2016/05/18 のログ
ご案内:「廊下」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > ―――
■女子生徒 > 「はい!これから友達と遊びに行くところだったんです!
先輩も、お体に気を付けてくださいねっ!」
そう言ってぱたぱたと走り去る女子生徒を、一人の風紀委員が見送った。
女子生徒は先日『風紀活動に貢献した』元・不法入島者であり、
その功績と異能が認められて晴れて学園入りを果たしたのであった。
これ以上深く関わることもないだろう。と、久藤嵯督は呟く。
(……見回りを続けるとしようか)
そうして再び歩き出した。
校内を巡回しつつ、持ち前の人相の悪さを遺憾なく発揮している。
■久藤 嵯督 > 普段は外回りの仕事が多かったのだが、新学期になるとこういう仕事も回ってくる。
こう、わかりやすく迫力があるとか何とかで気を引き締められるとは同僚の談。
適材適所で結構なことだ。
道端でズボンを腰まで下げた男子生徒を睨み付けると、おずおずとズボンを引き上げた。
(……だったら最初からやるなと言うに)
■久藤 嵯督 > 『こいつは本当に風紀委員なのか』
『風紀委員から奪い取った制服を見せびらかしてるだけなんじゃないのか』
少なからずそういった声が聞こえてくる。
聞かれてないつもりなのだろうが、生憎と嵯督は耳が効く方であった。
ヒソヒソ話す生徒らにガンを飛ばして、黙らせておいた。
ご案内:「廊下」に乙訓 真織さんが現れました。
■乙訓 真織 > 「あのな~」
久藤の進行方向、廊下の曲がり角から、ぬっと。
大きな人影が現れた。
「そういうこと言ったらあかんやろ~? この人も、頑張って
ちゃ~んと風紀のお仕事してくれとる人なんやから」
母親が子供を窘めるように、しかし上から目線や厭味ったらしい色は一切ない、
聞く者が尽く脱力しかねない甘い声で。
腰を手に当て現れた身長187cmの少女は、嵯督を見てひそひそ話をしていた生徒達の方を見て、
ほんの少し眉を逆立てているようだった。
「気にせんでええんよ~、うち、ちゃんと見とったからな」
先に――指導法はどうあれ――服装に関しての指導を行っていたのを見ていたのだろう。
真織は、にっこりと微笑んで手を招き猫のような形にして挙げ、そのままにぎにぎとして
見せた。どうやら、その動きが彼女流の挨拶らしかった。
■久藤 嵯督 > ―――
■一般生徒A > 「あー、いや、えの……」
厳しく当たられるならともかくとして。
思春期真っ只中の生徒諸君にとって、その音色は凶器にも等しかった。
■一般生徒A > 「は、はぁい……」
棘を寝かせたハリネズミのようにしおれた一般生徒らは、
恥ずかしさに耐え切れずにそそくさとその場から立ち去ってしまった。
「……別に、好きに言わせておけば良かったんだがな」
悪口や影口ならば言われ慣れている。
しかし先ほど言われた言葉に、どこか突き刺さるものがあったのも事実。
『ちゃんと見ていた』―――その言葉に、少しだけ救われたような、そんな気がした。
俯き気味に歩いていた嵯督は足を止めて、大きな少女をしっかりと見上げる。
白い前髪が、わずかにこめかみを撫でた。
「……いや、そうだな。”ありがとう”、幾分か気が晴れた」
普段なら意地を張るところではあるが、恩知らずにだけはなりたくないものだ。
もしかすると二年目にして初めて、自分から折れた出来事かもしれない。
■乙訓 真織 > 「ほなな~」
大人しく帰って行く生徒達には、ため息一つ投げることなく屈託のない笑顔を浮かべる真織。
そしてまた、同じように『招き猫バイバイ』のポーズを取るのであった。
「ま、そう言われるかと思っとったけどな~?」
困ったように笑いながら、頭に手をやって嵯督の方に振り返る187cm。
嵯督の言葉を受けたその表情には、悲しさや怒りなどは浮かんでいない。
ただただ、穏やかな笑いが浮かんでいるのみである。
「病気以外なら何でも貰いたいところやからな、そのお礼も受け取っておくで。
でも、寧ろお礼を言うのはこっちや。
いつも学園の風紀を守ってくれておおきに――ありがとうな、風紀委員さん」
そう言って、大きな身体を廊下の隅に寄せたかと思えば、
目を閉じてぺこりとお辞儀をする真織。軽い会釈の形だ。
ややあってゆっくりと頭を上げ、再びにこりと笑い、語を継ぐ。
「風紀委員さんだけやなくて、公安委員さん、生活委員さん、図書委員さん……
他にも、沢山の人達が頑張ってくれとるのを、うちは知っとるよ。
だからうちは生徒会の一員として、皆の頑張りをちゃ~んと見届けなあかんと
思っとるんや」