2015/08/01 のログ
蓋盛 椎月 > 「ん~、じゃあ膝の上で……」
ちょっとのあいだ悩んだあと、そう答え、
ベッドに移動して腰掛け、自身の膝の上におこん先生の身体を乗せる。

手にしたブラシを、なれない手つきで恐る恐る……
とりあえず尻尾の先のほうから、様子見がてら少しずつ添わせる。
この間うっかりわしづかみにして面白い声を出させてしまったのでちょっと反省しているらしい。

「毎年誰かにこうやって漉いてもらってるんですか?」
ブラシを動かしながら、膝の上の彼女にそう問いかけてみる。

おこん > おー。 そんじゃあ頼むぞい。
(よーいしょ、とお膝の上。 なんだか上機嫌な感じで、9本の尻尾がリズミカルに動く。
 そっと尻尾の先端から指が這う感覚に、微かに身体が震えるけれど、
 前みたいに叫んだり、身体が硬直するといった程ではない。)

そうじゃなー、大体暇な時は生徒に頼んでおるんじゃが、今年は都合がつかんでのう。
ちょうどおぬしがおったので、頼んだという次第じゃ。
(心地よいブラシの感覚に目を細める。 問いかけにのんびりした調子で答える。
 1本の尻尾だけを彼女に向けて、残りの8本…ブラッシングかけてない部分は、
 だらりと下げて待機。)

蓋盛 椎月 > 膝の上に伝わる心地良い重み。
無防備に横たわるその様子に、悪戯心の沸かないでもないが、今はおとなしく。
大丈夫そうなのでブラシをより奥のほうまで段階的に動かしていく。
あんまりタラタラやっていては九本全部は終わらない。
空いた片方の手はおこん先生の背中に添えて。
時折ブラシを抜いてくっついてくる抜け毛を確認したりして。

「ふうん……。
 けっこう面白いですね。耳かきとかに通じるものがある、というか」
薄く、やわらかい笑みを浮かべて。

おこん > んふー……心地良いのう。 こう、尻尾は敏感なところでのう。
こうして櫛ってもらうだのは、なんというか…頭を撫でられるのと
似たような心地よさがあるでなー。 人に例えて言うなら…そうじゃな、
髪をなでられるのと同じもんじゃのう。 穏やかな心地よさがある…
(ゆるゆるーっと脱力しきった感じで、お膝の上でのんびり。
 彼女の言葉にうん、と頷く。 変に動いてびっくりされた困るから、首だけ。)

蓋盛 椎月 > ゆるやかに焦らず、しかし確実に、櫛をかけていく。
一本目が終われば、次の尻尾へと。
ブラッシングに慣れてきたのか、幾分か動きはスムーズとなった。
穏やかで心地よさげなおこん先生の声に、こちらまで眠くなってくる。

「あたし、こういうふうに、ひとを世話するのスキなんですよ。
 とくに、目に見えるような形で、何かを整えるみたいなことが。
 そういうとき、生きているのを感じる、みたいな……大げさな言い方ですかね」
うっとりとした声色。さらさらと、おこん先生の背を撫でる。

おこん > んふー…… んぁ…… そうじゃのう、しづきは世話好きなところが見え隠れするのう。
こうしてワシがおねだりしても、直ぐに答えてくれるところとかな。
何をするにも楽しみは、生きがいは必要じゃよ。 そういったものがなければ…
人も、人ならざるものも生きてはおれぬ。 神々ですら酒を飲み、宴で舌鼓を打つ。
どんなことでもよい。 大げさでもなんでもないのじゃ、喜びというやつは…んふ…
(背中をゆっくりと撫でてもらい、ブラッシングをかけてもらって目を細める。
 のんびりとした口調で相手の言葉に答えながら、ぴく、ぴくと狐耳を動かして。)

蓋盛 椎月 > 順調にブラッシングが進んでいく。
二本目が終われば三本目、三本目が終われば四本目へと、すっかり慣れた調子で。
抜けた毛は、シーツや床へと落ちて積もるだろうか。

