2015/07/07 のログ
ご案内:「保健室」に蓋盛 椎月さんが現れました。
■蓋盛 椎月 > 保健室の隅に立てられた笹飾りを指でもてあそぶ。
先日矛海から譲り受けたものだ。
保健室を訪れた生徒たちが願い事を書いた短冊が
いくつか吊るされている。
『あたしのすきなひとがみんなながく元気でいられますように』
――その中には蓋盛の書いたものも存在した。
「試験期間もつつがなく終わりそうだな……」
ちょっとした事件はなくはなかったものの。
例年通り平和に終わりそうと言える。
■蓋盛 椎月 > 七夕は日本の神事『棚機』と中国の行事『乞巧奠』が
合わさったものだと言われている。
『乞巧奠』とは織りや裁縫、習字が上達するように願を掛ける行事だ。
括流が言っていたのはそれのことだろう。
年間行事や風習がいろいろな思惑や慣性で
都合よく変容してしまうのはよくあることだ。
大変容以後、神霊と呼ばれる存在も人々の前に(稀に)姿を見せるようにはなった。
変容後世代である蓋盛ではあるが、
何かしらのご利益を期待して短冊に願いを書いたわけではない。
かと言って、そういう風習があるからと乗るだけ乗った、という消極的なものでもなかった。
ご案内:「保健室」に片翼・茜さんが現れました。
■片翼・茜 > 「…………。」保健室の扉の前で、茜は深呼吸を繰り返していた。別に心臓が動いているわけでもないので、意味はないのだが、しみついた習慣だ。
中に人の気配、恐らく蓋盛先生だろうとは思うが、違うかもしれない。扉を開けなければ中の人間は混ざり合った状態にある。
人違いなら恥ずかしいし帰ろうかとも思ったが、コゼット先生に申し訳が立たない気がして、それも憚られた。
「……カハァー。」深く息を吐いて、意を決する。入ろう。4回ノックの後、入室。
「失礼します、蓋盛先生はいらっしゃい……ますね。」居ることを期待して来たのだが、実際に居るとやはりどうすればいいかわからなくなって、入り口のところで立ち止まってしまう。
■蓋盛 椎月 > 「おや」
来客の姿を認め、にこりと微笑む。
「こんにちは、茜先生。
いかがしました? 短冊にお願いごとでも書きにきました?」
机に置いてあったペンと短冊を取って差し出す。
茜とは対照的に、いつものようなリラックスした態度。
■片翼・茜 > 「こんにちは。いえ、そうではなく……。」手をかざして、短冊とペンは断った。
「ええと……。」言葉に詰まる。しばらく黙りこんでから、思い出したようにドアを閉めた。蓋盛に歩み寄る
「少し、お話に来ました。……この間の、あれ……つまり……私を、口説かれた……ことで。」ぼかしては伝わらない、と言われたことを思い出し、ためらいながらも、きちんと明確に伝える。顔が赤くならない体で良かったと、内心思う。
■蓋盛 椎月 > 短冊とペンを引っ込める。
「まあ、座って」
丸椅子を出して、座るよう促す。自分も事務椅子に座って。
「口説かれ……ですか」
きょとんとした表情。
うーん、と唇に指を当て、考える素振り。
「『自分は今後もそういうことに時間は費やせないから、
冗談でも口説くような真似はするな』
――そんなところでしょうか?」
思いつきのうちのひとつを口に出す。
■片翼・茜 > 椅子をすすめられれば「失礼します。」といってからぎこちなく座る。緊張で固くなっているのがまるわかりな座り方。
「いえ……そこまでキツいことを言いたいわけではなくて……。」別に仕事一筋なのは他に時間を使うあてがないからだ、仕事以外を全て捨てているわけではない。
目線を手元に落とし、手を何度かぐっぱーする。一度深く呼吸して、目線を相手に戻す。
「ええとその……本気で私を…その、『落とし』にかかってるのか、確認しておこうと、思いまして……。」遊びだったらもうやめてくれと言うつもりだった。そしてその答えを期待している。もう恋愛をする予定は無い。
