2016/10/11 のログ
ヨキ > 「(……もし)」

端末を操作する手を止め、机に頬杖を突く。

「(《大変容》以前のようだと言われるほど、異能者や魔術師や、異邦人との垣根が目立たなくなったなら……)」

先ほどの映画とは何ら関係のない、事務的なメールの文中でカーソルが止まっている。

「(そのときこそは、ヨキも“人間らしく”身を固めてもいいのやも知れんな)」

無論のこと、そんな相手も機会も、確かなものは何も持っていない。

ヨキ > 「(だが……そうしたら、)」

そしたら?

「……………………、」

眉を顰め、唇を尖らせた気難しい顔で両手を後頭部へやり、チェアに背を預ける。
こんなにも大勢の人間が集う明るい室内というのに、突然独りで放り出されたような心持がした。

止そう。

「――何でもない」

まるで言い訳でもするみたいに、小声で一言。
ぷい、と仕事へ戻ってゆく。

“家族”に対する、無根拠な憧れが催したものは――罪悪感だった。

ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。