2017/02/04 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > 昼休み。
出払って人気の少ない職員室の自席で、ヨキがすやすやと静かな寝息を立てている。
腕組みをして背凭れに身を預けた格好は、何か考え事に耽っているように見えなくもない。
机上には、図書館の蔵書である魔術書が三冊ほど積まれている。
だが眠る前まで読んでいたらしい、手前側に置かれた一冊は魔術学とは何ら関係のない教本だ。
ソフトカバーの表紙には、「普通二輪免許」と書かれている。
傍目には、バイクの勉強をしているのか、魔術学の勉強をしているのか、いまいち判然としない。
■ヨキ > と、尻の方からブイーンと微かな振動音がして、んあ、と目を開ける。
上着のポケットに入っていた電話を取り出して、目覚まし時計を止めた。
目を擦って大きく伸びをすると、たちまち目が覚める。
年末年始を経て、ヨキは相変わらずだった。
自ら教えるカリキュラムに精を出し、自作を手掛けるのにも余念がなく、
新しく始めたゲームもエンドコンテンツに突入して依然好調であるし、
深夜には未だ「正義の味方」をやりながら、空いた時間にはこうして新しい何事かに手を付けていた。
一息ついて、午後の講義の支度を始める。
魔術書に重ねられたバイクの教本は、小口のあちこちから付箋がはみ出している。
いわゆる「ひっかけ問題」に悉く引っ掛かりやすいのも、相変わらずだ。
■ヨキ > ヨキは相変わらずだった。
いつの夜だったか、生温いベッドの中で、先生は本当に人間になったの、と尋ねられた。
一瞬の訝しさを浮かべた二級学生の少女は、つるりとしてへそのない、ヨキの腹を見ていた。
生まれ変わっても、人間を名乗るようになった後にも、ヨキは女の胎から産まれたことだけがなかった。
人間だと思うんだがな、とは、その場で返したヨキの言である。
一日二日は元より、ほんの一分や二分鏡を眺めていただけでは、果たして自分が本当に加齢するようになったかも怪しい。
ともかくヨキは、そうして人間の、少なくとも人間に似た生を謳歌していた。