2015/07/14 のログ
三枝あかり > 「あはは……そうかもね。きっとそうなんだよ」
虚空に視界を戻しながら、彼女は言う。
「ハデスとか、ミラとか、そういう怖い人の恨みを買っちゃったんだろうな…知らないうちに」

「へえ、意外。物怖じしない、って喋り方に感じたのに」
「まだまだビアトリクス君のことを知らないからだね、きっと」

視線を画用紙に向けると、すぐに目が離せなくなる。
「……可愛い…」
猫の絵が描き出され、それから視線を外せない。
「これ、ビアトリクス君の異能なの?」
「凄いけど……地味だね」
耳にかかる髪をかきあげて笑う。
「私たち、地味異能仲間だ」

日恵野ビアトリクス > 「ならオルフェウスを探さないとな」
真似るように空に視線を。何も見えやしない。

「きみは“オーラ”に欠けるからね。
 そういうのとは結構普通に喋れるんだよ。
 この学園は只者じゃないのが多すぎて肩身が狭い……」
平然と非礼に値しそうなことを言う。

「ああ。《踊るひとがた》。今紙面に踊ったのは猫だが。
 筆が無くても絵が描ける――見ての通りのイラストレーション能力だ。
 他にも隠し芸はなくもないが……まあ、地味だね。
 レモンシードとやらは詳しくないが、どうせ同じDランクだろう」
口元に手をあてがい、くつくつと笑う。
「気に入ったならあげようか。
 地味異能仲間にプレゼントだ」
猫の絵の画用紙を、あかりへ向けて差し出す。

三枝あかり > 「琴座なんて、見えないよ」
オルフェウスは死後、星座になった。
その星は、きっと今は見えない。

「オ、オーラ……?」
「オーラに欠けるってなんだろう…どうやればオーラが出せるんだろう…」
「は、初めて言われた! 結構ショック!」
笑いながら顔を左右に振った。

「へえ……それじゃ筆がなくて困っている時に便利だね?」
そんな場面があれば、だけれど。
「Dランクより下は、役に立たない上に自滅するEランクしかないからね…」
「なんかさ、私たち仲良くできるって思わない?」
猫の絵を受け取ると、嬉しそうに笑った。
「あ……ありがとう、ビアトリクス君!」
「大事にするね、額に飾るね! ちょうど引っ越したばかりで部屋に何もないし!」
犬が尻尾を振るイメージ映像が見えるかも知れない。

日恵野ビアトリクス > 「ぼくのほうが教えてほしいぐらいだよ、オーラ出す方法」
卑屈さの混じる、しゃがれた声の笑い。
「仲良く、か……まあ、そうかもしれないな」
学園生活にも慣れ、知り合いならそれなりにいる。
しかし、『仲良く』とか『友達』とか……
そういう言葉を意識して付き合うのは、少し苦手だ。

『額に飾る』とまで言われると、笑みがひきつったものに変わる。
「えっ、いや……額はちょっと」
手を『やめて!』のポーズにする。
ちょっとだけ纏っていたかもしれない美形オーラもかき消えた。
「ありがたいけど勘弁してくれ……
 額縁に入れたいっていうなら、もっとちゃんとした絵を描くからさ」
所詮さっきのは手慰みに描いた落書きにすぎない。
それを飾られるのはひどく恥ずかしいことだった。

三枝あかり > 「オーラが出せたら得するのかなぁ? オーラが出せなかったら損するのかなぁ?」
星座の本を鞄の中に仕舞う。
「歯切れが悪いね、友達は間に合ってるって感じ?」
「ビアトリクス君、綺麗だもんね。髪とか、眼とか」
「私が男だったら放っておかないね!」
と、冗談を言って。

「えー、わかったよー」
不満げに口を尖らせる。
「それじゃ大事にしまっておくね……」
空はすっかり夜の色、満天の星空が広がっている。
「それじゃ、そろそろ帰るよ」
「またどこかで会ったら話そうね、ビアトリクス君」
笑顔で手を振って屋上から去っていった。

ご案内:「屋上」から三枝あかりさんが去りました。
日恵野ビアトリクス > 「間に合っている、ってわけじゃないけどね……」
苦笑を浮かべるほかない。

「ああ、じゃあまたね、あかりさん」
手を振って、去る背を見送る。
友達かどうかはわからないが、また話してやってもいいか、ぐらいには思う。

たまには気取った振る舞いもいいか、と思ったが
わりと簡単に地金が出てしまった。そんなものだ。
自分の前髪を撫でる。
褪せた安っぽい色――それが自己評価である。

気がついたら空は黒々としている。
スケッチをしていくには少し暗すぎるかもしれない。

「まあ、たまには星々を描いてみるのも悪くはないか」

星座の名前は言えないけれど。

ご案内:「屋上」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。
ご案内:「屋上」に鬼道椿さんが現れました。
鬼道椿 > ベンチに座り片手にイチゴオレ、片手に携帯電話を持ち気だるげにため息をつく
イチゴオレを飲みながら携帯電話に目を落とした

赤いメールがつらつらと受信欄に並ぶ
全て怪異の討伐以来のメールだった
この島、特に落第街の出現件数が異常だ、やはり『門』が関係しているのか
それともあの掃き溜めに集まる狂人奇人の情念が呼び寄せているのか…

ほぼ毎日落第街に出向き被害が出る前に妖魔たちを祓っている
討伐『依頼』なので報奨金も当然支払われるが
本土でもこれだけの件数をこなしたことがなかったため
口座に振り込まれている金額に思わず声を上げて驚いてしまったものだ

