2016/06/12 のログ
ご案内:「保健室」に蓋盛さんが現れました。
蓋盛 > がばり。
保健室の衝立の奥のベッドで、養護教諭は上体を起こした。
人が来なさそうのを見計らって、仮眠に使っていたのだ。
白衣の袖で、額に浮かんでいた汗を拭う。髪が乱れている。

「ちょっとだけ寝ようとすると、決まって嫌な夢を見る……」

デスクへ戻るでもなく、そのまま寝台のうえでぼんやりと中空に視線を彷徨わせる。
先程まで見ていたのは自身の両腕を切り落とす夢だ。
いままで何度も見た、よくある悪夢のパターンである。

蓋盛 > 数分ほどそうしてから、やおらベッドから立ち上がる。
乱れた髪を手櫛で適当に直し、シンクでぱしゃぱしゃと顔を洗って残る眠気を飛ばす。

実のところ、自分は本当に腕を切り落としてしまったのではないか、と少し疑っている。
時々、妄想と現実の境目が曖昧になるのだ。
おそらく、さっきのは夢だったのだろうが。
自分の記憶ほど、信頼の置けないものはないのだ。
気の確かさの定義は難しいが、蓋盛はすこしばかり気が触れていた。

「なんて物思いも暇な人間の特権よねぇ」

別に暇ではない。
今この瞬間にもけが人や体調不良者が戸を引いて入ってくる可能性はあるのだし。
窓から外に目をくれると、校庭にあたる場所に立派な樹が生えているのが見える。
首を吊るのには適していそうだ。

蓋盛 > ぴょろん。
頭頂部の髪の毛が一房ハネてしまっている。
指で押さえつけても直らない。ぴょろん。
そんなに長く寝ていたつもりはなかったのだけど。

「まぁいいか……」

ポットの中身がなくなっていたので、湯を沸かし始める。
それを待ちながら、最近保健室の棚に新たに置かれることになった美少女フィギュアの位置を調整する。
あんまり私物を置き過ぎるのもどうかとは思うが、どうせ私室みたいなものだからいいのだとも思う。

ご案内:「保健室」に剣山 榊さんが現れました。
ご案内:「保健室」から剣山 榊さんが去りました。
蓋盛 > お湯が湧いたので、コーヒーを淹れて砂糖を入れずに飲む。
コーヒーは一種の薬物で、憂鬱を抑制する効果がある。
デスクに座ってカップの半分ほど飲んだころには、先程まであった希死念慮は
嘘のようにすっかりどこかへと飛んでしまった。

足音が保健室に近づいてくるのが耳に入る。
そろそろ時間を無駄に使えるのも、終わりなようだ。

ご案内:「保健室」から蓋盛さんが去りました。