんが去りました。