2015/07/02 のログ
矛海 遼 > 箱の中、全てのミトンに目を通し、手に取っていたミトンを箱にしまうと、名簿を取り出して成績を付けていく。

「………もっと早く、こんな生き方も出来ていたのかもしれないな。」

自身の生まれの不幸を呪った事は無かったが、そのような、【どうにもならない事】を脳裏に浮かべる。
もしも、自身が世間一般で言う【まとも】な生活を送れていれば少しは違ったのかと、以前よりも速くこのような場所で満たされていたのかと。

矛海 遼 > どうにも雨が降り、静かな環境だと気持ちが沈んでしまって良くない。
まさか自身がこんなにもセンチな物だったとも思ってはいなかった物だが。

「…………少し、休むか。」

名簿を棚に入れると引き出しからアイマスクを取り出し、
目元に付けると椅子に座りながら静かに姿勢を整えたまま眠りに就く。

矛海 遼 > 誰も居ない職員室に残った物は、眠る男と雨の降り注ぐ音、そして徐々に小さくなるコーヒーの湯気だけ

静かに時間は流れて行く。

ご案内:「職員室」から矛海 遼さんが去りました。
ご案内:「保健室」にジブリールさんが現れました。
ジブリール > 【昼間にテストを終えてから家に帰るまで、カーテンに仕切られたベッドひとつを占領していた。片手に包帯を弄びながら、女は調子外れの鼻歌を歌う。】
ジブリール > 【カーテンを動かして窓際を眺める。保険医が一時的に去る際に窓のカーテンを閉めてもらったお陰で夜光すら入ってこない。
 やや空いたままのベッド周囲のレールはそのままに、見飽きた長方形の世界よりも、外側の景色を楽しむ。
 ベッドの上で悠々と体を伸ばして眠っていられる。
 昼間早くにテストが終わり、談笑のために集まっていた生徒もいたが、今はとても静かである。】

ジブリール > 「ん……」

【ぐ、っと伸びをする。肩を竦めて重たい息を吐いた。何度か視線を左右に向けてからベッドから立ち上がった。
 女薄暗い部屋の中を歩く。身体的関係上どうあっても光を受け入れることができないために。
 やがて丸椅子の上に腰を下ろした。体を横たえたままでいるのも、それはそれで苦痛だった。】

「……」

【薬品のにおいが、鼻につく。不快感は無かった。女にとっては慣れたものである。】

ご案内:「保健室」にウィリーさんが現れました。
ウィリー > 3回ノックをする。返事がないのを確認しようとしたのだろう。
ややあって仄暗い保健室に入ってきたのは、金の瞳の男だった。

「ウチの薬よりここの薬のほうがよく効くんだよな……
 火傷用の軟膏と抗生物質と……確かこの辺りに」
勝手知ったるなんとやら、薬品類が保管されている棚をゴソゴソと漁って、お目当ての物を探していた。

誰かがいることに気づいていない、というより暗い保健室に人がいるとは露とも思っていないようだった。

ジブリール > 【ノックの音に答える声は無かった。そも、関係者以外に態々来る理由があまり考えられなかったから。
 保健室の中で死角になるような位置、暗さ。女はなにやら口にして物色する姿を遠目で見ていた。金色の目が視界に入った。】

「……軟膏でしたら今手をかけている棚のにあったかと」

【真っ暗な部屋で声を伝い、アドバイス。】

ウィリー > 「んおっ!?」
気配のない場所からの声に、思わず油紙と包帯を取り落としそうになる。

「……誰だかしらないがいたなら返事をしてくれ、ビックリするだろう」
言われたとおり、軟膏は棚の中にあった。ちょうど新しいのを出したばかりなのだろう。
中に使った形跡は見られない――使ったら使ったで、バレてしまうパターンだった。

「ともかく……ありがとう、助かった」消毒液と脱脂綿、ピンセットもかき集めて、ベッドに腰掛けた。
手にしていた薬品のたぐいを並べ終わると、おもむろに上半身の服を脱ぎ始める。

ジブリール > 「あぁ申し訳ありません。もしやこわいお方がいらしたのかと思いまして」

【顔ははっきりと見えないが、顔があるであろう場所をしっかりと見上げた。
「どういたしまして」ヒマ潰しに眺めていた薬品の場所を何となく覚えていて良かったと思う。】

「……」

【口元を結んで吊り上げる。殿方が上半身を脱ぎ始めても恥らう様子は無かった。むしろ】

「やけどをなされているのですよね。僭越ですがお手伝いできることはございませんか?」

【保険委員でもないけれど。そんなことを問いかけながらそちらに歩み寄る小柄な体躯。】

ウィリー > 「ははは、そうか。それは悪かった、俺は平々凡々な生徒だよ
 名前はウィリー。ウィリー・トムスン」
さんざん騒ぎに巻き込まれたり巻き込んだりされている、ほどほどに渦中の人物であるが、恐らくは知らないはずの名前だ。

「おっと、不調法だったか……」脱ぎ終わってから気づいたが、どうやら相手は女性のようで。
そして、視線のやり方――弱視者特有の、相手の音に合わせて方向を定める――を見て、急に脱ぎだしたことに慌てないことに合点がいった。

「いや……ああ、そうだな。済まないが手伝ってくれるか」
どのくらい見えていて、見えていないのかがわからない。
とりあえず彼女の前に立って手をとってベッドまで引いていく。

「不躾な質問だが、君は視力が低いほうか?」

ジブリール > 「まぁ、でしたらわたくしと同じです。わたくしはジブリール・ナヴァ・アルと申しますわ」

 その名前は耳にした事が無かった。"一般生徒"に名が通らないならば、それは平々凡々な生徒であろう。
 視線は布擦れ、その声のある場所。そこより上を見れば自然と目をあわせられる。といってもほんの少しズレているのは仕方ない。
 手を引かれ、ベッドの骨、布団のある場所を指先で伝う。

「お恥ずかしながら。ですがここまで近ければあなたのお顔やお体もよく見えますわ。なのでご安心ください」

【並べられた脱脂綿、ピンセットを軽快な動作で手の中に収めながらそう伝う。】

ウィリー > 「ジブリール……天使の名か、立派な名だ」
特徴的な名前だ。言語の入り混じった、暗号じみたものを感じる。
まあ、思い違いだろうが。

「それなら大丈夫だ、頼らせてくれ」
ベッドの縁に改めて腰を掛けると、背中を見せた。
全身傷だらけだが、ほとんどが癒えてケロイド状になっているものばかり。
問題はそれらではなかった。

「腕をな、左の肩甲骨のあたりから、機械に取り替えてあるんだ
 普段使いには問題ないんだが、荒事を片付けるとすぐに……」
肉と鉄の結合部が強く擦れて、膿みはじめていた。そして、その周辺は義腕から伝播した熱による中程度の熱傷。

「水で流してはきたから、後は消毒と抗生物質、周りの火傷に軟膏を塗って油紙で蓋して包帯を巻く」
「手を煩わせてすまないが……頼む」