2018/10/16 のログ
ご案内:「屋上」に白鈴秋さんが現れました。
白鈴秋 >  少し肌寒くもなり始めた秋の昼ごろ。暖かい時期ならまだしもこの時期に態々好き好んで屋上に来る人はあまりおらず、静かだ。
 そんな場所でフェンスにもたれかかり、缶コーヒーを傾ける一人の生徒。ふぅと一息息を吐き出すと暖かい物を飲んだ後だからか、ホワリと白い息になる。

「やっぱり正解だったな。静かで良い」

 中の食堂などは今頃かなりごった返していることだろう。
 なぜそっちにいないかといえばごった返しているのがわかりきっているから。席も無いだろう。
 自分の手にぶらさげている購買のパンですら買う為の列は軽い戦争状態だったのだから。
 どこかの教室で食べれば良いと思わなくも無いが……生憎知り合いが多いわけでもない。
 

ご案内:「屋上」に佐伯劾さんが現れました。
佐伯劾 > 「あ”-、死ぬかと思った・・・・・・」

学食は正に戦場といった様相だった。
ごった返す人影、飛び交う怒号。そこかしこで聞こえる小銭の落ちる音とビニールのよれる音。
そのなかで運よく食料を確保し、また戦場から脱出してはどこで食べようかと悩み――屋上へ逃げ込む形。

扉を開き一息つけば視線の先、フェンスへ持たれ風に身を預ける少年の姿を認める。

     <あの戦場>
「よ、おまえも購買の生き残りか。・・・・・・隣、空いてるか?」

軽く手を振りながら歩を進める。
断られたらまぁその時はその時、と気軽く話しかける。

白鈴秋 >  しばし一人の静かな時間を楽しんでいるとドアが開く音が聞こえる。何時もなら気にもしないだろうが今日は静かだったこともありそちらに視線が向かう。
 そこにいたのはビニール袋をぶら下げた学生。疲労困憊と言った様子に見える。

「……あぁ」

 その発言を聞き思わずフッと笑ってしまう。なるほどこいつもかと理解したからだ。

「ああ、問題ねぇよ。それに同じ戦場を経験した戦友だろう俺達は」

 相手の言葉にそれらしい冗談で返す。
 それから袋に視線をもどし。

「お目当ての代物は買えたか?」

 あのごった返しの中だ。お目当ての物を買うのはかなり難しいだろう。

佐伯劾 > 「戦友か・・・ハハ、違いねぇや」

気の利いたジョークが帰ってきてニヤリと口端が上がる。
質問に袋を軽く掲げて。

「戦果は上々、一番人気はやっぱり届かなかったがな」

少年の隣、腰を下ろしてフェンスに背を預ける格好で袋からパンを3つ
――ごった返す戦場から考えればかなりの豊作である。
焼きそばパン、メロンパン、カレーパン。そのどれもが“それなり”に人気の商品だ。
ついでにパック牛乳を取り出し、ストローを差す。

「あの伝説のパン、一度でいいから食ってみたい・・・てか見てみたいな。
まだ噂しか聞いたことないぜ」

焼きそばパンの封を開け、豪快に齧りついて一口を味わい飲み込んで。
満足げに頷きながら“噂のパン”について思いを馳せる。

「なぁ、戦友。おまえは見たことあるか?――その伝説のパンをよ」

        <戦友>
顔を向けて、隣の少年に問い掛ける。

白鈴秋 > 「俺ですら買えてねぇんだから1番人気がそう簡単に買えるわけがねぇだろ」

 相手が袋を開くのをみて、自分もそろそろ袋を開く。
 コロッケパンとアンパン。どちらもそれなりに人気だが他の物に埋もれがち……即ちねらい目商品。
 コロッケパンの封を切り一口食べる。

「伝説のパンか……見たことはねぇが売ってる時間の噂ならいくつかある。曰く朝には売り切れている。曰く購買の売り手が買い占めている。曰く時間外にしか販売しない。曰く風紀委員が裏で抑えている……なんて眉唾物ばかりだが」

 たしか常世学園。七不思議のひとつに数えられていた物だ……まぁ七不思議といいながらすでに10近く知っている時点で七つというのすら眉唾だろう。
 視線を彼に向ける。

「なにか有力な噂とかねぇのか? 俺のはどれもこれも信用ならねぇのばかりだし」

 まだ1つ目の朝の内に売り切れはともかく、販売時間外にしか売られていないや風紀委員が抑えているなど意味不明も良い所だ。

佐伯劾 > 「だよなぁ、俺だって知らねぇよ。
噂といやたしか――最後の一個を買った奴は早死にする・・・・・・てこれも似たようなもんだな」

肩を竦めたいした情報がないことをアピールする。
どうやら、噂のパンを手にするのは当分先の話になりそうだ。

あっという間に焼きそばパンが胃の中に消え、カレーパンを開ける。
スパイスの効いた香りが食欲を刺激する。

「はむ・・・もぐ・・・・・・、うほぁ、辛ぇっ!?」

ごほごほと咽ながら牛乳で口を癒す。
どうやらかなりの辛口だったようだ。
半ば涙目になりながらなんとかカレーパンを食べ終える。
とても辛いが何故か病み付きになる旨さがあるのが困る。

