2015/07/28 のログ
ご案内:「教室」に三枝あかりさんが現れました。
三枝あかり > 昼間。照りつける太陽。教室を掃除している一人の少女。
「げ………限界だ…」
据わった目つきでそう呟いた。
授業のない教室を掃除しろ。それだけの、それだけのミッションだ。
でも夏場に窓を開けただけの教室は暑いし、人がいないし、いつまでも終わらないし、人がいないし、人がいない。

とにかく誰もいないのが何とも言えない。
寂しいのだ。人恋しいのだ。
今すぐ誰かに電話しようかと思ったけれど、スマホの登録ナンバーは口下手な桜井雄二と大嫌いな兄・川添孝一しか入っていない。

詰んだ。っていうか私友達少なすぎ。

三枝あかり > スマホを開く。
この島に来る前の友人の名前を見つけた。
でも、どうしても私は彼女たちに心を開くことができなかった。
どうしてだろう。あれほど切望していた日常の一部なのに。
溜息をついて画面を切り替える。

次に出たのは、三枝の家の固定電話の番号だ。
三枝。何もない、川添あかりを引き取ってくれた家。
それでも私は三枝の家に戻りたいとは思えない。
あの家には私以上に何もない。
違う……私の居場所がないんだ。だから空虚で仕方ない。
視線を逸らすように画面を切り替えた。

とりあえず桜井先輩に電話をしてみよう。
「もしもし? 桜井先輩ですか! ちょっと掃除が広範囲すぎてどうしようかなって……」
「えっ、彼女さんと一緒にいるんですか!? そうですか……すいません邪魔して…そ、それじゃ!」
慌てて電話を切った。私、敗北者。

三枝あかり > 残されたスマホの登録ナンバーは兄・川添孝一のみ。
電話をかけて迷惑だと思われないだろうか。
いや、それ以前になんかこう、話しかけて大丈夫なのだろうか?

川添孝一とこの島で再会した時に大嫌いだと言い放っておいて。
自分は兄の取り成すままに生活委員会に入って日々の糧を得ている。

恥知らず。

自分をそう評価しておいて、そっと兄に電話した。
心臓が高鳴る。出なかったらどうしよう、とか。

「あ、もしもし、お兄ちゃん?」
「って何かうるさいね……ゲームセンターにいるの?」
「そっか……クレーンゲームが手強くて…」
「ううん、何でもないの。それじゃ」

冷たい対応。それよりも自分の心に、疼くほどの良心が残っていたことに驚いた。
スマホを切って、項垂れた。
自分は最低の女だ。でも、人と話したいです。

三枝あかり > そうだ、掃除をしよう。
教室掃除を終えたら気分転換にカフェにでもいこう。
冷たいストレートティーでも飲めば気分も晴れるに違いない。

「冷たい飲み物は偉いからね……だって冷たいんだよ…この真夏に…」

すっかりぬるくなった麦茶を飲み、塩飴を舐める。
生活委員会掃除地獄に従事している者なら当然の備えだ。
掃除、掃除、掃除。掃除をしなければならない。
生きているのだから、当然のこと。

三枝あかり > そのまま教室全体が綺麗になるまで彼女は掃除を続けた。
街の、校舎の、綺麗や便利を守り続けるという戦い。
その戦いの恐ろしさの一端を知った三枝あかりだった。

ご案内:「教室」から三枝あかりさんが去りました。