2015/09/22 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (金工室。
『溶接を用いた自由表現』というテーマで制作された金属のオブジェが並び、それらを前にしたヨキが講評会を行っている。
大規模な学園都市とあって、本土の美術大学にも劣らない設備が揃っているのは履修生にとっても幸いだ。
学生の、若者の、男子の、女子の、異能者の、無能力者の、地球人の、異邦人の、そしてそのいずれにも当て嵌まらない発想の具現を見るのを、ヨキ自身好んでもいた。
金属の、金属らしい量感で接地するもの。
まるで絹のような軽やかさで棚引き、宙に靡くもの。
彩色を施したような風合いを帯びて、虹色に輝くもの。
履修生のひとりひとりを前に、時間を掛けて評してゆく。
いずれの作品にも、等しく欠点と褒めるべき点がある。
開け放された金工室からは、ヨキの低く通る声の他に、時おり生徒らの慎ましやかな笑い声が漏れ聴こえてくる。
真摯と朗らかの交じり合う空気が、静かな廊下においても察せられる)
■ヨキ > (にこやかで、陰のない、人好きのする顔。
作られたものたちを前にしたときのヨキは、全く幸福に満ちている。
昨晩、ひとり食べた。
落第街に埋もれたままでいるには勿体ない器量の娘だった。
華やかな顔と声をして、男たちの気を引いていた。
気を引かれた男に誘われて、罪を犯した。
殴り、殺し、穢し、食べて家を掃除した。
それはヨキにとって、芯から正しい判断からなる行為だった。
排除するのは、島のために。
痕跡を消すのは、落第街を乱さぬために。
ヨキの顔は全くもって幸福に満ちていた。
何しろこの男に、後ろ暗い点など何ひとつ存在しないのだから。
すなわち彼は、正義の人である)
(やがてヨキが、講評の言葉を切る。
測ったように、チャイムが鳴った)
「――さて。今回もぴったり時間どおり、だ。
以上、これにて講評会を終了しよう」
(挨拶の声。
他の教室の数々においても、生徒らの声がいっぺんに明るみ、校内に賑わいが満ちる――)
ご案内:「教室」に朝宮 小春さんが現れました。
■ヨキ > (やがて片付けが終わり、ヨキがひとり残された金工室は、高い天井と相まってがらんとしている。
教室の奥半分を設置スペースで占め、作業中は駆動音を発する巨大な作業機械の類も、今はしんとして静かだ。
広く開いている床に椅子のひとつを据え、一息ついて腰掛ける。
手近な作業机にペットボトルの茶を置いて、口許を拭う)
「…………ふう。
この調子ならば、学園祭も楽しみなことになるぞ」
(教え、時に教えた以上の能力を発揮する生徒らの手わざ。
ひとり満足そうに微笑んで、窓の外を見遣る)
■朝宮 小春 > (こんこん、っとノックを少しだけして。 横からちら、と覗く眼鏡の顔。
大丈夫かな? ときょろきょろと視線を右に、左にと向けて。)
「ああ、授業終わりまし……た?」
(おっかなびっくりの表情で部屋の中に入ってくるのは、生物教師、朝宮小春。
全くの生身の人間であり、異能も何も無く、その身一つで教育に当たるちょっと変わった普通の人。
完全なインドア派かつ貧弱もやしの彼女にとっては、金属が高速で回転する機械が設置してある部屋は、ちょびっと怖い部屋なのであった。学生時代からずっと。
ドリルなどがあれば、何故かちょっと距離を取って。)
「お疲れ様です。今、お時間よろしいですか?」
(椅子に座っている男性の後ろ姿に、大丈夫かな、と声をかける。
最近ここに来た彼女に取っては、どの先生も基本的には先輩だ。)
■ヨキ > (ノックの音に気付いて、振り返る。
大型機械から電動工具に至るまで、何かと物々しい道具類に囲まれたヨキが、片手を挙げてにっこりと笑い掛ける)
「やあ、朝宮か。お疲れ様。
ついさっき、授業が終わったところさ。ヨキに用事かね?