「ああ、そう言えば。俺は佐伯劾。よろしくな」

少し赤い目のまま少年に名前を明かす。

白鈴秋 > 「……おそろしいパンだ。今後購買で最後のひとつは買わねぇようにしておく。それが伝説だったら困るからな」

 わざとらしく肩を竦めて見せる。
 早いななんて思いながら自分は自分のペースで食べ進める。まだ半分程度しか食べていない。
 
「焦って食うからだ」

 涙目になりむせる姿を見て思わず少しだけ笑ってしまう。
 辛口はかなりからいと聞いていた。たぶんそれがヒットしたんだろう。
 名乗りを受けしばし間。というよりはコロッケパンの飲み込むまで待って。

「んぐっ……白鈴秋。1年だ、白鈴でも秋でも好きに呼べ」

 片手に持ったコーヒーを一口飲む。
 やっとコロッケパンを食べ終えアンパンに移る。

「よくそんなペースで食べられるな。お前が二つ食べる間にひとつがやっとだぞ」

 アンパンとブラックコーヒー。持っているものだけみればどこぞの刑事であった。

佐伯劾 > 「んじゃ秋だな。俺も佐伯でも劾でも好きに呼べばいい。
しかし一年か、俺とタメだな」

名を交わし、互いの学年も判明する。
数少ない同級生との邂逅になんだか熱いものを感じる気がする。

「言うほどでもねぇよ、むしろそっちが遅いんじゃないのか?それじゃあ張り込みは務まらねぇぞ」

一昔前のドラマのような組み合わせに肩を揺すって笑い、軽口を叩く。
最後の一個、メロンパンをあけて一口。

白鈴秋 > 「わかった、なら俺も劾って呼ばせてもらう」

 そして相手に少しだけ視線を向ける。

「ああ、タメだな。上の学年かと思ってたんだが」

 少しだけ笑う。身長的に少し見上げるようになってしまうゆえ致し方なし。
 それから少しだけ首をひねり、ああ……と

「別に張り込みするわけでもねぇから問題ねぇよ……というよりあれパン屑でバレるぞそこにいたって」

 少し校庭に視線を移しながらそんな事を言い放つ。

「……食べるのが遅いってのはその通りかもしれねぇな。同学年の男子に比べるとかなり遅い気がする」

佐伯劾 > 「おう、それでいいぜ。
確かに遅いな。まぁそんなに気にしなくていいんじゃないか?
少なくとも俺は気にしないさ」

視線に釣られて――そのままでは見られないので体勢を替えて校庭へ視線を投げる。
昼休みの最中、元気なことに走り回る人影がいくつか見える。

「元気だなぁ」

まるで年寄りのような、そんな呟き。
いつの間にかメロンパンも腹へと消えて、ビニール袋にごみだけが残る。
よっこらせ、と立ち上がりフェンスへ向かい身を預ける。
眼下の光景を少し羨ましそうに、眩しそうに眺めながら。

白鈴秋 > 「そう言ってもらえて助かるよ。大体俺だけ食べ終わらないってことが多くて結構落ちつかねぇときもあるから」

 少しだけ目を細める。別にガタイ的に食べる量が少ないわけではないが……余計おそさが目立つ。
 外を眺めていたが。横から聞こえた声に少しだけ笑ってしまう。

「なんでそんな親父くせぇこと言ってんだよ。俺らむしろ1番若い部類だろうが」

 1年生なのだからこの中では若い部類のはずだ。
 だが……視線を校庭に落とす、実際に走り回っているのを見ると。

「……まぁ、真似はできねぇけどな」

佐伯劾 > 「俺は逆だな。大体他の人よりも先に終わることが多いな。
まぁ、あんまり気にしないし気にされてないけど」

視線は校庭へ向けたまま、言葉だけで返す。
親父臭いと言われればまったくだと苦笑しつつ。

「だろ?意外と出来ないんだよな」

うんうん、と同意するように頷き。

――昼休み終了の五分前の鐘。

眼下の人影も慌てるように校舎へ戻っていく様子が見える。

「お、もう終わりか。
俺は戻るけど、秋はどうする?サボりか?」

今度は顔を向きなおして隣の少年に尋ねる。

白鈴秋 > 「……それってやっぱり食うの早いんじゃねぇのお前」

 少しだけ首をひねる。
 大体他の奴より食べ終わるの早いということは食べることが早いという事になるのではないだろうか。
 
「ああ、体力というより……気力がな」

 中々集まって走り回るという精神力が沸かない。そういうノリを余りしないのも原因かもしれないが。
 そしてなる鐘。

「……まぁ行くしかねぇか。次のタルいんだが」

 残っているコーヒーを全て飲み干しゴミ箱に投げる。
 カコンと小気味良い音と共にゴミ箱に空き缶は入った。

「行こうぜ劾。二人そろって遅れるなんて馬鹿らしいのはゴメンだ」

佐伯劾 > 「ハハ、だろうな」

あっけらかんと笑う。
分かってはいたがやはり食べるのは早いのだろう。
小気味よい音を立ててゴミ箱へと吸い込まれた空き缶を眺めて。

「そうだな、次は何だっけか・・・・・・」

フェンスから離れ、扉へと――教室へと向かう。
次の科目すら覚えてはいないが、そこはそれ。
どうにかなるだろうと根拠のない自信を以って。