2017/08/02 のログ
ご案内:「教室」に筑波 察さんが現れました。
筑波 察 > 「えーっと、素子を入れ替えたら3と6をつないで…
ここで通電テストをして、うんうん、良い感じ。
後はゲインの調節だねぇ。ここからはPCがなきゃダメか」

(教室の中でも工作室と呼ばれる部屋に、青年が一人。
とうに下校時刻は過ぎ、大半の生徒や職員が帰路についたなか、
広い教室で煌々と灯りをつけて作業をしていた。

新しく自分に視界をもたらしてくれるゴーグル。
先日戦闘訓練をして、その課題がいろいろと浮き彫りになった。
その課題を解決すべく、許可をもらって作業をしているわけだが、
お昼過ぎからかれこれ10時間弱連続で作業している。

ゴーグルを外している間はスマートフォンのカメラを目として使っているが、
単眼で得る視界というのはどうも距離感がつかめず苦労する。
四苦八苦しながらも、やっと一段落ついたのか、
すっかりぬるくなってしまって水滴だらけの缶コーヒーを取り出した)

「これからは定期的に調節をしないとだめだね。
また仕事が増えるなぁ。勉強はできてもこういう実技はちょっと苦手かも」>

筑波 察 > 「さてっと、ここからはパソコンで作業ですか。
って言っても実際にかけてみないとわからない部分が大きいからなぁ。
処理の割り振りだってまだ構想だし」

(鞄から自分のPCを取り出すと電源ボタンを押して起動するのを待つ。
ほどなくしてパスワードを要求されると慣れた手つきでキーボードを叩き、
完全に起動させる。そこまで来たところで、はぁ、とため息を吐いた。

実際問題、このゴーグルと自分自身の能力のバランスがまだまだわからない。
どの程度の処理で視界が得られるのか、
どの程度の処理を自分がすればいいのか、
どの程度の処理に自分の頭が耐えられるのか。

わからないことは山積している。
幼いころは周囲の人間が手はずを整えてくれた。
でも今は自分でやらなければならないし、
それをやれるだけの技術だって今の自分なら持ち合わせているはずだ。

少しずつ、自分の中にプライドのようなものが出来上がっているのを、
ひしひしと感じていた。
積み上げてきたという自覚があることが腹立たしくも思う>

筑波 察 > 「なんか、自分のことばっかりだなぁ…
僕なんかはまだまだ運がいい方なのに」

(ふと、自分が悩んでいるこの状況がおかしく思えてきて、笑ってしまう。
ここ数日、いや、ここ数週間、
僕が悩むことといえば自分のことばかりのように思う。
誰よりも素晴らしい開けた視界を得ようとしているのに、
その視界で見ているのはいつも自分のことばかりだ。

自分の力の本質すら見抜けていない人が周りには、
少なくとも僕の周りにはうんざりするくらいいるのに。
でも彼らのことを僕が案じたところで、どうにかなるわけじゃない。
余計な干渉はしない。慰めるなんてなおさら。
僕は無責任になってはいけない。
複雑な気持ちを抱きながら、PCとスマホをケーブルでつなぎ、
作業を続ける>

筑波 察 > 「……あほくさ。」

(らしくない。
普段なら絶対にこんなこと考えないのに。

他人は他人。自分は自分。
僕は僕が興味を抱いた人たちにとって特別であればいい。
それ以上の行動原理は、今はいらない。
それが全てだ。

――じゃあ僕にとっての特別はだれ?
 そんなものはいらない。

能力が拡張されて気でも触れたか?
そんなことを思いつつ、キーボードを叩く手は止めない。
時折ゴーグルに光を当てたりして、様子を見ながら調節を続けていく>

筑波 察 > 「なんでかなぁ。
年を取ると涙もろくなるっていうけど、そういう類なのかな。」

(だとしたら年は取りたくないものだ。
心の底からそう思う。我儘だと思う)

「あーだめだダメだ。
ぜーんぜん集中できない。
こりゃ疲れてるねぇ。だいぶキてるねぇ」

(んー!っと唸りながら背伸びをする。
首や背中をひねるとゴキゴキと鈍い音が教室に響く。
肩も凝っているような気がする。
根詰めすぎると身体を壊すなぁ。
そう思いつつも、再び作業に戻るのだ>

筑波 察 > 「んーん……」

(気づけばPCの前に突っ伏すように眠ってしまっていた。
時折寝返りを打ったり、寝言にもなっていない声を出したりするが、
目を覚ます様子はない。

誰もいない教室は本当に静かで、寝るにはちょうどいい。
そう、寝心地が割るという決定的な部分を除けば。
そのまま朝まで眠りこけてしまうが、
普段誰も使っていない教室。誰に咎められるということもなかった。
そして朝目が覚めると、いけないいけないとまた作業に入る。
結局家に帰ったのはその日の夕方だった>

ご案内:「教室」から筑波 察さんが去りました。