2017/04/15 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 「ふう」

つい先ほどまで座学の講義を行っていた教室のひとつ。
時刻は夕方で、学生は課外活動や帰路へ分かれていった後だ。

教壇の椅子に腰掛けたヨキが、講義に使ったレジュメや筆記具を片付け、水分を摂ってひと息ついていた。
色白の眉間に、薄らと皺が寄っているのは――

「……全く。舐めた態度でヨキの単位が貰えると思ったら大間違いよ」

という訳である。
新年度早々、美術の座学という一見甘っちょろそうなシラバスに釣られた新入生を叱ったところなのだった。

常世島には、いろいろな学生がやって来る。
やる気のある者も、ない者も。

ヨキ > “やる気のなさ”にも理由は様々だ。
望まない異能や魔力の発現に苦しむ学生相手には、出来うる限り理解しようと努めた。
講義が退屈や冗長さにまみれることのないよう、話題は細心の注意を払って選んできたし、別段話術が下手でもない。
だがそこまでして尚『単純に』意欲のない、周囲へ害意を以て倦怠を撒き散らすような輩には、ヨキは間違いなく鬼になった。

今回の学生は後者だった。
無論のこと、叱る方も、叱られる方も楽しい訳がない。

気難しい顔で黙する。

「楽しいことを考えよう……」

エンドコンテンツを絶賛周回中の、MMOの春季限定コスチュームのこととか。

ご案内:「教室」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 「…何か久しぶりに学校来た気がするー…」

人通りもまばらな茜色に染まった廊下を歩く月香。
バイト疲れでげっそりしていた昨日とうって変わって顔色は良かった。

新学期。

三学期途中に転入してきた月香は、本格的に常世学園で勉強する事になった。
殆ど魔術分野の授業ばかり取ってきたが、
余裕も出来たのでそれ以外の授業を受けてみようと決めたのだ。

(…なんか普通の学校にありそうな授業受けてみたいなー。

…美術とか)

そう思い立ったが吉日。
ちょっと教室だけでも覗いてみようと場所を聞いた月香は、扉を薄く開いた。

(…誰だろ、先生?何してるんかな)

教壇の椅子に座る人陰が見え、
盗み見た姿勢のままでじっと眺めてしまう。
もし相手が見れば、怪訝に思ってしまうだろう。

ヨキ > 扉を開く音に、伏せていた瞼を起こす。
出入口へ目をやり、隙間から覗く人影へ向かって目を凝らした。

「……うん?」

ぱちぱちと瞬く。
それが学生の姿と知れるや、席を立って扉へ歩み寄る。

遠慮なく扉を開け、相手と対面する。
異世界風のローブを着込んだ、長身の教師が月香を見下ろして笑った。

「こんにちは。夜間生の授業なら下の階だぞ。
 それともヨキの講義に遅刻してきたのかな」

先ほどまでの気難しげな表情とは打って変わって、ひどく朗らかだ。

ご案内:「教室」に宵町彼岸さんが現れました。
和元月香 > 扉を開いた教師と対面し、月香はまず戦慄した。

(でっ、でかい!)

月香は小柄である。
余裕で150cm前半しか無い身長の小娘に、相手は壁のように聳え立って見えた。

(…?何か違和感…。気のせいか)

その教師の容姿に、ふっと掠めた違和感に首をかしげる。
だが、思ったよりも優しげな相手にあはは、と照れたように笑ってみせた。

「えーっと、そうじゃないんです。
一応新入生の身で、美術の授業に興味がありましてですね。

教室だけでも見たいなと思いました!」

思い立ったが即実行したと分かるような無邪気な笑顔だった。

ヨキ > 言うまでもなくヨキはデカい。
その笑顔は、面と向かった相手を怯えさせないための人当たりでもあった。

「おや、美術の授業に興味が?
 ははは、それは有難いな。いやはや、君はお目が高いぞ。

 ――この常世学園で、金工を教えているヨキである。
 少数で静かにやっているが、新顔はいつでも歓迎だ」

少数とはすなわちニッチの意である。
にんまりと笑って、澄まし顔を作ってみせた。

「普段は美術室の方で、金属のカタマリと格闘しているんだがな。
 今日はこの教室で、工芸について教えていたところだよ。

 この教室はあちこちの授業で使うから、いつも美術らしい訳ではないが……
 何かね、絵を描いてみたいとか、彫刻をやってみたいとか、何かやってみたいと?」