2018/11/06 のログ
ご案内:「屋上」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「いい気温……雪の匂いもする……」

11月上旬、夜、校舎の屋上。
時折吹き付ける風がまるで刺さるかのようなトゲトゲしさを持ち始める季節。
昼間はそれほど感じない寒さが、夜になると姿を現す季節。
海上の島である常世学園は、季節風の影響を大きく受ける。

道行く人は夜になると上着が欲しくてポケットに手を突っ込むが、
屋上に浮かぶ影の主はそんな様子はなかった。
今時期の故郷はもうすっかり冬だった。
皆がどれだけ寒いと言っても、この島の冬は暖かい。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「Täällä pohjantähden alla on nyt kotomaamme
 Mutta tähden tuolla puolen toisen kodon saamme
 Täällä on kuin kukkasella aina lyhyt meillä
 Siellä ilo loppumaton niin kuin enkeleillä……」

少しの間煌々と光る街を眺めていた。
甲高い風切り音を纏って吹き抜けた風、
その中に再度雪の匂い、正確には近々雪が降るという予兆のような、
そんな香りを感じ、歌を口ずさんだ。
幼いころ、軍隊から許可をもらって帰った家。
そこで祖母が歌ってくれた歌だった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あと1、2週間くらいですか」

ひとしきり歌が終わると、一度大きく深呼吸した。
鼻をくすぐる匂いの中には、やはり間違いなく雪の香りがあった。
祖母が教えてくれた歌は歌詞こそ悲しいものだったが、
不思議と勇気づけられると感じた。
自分の世代となってはもう直接関係のない、昔の話。
軍隊にいた過去だって、昔の名残で、古い伝統のようなものだった。

それでもこの歌を聴くと、この歌を歌うと、不思議と悲しさと興奮を覚える。
血の中に記憶がある。まさにそんな感覚なのだった。
ポケットから端末を出して時刻を確認する。
もうじき日付も変わる。風紀委員に見つかって注意されるのも面倒だ。
時期に来る季節を心待ちにしながら、屋上を後にした。

ご案内:「屋上」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。