ああ、そこいらの機械は電源を抜いてあるから平気さ、動きはしないよ」
(相手の心中も露知らず、平然として笑い飛ばす。
立ち上がって出迎えると、いよいよ長身が目立つ)
■朝宮 小春 > 「お疲れ様です。………こ、こういうの、動かないの分かってても怖くなっちゃうんですよね。
不器用で、よく怪我したもので……」
(苦笑交じりに頬をぽりぽり。
木工金工全てにおいて何をやらせても怪我をするから、結局他人に全部やってもらったという経歴の持ち主。ダメ人間である。)
「あ、その、ええと、ご相談があるんですけど……っと。
だ、大丈夫です、座って頂いて。」
(立ち上がれば、顔ひとつ分は余裕で高いだろう。完全に見上げる体勢になってしまい、ちょっと慌てる。)
「え、ええと、授業で使う道具がどうやら取り寄せるのに時間が凄くかかりそうなんで、なんとか自作できないかな、と思って。」
(と、ざっくり要望を伝えながら、どうぞどうぞ、座って座って、とジェスチャーで伝えてみる。)
■ヨキ > 「はは、工具で怪我か。ヨキの生徒にも、そういうのがたまに居たものだ。
何をやらせても危なっかしくて……。
まあ、このヨキも怪我に怪我を重ねて今に至るからな。ヨキを尋ねるうち、きっと慣れるさ」
(なんてな、と。しゃあしゃあと誘いの言葉を投げ掛けて、小春に向かい合う。
自分からすれば目線の低いのは慣れっこであったために、相手からの言葉にぱちくりと瞬く。
間もなく、ああ、と納得した様子でもうひとつの椅子を抱えてきて、小春の足元に置く)
「授業で使う道具?ほう。君の授業というと……生物か。
何かしら代用できるものもあるやも知れん。何だね?」
(小春のジェスチャーに応え、椅子に腰を下ろす。
細身の外見よりも重たげに、座面が小さくぎいと鳴いた)
■朝宮 小春 > 「ああ、自分の胸に刺さりますその言葉………
本当ですか? ………まあ、確かに包丁では怪我しなくなりましたし、少しづつ慣れはするんでしょうけれども……
私、不器用なんですよね………。」
(とほほ、と肩を落としながら。 ようやく理解してもらえれば、失礼しますね、と椅子にこちらも腰掛ける。
同じ椅子に座ってしまえば、お互いに目線はやっぱり見上げるようであるけれども。)
「本当ならその………人体解剖図が欲しいんです。
次は生物で、人の体について説明することになるんですよね。
注文をしたら、届くのに一週間ほどかかるらしくて………」
(少しばかり困った表情で説明をしつつ。
人の身体の中についての講義をする予定だと話をする。
解剖図、という言葉に少し口篭ったのは、人によっては「人の内臓」などのイメージに拒否感があるため。
男性だし、大丈夫だよね、と判断をしたわけだが。……まあ、実際に見たことがあるとは思うわけもなく。)
「……それで、骨と関節、筋肉と神経について先に講義しようかな、と。
そうしたら、関節の模型も1週間かかるらしくて。」
(肩をかくん、と落とす。つまるところ、人体解剖図か関節模型のいずれかが手に入らないと、どちらの講義もできないらしい。)
■ヨキ > (練習あるのみさ、と微笑みつつも、不器用だという自己評価には意外そうに瞬いた。
小春の真面目な印象とそぐわなかったらしい。
さておき相対して椅子に腰掛け、小春の説明にふうむ、と息を零す。
授業で必要ということもあって、特に拒否感などを見せる様子もない)
「人体解剖図と、関節の模型か。
解剖図なら、図書館で大判のカラーアトラスを見かけたが……教室での授業に使うには、些か小さかろうな。
ヨキが図版を写したとて、講義に使うには難があるしな……」
(少し考えて、はたと気付く)
「……うむ、だが関節の模型なら、あるいは。
美術解剖図、というものがあってだな。
内臓の説明はないが、筋肉や骨格の動きを描く画家には不可欠なのだ。
それを見ながら、ヨキが『模型をこさえる』……というのは、いかがかな。
間に合わせではあるが、解剖図が届くまでの繋ぎにはなるやも知れん」
(どうだね、と、小首を傾げる)
■朝宮 小春 > 「……自分の思い通りに身体を動かせるかどうか、が凄く大切なんだそうです。
運動でも、こういう工作でも? ……それが、どうにも自分のイメージと身体の動きに差があるみたいで。」
(ぺろ、と舌を出して苦笑を一つ。 真面目ではあるが、冗談を解し、ユーモアにもそれなりに反応をする彼女らしく。)
「ええ、流石にそれだけのサイズだと、注文を受けてから刷るみたいで。
とりあえず、次の講義が何かしらできればごまかせるんですけど、人体で幾つかの講義を続けて実施しないと、よく分からなくなっちゃいますからね。」
(そこまで呟きながら、相手の言葉に顔を上げて。)
「……そんなものがあるんですか?