■蓋盛 椎月 > 「そんなことをわざわざ訊きに来たんですか。変な人ですね。
――冗談だった、ということにしてほしいんですか?」
実に可笑しそうに。
「さて、どうなんでしょうね。
あたしは、人生のあらゆることを“遊び”に費やすことにしていますから。
こうして養護教諭をやっているのだって、言ってしまえば遊びです」
目を細めて見つめる。
茜の瞳の奥に宿る真意を見透かそうとするように。
「あたしは、ただ、心の赴くままにあなたに語りかけただけですよ。
――探るべきは、あたしの意思ではなく、
あなた自身の気持ちでしょう」
どこか他人事のように。
「――あなたはどうなさりたいんですか?」
■片翼・茜 > 「…………っ。」期待していたのはYESかNO、さらに言うならYES、つまり遊びだったという答え。しかし相手の答えはそうではなかった。少なからず、困惑する。
「人生のあらゆることが遊び……?」そんな考えで教職をやっているのか、この人は。遊びで人の命を預かる仕事を、養護教諭をしているのか……!ぎゅっと拳を握る、ふつふつと怒りが湧いてきた。
それで答えは決まった、こんな相手に動揺していた自分が恥ずかしい。「私は……迷惑しています。」少し声に怒りが混じる。
「あなたの"遊び"に動揺して、日常生活に支障が出ました。私が愚かなせいもあるでしょうが、もうこんなことはやめてください。遊ぶなら他の人とどうぞ。もう私は付き合えませんから。」一息に言い切る。険しい目で、睨むようになっていた。
■蓋盛 椎月 > 「…………」
怒りの言葉とともに睨まれれば、傷ついたように目を伏せる。
叱られた子供のような表情。
「……そう、それがあなたの答えですか。
ありがとうございます。ごめんなさい。
もう、二度としません」
粛々と頭を下げた。普段の彼女からすればひどく慎ましやかに。
「……あ、珈琲お淹れしましょうか?
折角足を運んでいただいたんですから、
あたしを叱るだけで終わっては申し訳ありませんし」
顔を上げる。寂しげに口元だけで笑った。
■片翼・茜 > 「そうしてください。私は冗談が通じない人間だというのが、わかりましたので。」言い過ぎたかもしれない、と思ったが。また"遊び"に巻き込まれては困る、と考えて慰めようとはしなかった。
席を立とうとして、コーヒーの誘いに一瞬迷う。
このまま去れば険悪になるかもしれない、少なくとも自分はもう相手を避けるだろう。
「わかりました、ではこの話はもう終わりにしましょう。怒りも後悔も忘れて、普段通りに接するようにします。」普段通り、気だるげな無表情顔に戻る、意識して戻した。
だが、決定的な不信感を相手に抱いている、表には出さないが。
■蓋盛 椎月 > 立ち上がって、保健室に常備してあるインスタントの珈琲を淹れる。
砂糖やミルクのないブラックのものが、マグカップに入って二人分出された。
「あたしは……」
珈琲をすすりながら、ぽつりと呟くように。
「それでもあなたのことがスキですよ。
できれば、あなたのことがもっと知りたかった」
マグカップを口から離した時には、もういつもの笑い方に戻っていた。
■片翼・茜 > 「どうも。」軽く頭を下げてコーヒーを受け取り、まずは一口、熱と苦味が口に広がり、心が落ち着く。
相手のつぶやきに、こちらも「正直ね。」小さく、呟くように。知りたかったなんて言われたから、少し話そうと思った。
「少し嬉しかったんですよ、あなたの言葉。女として見られたのは随分久しぶりだったから……。本気だって言われたら、なびいてもいいかななんて、考えてました。」黒い水面に揺れる波紋をじっと見ながら。
■蓋盛 椎月 > 「それがわからないんですよ。
本気、ってなんでしょうねぇ」
ひひひ、と意地悪そうに笑う。
「『生涯アナタだけを愛する』?
『世界中がキミの敵に回ってもボクだけは味方だ』?
『キミが死ぬときはボクも一緒だ』?
