2016/06/23 のログ
ご案内:「屋上」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「あ~……天気悪いなオイ。」

今日も今日とて、俺はタバコをふかしながら屋上のベンチで油を売っている。
このまま教師から油売りに転職するのも、それはそれで悪くないかもな、なんて考えながらだ。
溜息と共に吐き出した紫煙は、すぐにどんよりした雲に紛れて見えなくなった。

「普通はこの空いてる時間に資料まとめたりなんだり、するもんなんだろうけど。」

俺の授業に関しては資料と呼べる資料もそれほど無い。
何たってここ数十年でようやく図鑑に載るようになった生物について、だからだ。
詳細な資料を作ろうにも、そもそも未知だらけの存在がてんこ盛りである。
俺は教えられるのは、どれだけ危険か、と
もし遭遇したらどうやり過ごすのが最適か、くらいだ。

暁 名無 > 「雨降ってきたらどうすっかなあ……」

火を着けて、そのままほとんどぼーっとしてるだけなので煙草の残りもまだ大分ある。
この状態で一雨来れば、まあすぐに火を消して退散しなければならないだろう。
それはそれで、何か勿体無い。煙草だってタダじゃないからな。

煙草くらい職員室でふかせば良いだろう、と俺自身思わないでもないが、
職員室、という場所にまだまだ不慣れな所為かどうにも居心地が悪い。
雰囲気が悪いという訳では無く、むしろ雰囲気は良いと思うんだけどな。

「それと気が休まるかどうかってのは別だよなぁ~」

結局のところ、職員室も職場でしかないわけだ。

暁 名無 > 「まあ、ここで愚痴ってもしゃあねえ。 早いとこ慣れねえと、だ。」

何年続けられるか分からないが、少なくとも一年はいるだろう。
一年間授業が終わる度に屋上に逃げて来ていてはダメだ。それは分かる。
分かるけどさ。

「なん……つーか、生徒気分が抜けねえっつーか。
 先生たちが当時のままなのが悪ぃんだよな。俺だけ歳食ったみてえになってる。」

まあ実際その通りなんだけどよ。
今にも泣き出しそうな空ってのは、こんな天気を言うのかね。
俺は雲が重く張りつめた空を眺めながら、そんな事をぼんやりと考える。

暁 名無 > あまりにものんびりとしていたので、煙草の灰が服に落ちている事にも気づかなかった。
我に返れば一張羅のカッターシャツがところどころ白く汚れている。

「あ~あ、やっちまったな。」

俺は小さく舌打ちをして服の上の灰を払い落とした。
まあ火種が落ちなかっただけ救いだと思う事にしよう。

暁 名無 > 「空き時間に何か出来ることを探すか。」

何度目か分からないほど紫煙が空に溶けるのを見送った後、俺は呟く。
こうして意味も無くだらだらしているのも、まあ嫌いなわけじゃあないんだけど。
こんな事ばっかりいていたら、あっという間に歳食っちまいそうな気がしてならない。

「しっかし、授業と授業の隙間時間で出来ることって何かあるか……?」

先輩職員たちがスマホゲーに興じているのを見掛けたりなどもしたが、
どうもあの手のゲームは性に合わない気がして踏み出せねえ。
そもそもゲームというものにあんまり触れて来ないで背一丁して来てしまったから、馴染めるかどうか不安ってのもある。

暁 名無 > 「……お。」

ついに堪えきれなくなったのか、空から大粒の雨が降ってくる。
これは本降りになるな、と早々にベンチから腰を上げて咥えていた煙草を見れば、
幸いにも何とか一本は無駄にせずに済んだようだった。
吸殻を簡単な魔法で燃やし尽くし、ぱんぱん、と手を叩く。

「それじゃ、とっとと退散しますかね~ぇっと。」

まだ午後の授業が残ってる。ここで濡れていくわけにもいかない。
昔、変な鍛え方をして、体に脂肪が付きにくくなってしまった所為で一度風邪を引けばなかなか治らない。

ぱたぱたと屋上の地面に斑模様が出来始めるとともに、俺は急いで屋上を後にしたのだった。

ご案内:「屋上」から暁 名無さんが去りました。