「そぉですね。養護教諭をやっている理由のひとつ、かもしれません。
 ……おこん先生の生きる喜びは、例えばどんな感じですか?」

狐耳が動くのを見て、背中に添わせていた手を動かし、ちょい、とそれを軽く突く。

おこん > んふー、ふー…んー…誰かのためになりたい、というのは、人の願いじゃな。
獣はそういった気持を持つことはないからのう。 ワシの喜びか? ふーむ、そうじゃな。
なんでもよいが、人が仲良くしているところを見ること、かのう。 人間と人間でもよいが、
人間とそうでないものがお互い融通しあっているところなど、見ていると心地良い。
そのためにワシはこみゅにけーしょん学をやっておるでのう…おお、気になるか?
(お耳をつんつんされると、それに反応するように耳がピクピク動く。
 ゆったりとした調子で答えながら、ふすー、と満足気に息を吐いて。)

蓋盛 椎月 > 五本目、六本目……七本目。
済んだ尾の数が半分以上となると、手近なものはすべて済んでしまっているので
よりわけ、少し折り曲げながら、位置を調整して、櫛を通す。

「そう。人間と、そうでないもの……
 じゃあ、こうしてあたしと仲良くしているのも、心地良いことになるかな?」

ぴくぴくと動く耳を指で押して、へにょりと寝かせる。
櫛は八本目へと移る。終わりが近づいてきた。
名残惜しいのか、少しブラシを動かすペースが落ちる。

おこん > んふふ、どうかのう。 しづきがよくしてくれるから、こうしてるだけかもしれん。
(相手の言葉に楽しそうに答える。くいっと押された狐耳は、ぺたりと伏せたまま。
 ゆっくりとしたブラシにますます緩みきった感じに脱力して。)

少なくとも、ワシは自分が気に入らぬ事を続けるほど、気は長くない。
つまり…長くとどまることは、ワシにとって好ましいということじゃ。
例えば、こうしておぬしの膝の上で櫛ってもらうこととかのう…
(すでにブラシをかけてもらった尻尾をゆらゆらと動かして、
 彼女の手に軽く絡める。 目を細めながら、小さく笑って。)

蓋盛 椎月 > 「わ」
おこん先生の全身同様、されるがままに横たわっていた尻尾が手に絡んできて、
小さく声をあげた。

自分とおこん先生の生きる喜びは似ているようでいて、すこし違うな、と蓋盛は思う。
自分の生きがいには自分が主体として含まれるが、
おこん先生の生きがいにはそれはない。
どうという話ではないが、生きてきた年月の差がそこに顕れている――のかも、しれない。

「よくしている……のかな。あたしはきっと誰にでも出来る事をしているだけですよ」
つい、ひねくれたことを口にしたくなる。
顔を上げて、ぼんやりと保健室のなにもない壁を見た。

八本目を丹念に終わらせる。そして最後、九本目を手に取る。

おこん > ほれほれ、おぬしがしっかりと手入れしてくれた尻尾じゃぞ。
毛並みも揃っておるし、心地よかろう。
(あんまりべたべたしていると暑いだろうから、
するすると彼女の腕を撫でるくらいに収める。
誰にでもできること、という言葉に、伏せていた狐耳をぴくりと立てた。)
ワシだけになにか特別なことをしてくれてもいいんじゃぞー?
なんてのー。 誰にでもできると思っておることは、案外誰にでもできぬのよ。
自分が認識できる他人なぞ、自分のものさしで図れる程度でしか無いからのう。
(禅問答みたいな答えを返しながら、しづき先生のお腹に尻尾で軽く触れる。)

蓋盛 椎月 > 「特別、ねえ……」
漉く手を止めて、少しだけ考える。
うまく思い浮かばなかったらしく、首を横に振った。

腹に尾で触れられて、びくと身動ぎする。
「いたずらしないの――……」
間延びした声。こちらとて散々色々しているから文句の言える筋合いではないが。
九本目に添わせる櫛の動きが、過剰に速くなった。
子供みたいなことを口走ってしまった、その照れ隠しでもあった。

外見にふさわしい幼い振る舞いをしたかと思えば、
いつのまにかこっちが子供のようにさせられている。侮れない。

そんなこんなで、九本目も、終わらせて。

「はい、おしまい」
おこん先生を膝に載せたまま、軽くぽんぽんと頭に手を乗せる。
もう片方の手で、シーツやらに落ちた毛を拾い上げ、しばし見つめ……
「……」
何を思ったか、口に含んだ。

おこん > んふふ…んー?すまんのう。 ついじゃれついてしもうたわい。
しづきがあまりに熱心に尻尾を櫛ってくれるものじゃからな。
(楽しげな調子で彼女の文句に答える。 尻尾はするりと元の位置。
 こっちからお願いしたのに邪魔をし続けるのもよくない話だ。
 かくして9本の尻尾を丁寧にブラッシングしてもらって、ひとごこち。)