……なんてことを恥ずかしげもなく言う人がいますけどね。
できると思います? できっこないんですよ。
人の心はうつろうし、出来る事にも限界がある。
ましてやあたしは生まれついてのいい加減……」
だら、と事務椅子の背もたれに身を預ける。
「できないことはしない。嘘もつきたくない。
だからあたしは、『本気』で『遊ぶ』ことしかしない
――それがあたしなりの誠意なんですよ」
反り返ったまま、歯を剥いて笑顔を作った。
■片翼・茜 > 「そう、わかりませんか……。」マグカップを軽く揺らして、もう一口。
「私もそういった類のことを言われたことありますよ。もうずっと昔ですし、そう言った人は墓の下ですけど。でも、嘘をつかれたとは思ってません。あの人は本気でそれを果たすつもりでしたから。」左手の薬指の根本を、指でなぞる。ここかつてあったものの感触を思い出す。
「出来ない約束はしない、嘘もつかない、それは現実的な考えだと思います。でも、嘘でもいいから言って欲しい時だってあるし、それを果たそうと必死になるなら、それは嘘じゃなくなると思うんですよ。」もしかしたら、相手は真面目すぎるあまり、忠実すぎるあまりに、嘘になることを恐れているのではないだろうか、そんな考えが頭をよぎった。
■蓋盛 椎月 > 「そうですね。そうかもしれません……」
珈琲をもう一口含み、しばしの沈黙。
「茜先生は、戦ったことはありますか?
怪異や、戦闘系異能者、魔術師……なんでもいい。
・・・・・
ああいうのを目の当たりにしつづけるとね。
だいたいのことは無意味だとわかるんですよ。
どれだけ誠実にあろうとしても、どれだけ必死になっても。
人の生涯はか細い綱渡りの上にあって、
どんな尊い約束も一瞬で果たされないものとなる……」
きぃ、と事務椅子を回す。
くたびれたような横顔を見せる。
「その点、肌を寄せあうのはいいんですよ。
伝わる温度は、絶対に嘘をつきませんからね」
再び茜のほうを向いて、マグカップを片手に
さも可笑しそうにくつくつと笑った。
■片翼・茜 > コーヒーは冷めてきて、茜の鈍い感覚ではもう何も感じない。
「……。」虚無主義者めいた相手の言葉と、疲れきったような横顔を、静かに見ている。
20そこそこにしか見えない相手は、壮絶な経験をしてきたようだ。ただ死んだあと動いてただけの私と違って。自分の考えは理想論めいた甘いものなのだろう。ならばもう、諭すような言葉はかけられなかった。
不信感はいつの間にか萎んでなくなった。だが、自分が理解しきれる相手とも思えない。
「まぁ、ほどほどにどうぞ。学生達に悪影響がなければ何も言いませんから。」指で頬を釣り上げて軽く笑う。
■蓋盛 椎月 > 「……おっと、少し調子に乗って饒舌になってしまいましたね。
普段こんなこと喋らないもので、つい」
すみません、と軽く頭を下げる。
「ま……なんといいますか。
あたしは『嘘』をつきすぎたし、『嘘』をつかれすぎた。
だから今後の人生は出来る限り正直に生きていこうと思って。
そんなところです」
言って、マグカップを一気に傾けて中身を飲み干す。
「あたしの『遊び』は忘れていただいて構いませんが、
あんまり寂しいことは言わないでくださいね。
あたし、悲しくなっちゃいますから」
茜の作った笑いに合わせて、にかと笑った。
■片翼・茜 > 「いえ、かまいませんよ、私も少し語ってしまいましたし。」お互い様だ、と首をふる
「それが蓋盛先生の哲学、というわけですか。
さきほどはすみません、表面的に捉えて、あなたを軽蔑していました。」頭を下げる。誘いを受けてよかった、あのまま帰っていたらずっと誤解したままだっただろう。
「努力します。慢性的なユーモア欠落症を患っているので、難しいとは思いますが。」冗談めかして答える、こちらも冷めたコーヒーを飲み干して、置く。
「楽しい時間を過ごせました、ありがとう。」指を使って、微笑む。そろそろ仕事に戻らねばならない。
■蓋盛 椎月 > 「慣れてますよ。軽蔑されるのも、フられるのも」
けらけらと笑う。
「こちらこそ。茜先生とお話できてよかったです。
その笑顔、素敵ですよ」
カラになったマグカップを片付けた。
■片翼・茜 > 「私も先生のこと、好きになりましたよ。もっとあなたのことを知りたいと思います。いつか、話しあいましょうか、お互いのこと。」
