2016/01/11 のログ
■蘆 迅鯨 > 「(仕方ねェ)」
いかに脚が動かないとはいえ、いつまでも教室に居座っているわけにもいかない。
生身の両腕は問題なく動かせるが、だからといって這って帰るなど問題外である。
コートのポケットから携帯端末を取り出し、保健課への連絡を試みる。
しばらくして電話が繋がると、
「あーもしもし、保健課?俺ちゃん脚動かなくなっちゃってさ。手が空いてる奴がいたら保健室かどっかにでも運んでもらえると有難いんだが」
やや早口になりつつ、電話の向こうの保健課生徒に事情を伝えはじめる。
声色から、恐らくは女子生徒だと判断できた。
「今どこだって?教室棟の……××××だよ。俺か?蘆迅鯨<ルー・シュンジン>だ。二年」
教室名、そして自身の名を告げた途端、
応答する保健課生徒の声に少なからぬ嫌悪の色が混ざったように感じられた。
「(……やっぱ、そうなるわな)」
それを聞いた迅鯨は若干顔をしかめながらも言葉を続ける。
「んじゃ、なるはやで頼んだぜ」
そう告げて電話を切った迅鯨の口からは、またひとつ大きな溜め息が漏れた。
■蘆 迅鯨 > 「…………さて」
連絡は済ませたので、後は保健課生徒の到着を待つのみだ。
その間に端末の操作を続け、自身がアカウントを保有している各種SNS群
――無論、その中にはかの『ドリームランド』も含まれる――その更新を確認しながら、時間を潰すこととする。
蘆迅鯨という少女は本来、とても寂しがりだ。
しかし自身が持つ異能の性質もあり、他人と真っ当に関わりを築くことは普通の人間よりも難しい。
そのため若干ネット依存の傾向がある迅鯨は、こうして一日に数度、多数のSNSの巡回を行っているのだった。
■蘆 迅鯨 > やがて教室の扉が開き、最初に扉を開けて一人の女子生徒、
続けて担架を抱えた二人の男子生徒が到着する。
「……すまねェな」
扉が開く音と共にそちらへ視線を動かし、彼らの姿を見るや否や、
迅鯨は眉を落とし、いかにも申し訳なさそうに呟く。
「いいえ。役目ですから。……例えあなたのような人でも、助けるのがね」
最初に扉を開け教室内へ入ってきた保健課生徒――
前髪を切り揃え眼鏡をかけた少女が、迅鯨のもとへ歩み寄り告げた。
「そうかよ」
少女の皮肉めいた言葉に対して返すように答えた後、
迅鯨は彼女らの腕にその身を委ね、担架に乗せられ搬送されてゆく――
ご案内:「教室」から蘆 迅鯨さんが去りました。