2017/01/13 のログ
ご案内:「ロビー」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 「…ふぅ」
放課後。蘭はロビーにやってくると、まずは自販機に向かった。
購入したのは、チョコレートフレーバーのホットミルクティー。
適当なテーブルの傍の椅子に腰掛け、テーブルの上に勉強道具を広げた。
教科は英語のようだ。
■美澄 蘭 > 異能の存在が確定した、異邦人由来の特殊な能力の持ち主…ということが分かっても、蘭の人生が劇的に変わる気配は今のところない。
異能の制御訓練などは少しずつ始めているが、既に受けている講義よりも優先する、ということは特にしていないのだ。
…流石に、ピアノの練習時間は減ったが。
英語の講義で使っているテキストとテキストの本文を書き写すノートを広げ、シャープペンを右手に取った。
本文を書き写しながら、分からない語句があればその都度左手で電子辞書のキーを叩く。
■美澄 蘭 > 《大変容》に伴ってこの世界に降って湧いた諸問題。あるいは恩恵。
蘭の履修している英語は、それらを取り扱う英語圏のコラムを読解していくというものだ。
講義中に当てられて訳を聞かれるのが出席点、答えに応じて平常点が前後するというスタイル。
おまけに学期の節目にはペーパーテストもあるので、予習復習は欠かせないのだ。
今回読んでいる文章は、「身近な者が異能者として覚醒した時に、どう向き合うか」という題だった。
なんというか、タイムリーである。
■美澄 蘭 > (…やっぱり、色んな考え方があるのよね…)
普通にコラムになっているだけあって、差別主義的な主張をする当事者は出てこない。
寧ろ、その極端さを排した中に浮かび上がる断絶、分断こそが、切実だった。
「家族として大事に思っているのは変わらないが、近くにはいられない」とか、「家族を守るために、長年暮らした家から離れた」とか。
蘭の場合、母親が既に異能者であるし、そもそも母の母が異邦人で、異能者で、魔術師である。
家族の結束は今更疑うべくもないし、祖父や父の文化資本から得た社会的な居場所すらある。
それでも、家の外はどうだったか。
蘭は、そういった「眼差し」を感じずに成長することは出来なかった。
そして、今に至っている。
■美澄 蘭 > 「まだ何もない」「分からない」ということは、時にその実態が「ある」こと以上に不安をかき立てるのだということを、蘭は思春期以降思い知らされていた。
その状態から「対話」に持っていくのが難しいことも、そこまでの分量はないがコラムの中で触れられている。
(………もし、私が今のままここから「逃げ」帰ったら………)
「力を使ってでも」「脅威の排除」を望む、その欲求を叶えることを容易にする異能。
それが、周りの「普通の人々」にどんな印象を与えるか…周りをどう「動かしてしまう」のか。ありありと想像出来た。
その中に身をおく、自分の「孤独」も。
■美澄 蘭 > (…支配なんて、されるのもするのも嫌)
そんなことを考えながら、怜悧な瞳でノートとテキストを見つめる。シャープペンを動かす。
時折、電子辞書のキーを叩く。まれに、文法の重要事項が含まれていると思しき箇所にチェックのための線を引く。
■美澄 蘭 > …と、しばらくそうしていると、携帯端末のアラームが鳴った。
「…ああ、そろそろ時間ね」
異能の制御訓練で、今日は研究所にも協力してもらうことになっている。
この時間に学園地区を出れば、研究苦には約束の時間の少し前くらいにつくだろう。
蘭は、勉強道具を片付けてロビーを後にした。
ご案内:「ロビー」から美澄 蘭さんが去りました。