2015/06/08 のログ
湖城惣一 > 「疲れて眠っているようだったのでな。
起こすのも憚られたし、気安く女子に触れるのも問題であろう」
 さも当然のように語るが、女子の背に服をかけ、じっとそれを見つめていた不審者となれば完全に事案である。
犯罪かはともかくとして、おそらく善意の第三者が居ればただでは済むまい。
「せめてもの慰みにと疲れがとれるようにと祝詞を捧げ、安らげる拍を打ったまで」
 真正面から見つめてそう言った。馬鹿正直に。

苗羽 寧々 > (さしもの寧々も全部は処理できない。これを処理するには専門の業者が必要だし、もしそれを呼んだなら、2時間特番を組めるだけの撮れ高は保障されるに違いない)
(そう思って手近なところからいったのである。彼のパーソナリティにはなるべく触れずに現状をつまびらかにしようと試みてのQであった)
(そうしてみればどうだ。紳士かこいつ。視線がまっすぐである。不審者がこのような目をするだろうか。本物のサイコならするだろう。寧々は警戒を怠らなかった)
(言われてみれば肩に何やら重さがある。確認すれば陣羽織であり、そういえばなんかいい感じのリズムが聞こえてよく眠れたような気がするし、机で寝ていた割には体が軽い。言っていることは正しいような気がする)
(一応ほら、珍奇な噂のあれそれのなかに痴漢めいたなんやかやはなかったと思うし。ひとまず信じてあげてもいいのではないか。こわいけど)
(そう思った寧々はとりあえず陣羽織をお返しすることにした)
あ、ありがとうございました……?
(やや疑問形なのは致し方のないところ。それらしく畳んで恭しく差し出してみる。腰は引けている)

湖城惣一 > 「好きでやったことだ。暇を持て余していたんでな」
 そう言いながら受け取った不審者は、陣羽織を受け取ると僅かにたじろいだ。
 ほらあれだ、女子の体温とかそういうたぐいのあれそれである。
たじろぐならばやらなければいいだろうが、やらずにはいられなかったのがこの男だった。
「恩に着せようというわけではない。……次は保健室のベッドでも借りるといい。わざわざ無碍にしようという者も居ないだろう」
 なるべくそんなあれそれを感じぬように抱えると、彼は軽く息を吐く。
「苗羽……寧々だったか。お前の姿はたまに外で見かけるのでな。疲れているのだろう?」
 過酷なアルバイトの一部を目撃していたらしい。となれば、多少は慮るのが人情という奴だ。
その結果がこれだとすれば、大層アレに違いないが。

苗羽 寧々 > (なんかたじろいでいる。その意味はよく分からぬ。寧々は乙女であるので自らの体温が健常な男子に与える影響は認識の外である)
(それはいいのだ。あまりよくはないが置いておこう。問題はその先である。口には出さない。出さないが寧々はこう思った)
(曰く、「えっ名前知ってる怖い」)
(こちらは相手を知っているのだ。同級でもあるし向こうが自分を知っていてもさしておかしいこともないのだが、このシチュエーションでご存じとなると若干意味合いが変わってくる)
(なんかストーカーっぽいというそれである。そこまでいかずともなんか変態っぽさを感じた。乙女はそういうところにデリケートである。こうなるとたまに外で見かけるというのも控えめな表現に聞こえたりこなかったり)
じ、実はこれからもバイトで……。
(さっき抱いた「こいつ紳士だ」とかいう印象はどこへやら。苦みばしった愛想笑いを浮かべつつ、そーっと学生鞄を回収したし、教室の出口を背にした。防衛本能である)

湖城惣一 > 「バイトだったか。……ふむ。それはむしろ、起こさなくてすまなかったな」
 彼女の態度には覚えがある。警戒だ。
そこに感慨が湧くことはないし、特に態度を変えるわけでもない。
 仕方もなし。こちらも竹刀袋を担いでから、相手に警戒を与えぬよう、逆の方向へと出て行くことにしよう。
 誤解が生まれるだとか、そういうことを気にする男ではなかった。
 いつもの日常に戻るだけである。
「む……」
 立ち上がると、やおら腹が鳴った。そろそろ何かを補給しなければ多分また倒れる。
この時間、カフェは開いてるだろうかとぼんやり考えながら、
「ではな」
 などと挨拶を。

苗羽 寧々 > い、いえ……。
(そういうアレにしては潔い。さらに傷ついた様子もない。武士か。そしてお腹の音が聞こえた。食わねど高楊枝か。)
(何やら傷つけた感もなきにしもだし飴玉のひとつもあげようかと思ったが、そもそも寧々はお菓子の類を持ち合わせていなかった。年頃の女子高生とは思えない。何もかも貧乏が悪い)
(無い袖は振れぬゆえに見送ることにする。思えばなんだか外が暗い。時計に視線を移せばアルバイトの時間に遅刻がギリである)
(寧々は初めて自分の爆睡ぶりを具体的に認識し、目の前の不審者の疑惑がどうとかそういうことはその脳裏から吹き飛んだ)
(金である。不審者、小なり、金である。武士、小なり、金でもある)
(このままではおぜぜがいただけない。くいっぱぐれる。もう日の丸弁当の残った白米をお茶漬けにして食べるのは嫌だ。たんぱく質とビタミンの摂れる食事がしたい)
あ、ありがとうございました!
(銭がピンチでヤバくて相手が不審者とはいえ、お世話になった以上あらためてお礼はいっておくのが人間としてのなんかそのアレだろう。焦りがある)
(ぺこりと一礼するが早いか、湖城が出ようとするその反対の出口から、脱兎の感で駆けていった)

ご案内:「教室」から苗羽 寧々さんが去りました。
湖城惣一 > 「…………」
 脱兎のごとく駆けていく彼女。気配がころころと変わるその様は何やら小気味良いものを感じていた。
「なるほど」
 目を伏せ改めて先ほどまでの状況を咀嚼し、
「いずこかにおわす化身であったのかもしれんな」
 などと、自分でも本気で考えていないようなことを呟いて。
 いよいよ過激に腹を鳴らす胃に活を入れながら歩き出した。
この男、自覚してから倒れ伏すまでが早過ぎる。
急げ、湖城惣一。お前が倒れるまであと二十分。

ご案内:「教室」から湖城惣一さんが去りました。