え、………い、いいんですか? 私がなんとか自分で作ろうと思っていたんですけど、お願いできるなら、その、助かります!
……関節の構造が違う方もいらっしゃるから、手で描いてみせても、なかなか伝わらないんですよ。
先生の関節を透視してもいいですか、なんて言われてしまって、それはなんとか回避したく……」
(がっくりと肩を落として、とほほ、とため息。流石にそれを了承するのは恥ずかしすぎた。)
■ヨキ > 「それはそれは……と言うと、想像に手足が追いつけずにいる?
はは。ヨキの見た目には、君は随分と美人で、可愛らしく映っているんだがなあ。
朝宮の想像の中には、どれだけ美女の君が思い浮かんでいるやら?
だがそれを知って、危うさを回避しようとするだけ、君は聡明だよ」
(軽い調子で笑う。
関節模型の話には、ようし、と息をついて)
「なあんだ、裸ならまだしも、骨を透かし見られるのは恥ずかしいかね?
実地で見た方が、よほど良い教材となろうに。
では……そうと決まれば、少々待っていてくれたまえ。
美術準備室に、本を取ってこよう」
(隣の隣、美術教員ヨキの準備室だ。
徐に立ち上がり、歩いて金工室を出てゆく。
――そう時間の経たぬうち戻ってきたヨキの手には、『美術解剖学の手引き』と題された書籍が一冊)
「さて、これさえあればあとは作るだけ、だ。必要なのは、どの辺りの部位だ?」
(作業机の上でページをぺらぺらと捲ってみせ、小春へ本を差し出す。
大判の図版に、全身の骨から関節から筋肉から腱の動きまで、精緻なペン画や鉛筆画で解説されている。
『あとは作るだけ』と豪語しつつも、机の上には材料らしい材料ひとつない)
■朝宮 小春 > 「……お、お世辞を言っても何も出ませんよっ!?」
(不意に褒められたものだから、顔が赤くなって椅子から思わず立ち上がりそうになる。
そんなことを言われたら、髪の毛をちょっとだけぺたぺたと触って座り直し。
ああ恥ずかしかった、と胸を押さえて吐息を一つ。)
「……お、お饅頭でも食べます? 持ってきてるので……。」
(何か出た。褒められたら伸びる子だった。)
「………いや、骨が見えるってことは、ちょっと出力落としたらいろいろ全部見えそうじゃないですか。
ど、どっちにしろ恥ずかしいですってば!」
(思わず相手にツッコミを入れてしまう。
相手が男の生徒でなくてよかった、と本気で胸をなでおろしたのは言うまでも無い。)
「………え、ええと。
やっぱり分かりやすいのは肩と、肘じゃないかなって思ってましたけど。
肩が球状で、肘が蝶番みたいな感じで。
………………何で作るのでしょう?」
(ページを指差しながら、とても分かりやすい二つを示して………
ここでようやく、素材が何なのか気になったのか、視線を向けることにする。)
ご案内:「教室」におこんさんが現れました。
■ヨキ > 「まさか、お世辞など。ヨキは本当のことしか言わんよ。
それに、何か出してもらいたくて言っている訳でもないでな。
言わずにおくのが勿体ない、日本人のもったいない精神という奴さ」
(異邦人丸出しの様相で、真面目くさって答える。
小春の慌てた様子に、そんな大層なことでも、とくすくす笑った……
のだが、『まんじゅう』と聞くと頭上に大きなビックリマークが飛び出たかのように目を丸くする)
「もらおう」
(食いついた。鮮やかなほどの即答だった。こくこくと頷く。完全に懐いた)
「出力。出力……はあ、なるほど。
女性は大変だな……不安の種が尽きぬらしい。
安心したまえ。異能を悪用する輩は、このヨキが風紀委員のごとくビシバシ指導してゆくでな」
(あっはっは。軽い。
それでいて、そんな気楽さで小春の示した解剖図に目を落として)
「――ふむ、肩に肘と。相分かった、ヨキに任せるがいい。
ん?……何で作るのかって?ふふ、それがヨキの腕の――もとい、『異能』の見せどころよ」
(握って開いた左手を、ぱ、と開く……)
「とくと御覧じろ」
(キャンバスに向かう画家に似て、じ、と真剣な眼差しで右手に押さえた図版を見遣る。
すると左の手のひらの上に、にょき、と小さな豆のような塊が飛び出して――
それは見る間にむくむくと大きくなって、図版に記された肘の骨と同じ形の――金色をした、金属の塊に変じてゆく)
■おこん > なんじゃ、いちゃいちゃしとるのう。 まあ、ワシも人のこと言えぬがのう。
ヨッキ、素直なのはよいが、それは普通のおなごにとっては、口説いてると思われても仕方ないぞ。
(紙の束…報告書を読みながら、会話が聞こえる教室に入る。
目は報告書に向いているものの、狐耳は二人にぴたりと向きを合わせていて。
顔を上げて、書類をちょっと持ち上げるようにして挨拶。)
なに、作るの作らぬのという話じゃから、てっきり子供かなにかかと思ったわい。
産休取るなら計画的にするんじゃぞ?
