2015/10/07 のログ
■真乃 真 > 「つまりそれは目立つだけの異能ということなんだね…。」
目立つだけの羽。孔雀のような。
人の目を集めるための羽。
男は小さく呟いた。
「…少しうらやましいじゃないか。」
本心からの言葉だった。目立てるのだ存在するだけで目立てるのだ。
「だって考えてもみてくれよ!僕と君が同じステージに立ったとする!
同じ動きをしたとしても目立てるのは君の方じゃないか!
翼が必要なカッコいい動きだって自由に取れるし!
僕の異能なんて使ったか使ってないかも分かりにくい地味なものだよ!!
カッコよさと綺麗さにすべてを注ぎ切った異能なんてかっこよすぎるじゃないか!!
そりゃあ君がこの異能で苦労してきたのも何となくはわかるさ!
でもそのカッコよさを放棄するのは罪だと思うぜ!
今からでも芸能系の部活に入るべきだよ!!」
一気にまくしたてるとそのまま後ろの自販機で水を買って一気に半分ほどを飲んだ。
「と、僕が言いたいのはその羽カッコいいから飛べないなんてことで謝るなってことさ!!
飛ぶだけなら蝿にだって出来るしね!」
普通にカッコいいポーズで決める!
■日下部 理沙 > その男はやはり、稲妻のようだった。
理沙がただ項垂れ、いつものように己の「不足」を嘆いている間に。
その稲妻は、その「不足」こそが「そうではない」と一喝した。
「うらやま、しい……?」
確かにこの異能は空を飛ぶ事は期待できない。
そこにだけ目を向ければ……ただの重りでしかない。
だが、「翼がある」というところにだけ目を向ければ。
そういう「飾り」があるという点にだけ目を向ければ、確かにそれは利点となる。
それがないよりは、あるほうが確実に目立つだろう。
だから、それが目的ならそれは利点なのだ。
それを聞いた理沙は、ただ、思った。
「そう、ですか」
ここもやっぱり、外と同じなんだな、と。
あるだけで、ないよりはいいだろうと。
あるなりの利点を探ればいいと。
それを、自分だけに与えられた「特別性」を生かせと。
誰もが善意で激励する。
半ば、強制するように。
そこに悪意はない。敵意はない。害意もない。
だから、理沙はそれを言われれば、出来ることは一つだけだった。
「ありがとう、ございます」
それは本心からの言葉だった。持てるものなのだ存在するだけで特別なのだ。
なら、それを生かさないことは罪であると。
仮に体躯に優れるならスポーツで生かさないことは罪であると、詰られるのと同じこと。
それは間違っていない。
真の言葉は何も間違っていない。
真は、非常にいい人間なのだと思う。
きっと、根っからの善人なのだろう。
きっと、誰もが羨む好漢なのだろう。
だからこそ、その言葉に対して理沙が反駁することはできない。
その『正義』に抗う事は出来ない。
わかっていたことで、諦めていた事だった。
■真乃 真 > 男は思った事を言った。
それだけカッコいいんだ生かすべきだろと!
この言葉で彼が少しでも前向きになったらいいなとも思う。
そして助けた自分に酔う。少年がどうありたいかなんて考えない。
「いや、僕は僕の意見を言っただけだけさ!気にすることじゃないよ!」
HAHAHAと笑いながらいやいやと手を振る。
「まあでもここには色んな人がいるからね。心無い言葉を君に浴びせる人もいるかもしれない!
でも、自分の評価なんて自分できめればいい、僕が最高にカッコいいと思うから僕は最高にカッコいい!
それでいいとおもうよ!」
僕はいつだってそうしてる。
ロビーに掛かっている時計を見てそれを指さす。
「そろそろ時間だぜ、日下部君また困ったことがあったらいつでも僕の名前を呼んでくれ!!!」
近くにいたら助けるから
そういってカッコいいポーズをとった。
ご案内:「ロビー」から真乃 真さんが去りました。
■日下部 理沙 > 「ありがとうございます、真乃先輩」
去っていく後ろ姿を見送りながら、理沙は素直に手を振った。
そこに、悪意は無く、害意も敵意もなかった。
ただ素直に、手を振った。
彼はただ意見を言っただけで、それは素直に自分を、理沙を思っての言葉だった。
そんなことは分かっている。そんな人は今までもいた。
だから、余計に彼の言葉は理沙にとっては苦ではなかった。
自分の事は自分で決めろ。
自分がカッコいいと思える自分でいろ。
自分はそうしている。
だから、君もそうしてみよう。
真はそういった。
それは、理沙に出来るかどうかは別として、素直にカッコいいと思える生き方で。
「……羨ましいじゃないか」
ただ、素直にそう思える生き様だった。
真は自分に酔う生き方をしているのかもしれない。
でも、それは自分に酔えるくらいに自分に自信を持てる生き方をしているということで。
それは、並大抵の事ではないのだ。
常にたゆまず……理想の自分を追い求めなければならないのだから。
彼は、彼の為に己に妥協しないのだろう。
それは、一人の男子として、素直に尊敬に値する生き様だった。
近くに居たら、助けるから。
彼のような正義を自分はまだ持てない。
持てないからこそ、羨むのだろう。
それこそ、自分もまた……外と同じように。
ご案内:「ロビー」から日下部 理沙さんが去りました。