もちろん、同僚としての、友情としての好意だが。自分を知ってほしいし、相手を知りたいと、思えた。椅子から立ち上がる。
「ありがとう、蓋盛先生も、笑顔がお似合いですよ。それでは」軽く頭を下げてから、部屋を出て行った。
ご案内:「保健室」から片翼・茜さんが去りました。
■蓋盛 椎月 > ギシ、と背もたれにより掛かる。
「フられちゃったな~」
別に一度や二度ではない。
この『遊び』のせいで仲が致命的に決裂したこともある。
そう言った例に比べればひどく穏当に終わった。
ついつい忘れかけていたが、自分やおこん先生のような
“おおらか”な人物ばかりではない。
仕方ない話だ。
という前提があっても、堪えないというわけではなかった。
ため息。
ご案内:「保健室」にウェインライトさんが現れました。
■ウェインライト > 「ふむ。今度こそここのはずだね?」
保健室の扉の前。そのプレートを確認している一人の影。
燃え上がるような金髪/融かし尽くすような赤い瞳/蕩かすような美貌
――最も優美にして最も華麗なウェインライト。
今度は、屋上と保健室を間違えなかった。
不敵な笑みを浮かべ/胸を張り/踊るようなステップで
「失礼するよミス蓋盛……ッ!」
ウェインライトが保健室に飛び込んだ。
その背には、相変わらず薔薇のエフェクトが舞っていた。
■蓋盛 椎月 > 「よお。美しい人じゃない。
いただいた薔薇、保健室に飾らせてもらってるよ」
回転椅子を新たな来客のほうへと向ける。
いつもどおりの気易い笑顔。
「それで何用かな? また何かお悩み事でも?」
■ウェインライト > 美しき一輪の薔薇。あの日から枯れること無く咲き誇る薔薇を一瞥。
満足そうに彼女の言葉に首肯する。
「なに、実は正式にこの学園に復学が決まってね。
遅ればせながらの挨拶というわけさ」
我が物顔で、そのあたりにある座椅子に座り込む。
どうやら挨拶だけを済ませていくわけではないようだ。
蓋盛の気易い笑顔には、美しき微笑を返す。
赤く輝く瞳は健在で、まるで欠け月のように細められた。
■蓋盛 椎月 > 「ほう、それはそれは!
素晴らしいことじゃないか。おめでとう」
目を丸くして、素直な祝辞を述べる。
「せっかくだし、祝杯といこうか。何か飲みたいものはある?
といっても、大したものはないけどね」
立ち上がり、インスタント飲料や茶などが納められている棚へと向かう。
■ウェインライト > しなやかな指を組み、その背を視線で追う。
笑みを漏らして指を振り。
「ミルクでお願いするよ。
成分無調整とやらがあるならなおいい」
ウェインライトは吸血鬼だ。
しかしこの復活してからというものの、血を一滴たりとも飲んでいない。
渇きで死に
エレガントでない生活に死に
かろうじて妥協案として見つけたのが牛乳であった。
妥協? 美に? 僕が?
その思考に至った時、ウェインライトは三度目の死を迎えた。
#死因・ミス蓋盛! 後ろ後ろ!
■蓋盛 椎月 > 「はいはい、牛乳ね~」
冷蔵庫を開く。たまたま紙パックの牛乳が入っていた。
そういえば乳と血は近しいものらしい。そういうことだろうか?
そんなことを考えながらグラスを用意し、振り返ると――
「ウワアアアアア死んでるウウ――ッ!!」
白目である。
■ウェインライト > 蓋盛の背後から鳴り響くフィンガースナップ。
そっと背後から誰かの手が伸びて、そっと紙パックとグラスを奪っていくだろう。
振り返れば、すぐ背後にウェインライト。
いつの間にかそこに居て/最初からそこに居たかのように
艶然と笑みを浮かべながら、ミルクをグラスに注いでいる。
「ずいぶん元気そうな顔じゃあないか、ミス蓋盛。
どうやらご機嫌みたいだね?」
いたずらめいた笑みを浮かべているが、違う、そうじゃない。
■蓋盛 椎月 > 「うおっ」
びっくりして反対側に飛び退る。
この万国ビックリ死に芸に慣れるにはまだ少し掛かりそうだ。
「ついついオーバーリアクションしただけだよ!
いくら生き返れるからって保健室でホイホイ死なないでよね~まったく。
養護教諭としての沽券に関わるからさ~」
肩をすくめて、冗談めかした言葉。
……ひょっとして気落ちしていたのを慰めに来てくれたのかなとか
蓋盛は一瞬考えたが、おそらくは違うだろう、と結論。
彼(便宜的呼称)はただ自由に振舞っているだけだ。
おそらくは自分と同じように。