「それにしても額が多い…業魔を討伐したのは大きいが…なぁ」

先日討伐した『透過』の力を持つ業魔は本土でも捉えることが出来ずに数年前から問題になっていた
それを倒したのだから大金星だ

「ふぅ…」

鬼道椿 > 業魔を討伐した知らせは本土にも届き実家から電話がかかってきた
それよりも問題はその知らせを聞いて椿の苦手な人物がこちらに来ると言うものだった

「・・・・・・・・」

甘いイチゴオレを飲みながら苦虫を噛み潰したような顔をする
出来れば会いたくない、会えば妖魔に対する殺意や価値観が揺らぐからだ

その男の名はタラバ、業魔タラバ
椿の背に背負っている妖刀を作り、鬼道家の始祖の代から存在する業魔
どの時代でも政治に深く食い込み人の法を使い身を守ってきた狡猾な妖魔だ
世界の変質、異界との邂逅の際にはいち早く手を回し
自分の地盤を盤石の者としてどの退魔士も手を出せないように法律の中に自分の存在を組み込んだ
業魔タラバを斬れば違法行為とみなされて捕まる、最悪家は取り潰しだ…

「あのカニ爺め…」

鬼道家との因縁は長く深い、時代の節目節目で追いつめ取り逃がしを繰り返し
例の事件で完全に手出しをできなくなった
それから幾十年、ヤツの討伐はもはや諦め鬼道家は利用することに決めたのだ

業魔を倒し、タラバの邪魔をする同族を排除し
その見返りに退魔のための妖刀の作成を依頼している

「・・・・・・・・・・・・」

実際、椿も今タラバに一本の妖刀を依頼してある
それを持ってそのタラバがわざわざこちらに出向くと言うのだ

「郵便でいいじゃないか、郵便で」

鬼道椿 > 「速達で送ってくればいいのだ、妖刀を!」

べこっ、とイチゴオレのパックを潰す
とは言え新しい妖刀には興味がある、あの業魔はいったいどういった形で剣を仕上げてくるのだろうか
剣に口を持たせるのがタラバの作風だ、それと本土で倒した『炎』の業魔を素材にどう言った形にするのやら

他の妖刀に心映りしているのを察したのか背に背負った妖刀がカタカタ震えた
それを見て椿はおかしそうに笑う

「安心しろ、お前を捨てたりはしないさ」

そう言って柄を撫でる
満たされぬ渇きに苛まれるこの妖刀にとって今の椿は常に『美味しいご飯』を与えてくれる使い手なのだ
手放されては困るのだろう

黒電話のベルの音が鳴った

携帯電話を見ると

『今からフェリーに乗りますww椿たん楽しみにしててねvvvv』

とチャラい文と自撮りした写メが送られてきて深いため息をつく
会いたくない…他の事を考えよう、他の事を…


そう言えば…

「あれから能見先輩とは話をしていないな…」

無意識に唇を触れる
あの試験会場以降学校ですれ違う事はあっても話す事はなかった
彼女としては私が東郷の味方にならないように押さえておけばそれでいいのだろう
しかし…

「放置と言うのもなんとも気分が悪い…急にあんなことをしておいて…」

むぅ、と赤くなる。
別にそっちのケは無いがああも美人の先輩にああされると少しドギマギする
なんなんだあの人は、そう言う趣味なのか…
東郷は能見には手を出していなかったようだが
そう言う趣味だったからか!

「身の危険を感じるな…、か弱い乙女のピンチだ」

鬼道椿 > 思えば東郷も能見も強引過ぎるのだ
私はまだ16歳だ、花も恥じらう年頃なのだ
それを二人とも同意も得ずに強引にあれやこれや…!
それでいて音信不通になってこっちに探させるんだ、釣りか?釣りのつもりか?
冗談じゃない
私はそんな安い女じゃないのだそれを…それを…

「二人ともズルいんだよ、ほんと…」

昔は二人組で戦っていたようだが性格被ってるんじゃないのか?
気が合うと言うか場を使って誘導したり仕切り直したりする戦い方といい…!

「なぜ能見先輩は風紀委員に入ったのだろうか…」

フムン、と唸る

鬼道椿 > ロストサイン、公安委員会、風紀委員、落第街、ゲート、能見先輩

…東郷月新

「はぁ…」

あの白髪の剣鬼の顔を思い浮かべため息をつく
最近は自室に戻るよりももうずっとあの男の部屋に通っている
部屋と言っても安宿を転々としているから居場所がすぐにわからなくなる
携帯電話の番号も交換していないから連絡も取れない
『異能』を使えばすぐに見つけることはできるのだが…
東郷月新、東郷、剣鬼…
手の中で紙パックを弄ぶ
穏やかな顔で手を伸ばし私に触れる…
最近少し不安になる、あの男は私が求めるから答えるだけで
実際のところ肌を重ねること自体、肉欲をぶつけ合うこと自体どうでもよいのではないかと
あの男は剣鬼だ、切り殺すこと以外に自分を満たすことは出来ない
だから…、だから…

「だからどうなんだ…」

はぁと項垂れた
どうしろと、私はあの男を切り殺したいのだ
だからそんなことなど気にする必要はないのだ
…それなのに…

「月新……はぁ」

鬼道椿 > 落第街を取り巻く情勢も何もどうでもいい…
元より関わり合いの無い世界だ
東郷月新のことだけが気にかかる

はたして私はあの男を斬れるのか
刀も、戦い方も、異能の使い方も、全て今までとは違う
最初に剣を交えたころより遥かに強くなっている自信はある
それでも…首を刎ねる自信が日に日に無くなってきた

東郷月新を失うのが怖いのだ…

「…考えるのを、止めよう」
「これ以上は鈍るだけだ…」

ご案内:「屋上」から鬼道椿さんが去りました。