(んふふ、って目を細めていたずらっぽく二人に笑いかける。
9本の尻尾をゆらゆらさせながら、その辺の机に飛び乗るようにして座った。)
そんで何作るんじゃ。 ロボか? 関節っちゅうても今は擬似筋肉を
パルスで動かすようなやつが…おや、すごい。
(ヨッキの異能が顕現するのを観るのははじめてだ。
眼鏡を抑えて、じっと様子を見つめる。)
■朝宮 小春 > 「え、ええと、ひ、控え目に? ちょっとばかりその、恥ずかしいです。」
(照れてしまうわけで。頬をぽりぽりとかいて視線を横にそらせば。
金色の尻尾がゆらゆらと揺れていた。
目をぱちぱちと瞬かせて、微笑みを返してご挨拶。先輩二人だ。)
「口説くとかそういうこと………いろいろ他の生徒とか先生方に聞かれたら誤解されちゃいますからね?
………
なんで学校で子供作ってるんですか!? いろいろ聞かれたら誤解されちゃいますからね!?」
(一度目は苦笑交じりに柔らかく。
二度目は勢い良く激しくツッコミを入れてしまう。
取りませんよ!? と更に金色の尻尾……おこん先生にツッコミを入れて。)
「………まあ、不安の種っていうか、そういうことなんです。
悪用というか、悪気が無いままに見られてるとなると、それもそれで恥ずかしいというか。
まあ、ちょっと講義しつつも恥ずかしく思えてしまいますよね。」
(苦笑をする。悪い子ではないんだけれど、なんて間を起きつつも………
次に、目の前で膨らんでいくかのように生み出されていく金属の塊に、思わず声を失って。
…………息を呑んで、見入ってしまう。)
■ヨキ > (やって来た小さな姿に向かって、不服とばかりに言い返す)
「やあ、おこん。
……何だ、君は男女が揃えばイチャイチャしているように見えるのか?
口説くなどとは人聞きの悪い。相手によって付き合いを変える方が、よほどの悪行ぞ」
(真顔で言ってのける辺り、心底そう考えているらしい)
「それに君の方が、ヨキよりずっと下世話ではないかね、おこん?
ほれ見ろ、朝宮が困っておるではないか。ヨキは相手を選ばんが、時と場は弁えておるわい」
(ふん、と偉そうに鼻を鳴らしてみせた。
半眼でおこんを睨みつけ、にやりと笑う)
「朝宮の頼みでな。授業に模型が要るらしい。
ヨキが快く一肌脱いでやろうという訳さ……」
(手の中に現れた金属――どうやら真鍮らしい。蛍光灯の光を鈍く照り返し、ころりと手のひらの上に転がる。
現れたそれを、本の中の図版とじっと見比べる)
「…………。もう少し、こうか」
(具合を確かめながら、親指の先で模型の表面をぐっと拭う。
金属はまるで柔らかな蝋のように、指の動きに沿ってへこみ、また触りもしないのにぽこりと膨らむ。
不可思議な成形作業がしばし続いたのち――小春へまずはひとつ、骨の模型が差し出される。
表面は骨を模して細やかな凹凸が施され、つや消しのような風合いだ)
「……まずは、こんな具合でいかがかね?
この調子で、他の骨もすぐに作れる」
(受け取った真鍮の模型は金属らしく冷え切って、押しても摘んでも変形する様子はない)