おお、お疲れ様。 さすがに9本もあると大変じゃったろう。 んふ…♪
(頭を軽く撫でてくれる手に答えるように、みずから頭をぐりぐり押し付ける。
 のだけれど……)
お、おい、しづき、何しとるんじゃ? それは綿菓子でもなければ爪の垢でもないぞ?
(抜けた毛をくちに含むしづき先生に目を丸くして、慌ててぺしぺしと彼女の身体を
 軽く叩く。)

蓋盛 椎月 > ぺしぺしと叩かれるのにも構わず、もごもごと口を動かす。
どう考えても食べるのに適してはいないそれを口の中で丸め、
ごくんと嚥下してしまった。

「……なにかしらの霊験があるかと思いまして」
心にも無いことを口走る。
しかししれっとした表情を保てたのも数秒の間で、だんだんと顔が赤くなる。
「あー、えーと……その、変でしたか、変ですよねーこういうこと。
 ……あたしって変ですよね」
ぎゅっと唇を結んだ。

おこん > あっ、あっ…あーあ飲んでしもうた。
(もごもごしてるしづき先生を別に止めるわけでもなく眺めていた。
 結局さらっと嚥下した挙句、霊験を持ちだして来るしづき先生。
 自分の霊験を信じてくれているのか、そうでないのか。
 いや、大事なのは多分そこじゃない。 顔真っ赤になってるし。)

まあ、変といえば変……かもしれん。 いや、でも……実際ちょっと嬉しい。
(彼女の奥にある何かの片鱗…すごく根源に近いものにわずかに感応する。
 そう、なんか嬉しいのだ。 恥ずかしいけど。 こっちまで赤くなってきて、
 とりあえずうつむいた。)
いや、まあでも…しづきがお腹壊したりしたら困しのう…
今度やったら、しづきの着てる白衣もらうからな。
(食べたりはしないけど欲しい。おもにしづきの匂いとか。
 それは言わないで置くことにした。)

蓋盛 椎月 > 置きっぱなしだったカルピスのグラスに手を伸ばし、
氷が少し溶けて薄まったそれを飲む。

「う、嬉しい、ですか、あー……」
間抜けに声を伸ばす。そう言われてしまっては返す言葉がない。
うつむくおこん先生とは対称的に、頭上を仰いで。

「……なんというかその、もったいなくて」
少し間を置いて、やっとそう口にする。
前にもどこかで似たようなセリフを言った気がする。

「あはは。まあ、その、以後気をつけます、けど。
 ……ほしければあげますし、
 それに、あたしのことは、……食べてくださっても構いませんよ」
膝から下ろして、その小さな身体をぎゅっと抱きすくめた。

おこん > なんか…いいじゃろ、そういうの… その、相手と自分の、一部っていうか…な?
もったいないっちゅうても、それはそうじゃけどな。 お腹壊したりしたら困る。
でもまあ…もったいないっていう気持ちはわかる…
(しづき先生の健康と意見、どっちを取るべきか。 すごく難しい表情。
 ほしければ上げると言われて、またびっくり。)
 でも白衣ないと困るじゃろ。 しづきの匂いがついてるのがいいんじゃ。
 別に犬とかじゃないけど、誰かの匂いがあると安心するからの。
 ……そんなこというと、本当に食ろうてしまうぞ? 褥で一晩、
 たっぷりと貪ってしまうぞ?
(ひょいと着地させてもらうと共に、彼女のハグ。 そっと抱き返して、
 甘えるように彼女の身体に鼻先をすり寄せて囁く。)

蓋盛 椎月 > 「ふふ、わかっていただけますか」
にこ、と破顔する。

「白衣は、まあ、新しいの買えばいいですから……」
身も蓋もないセリフであった。
「あたしも……匂いとか、体温とか……そういうのあると、
 とても安心できます」
膝を折る。身を屈めて、おこん先生の頭部、耳の後ろに顔を寄せる。
すん、と鼻を鳴らして匂いを確かめた。

「さてはて、そう言っていつも食べられているのは
 どっちやら……」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべて。
互いに身をすり寄せあったあと、そっと身を離す……。
「ま、それについてはまたいずれゆっくりと。
 お互い、時間はたっぷりありますからね」

おこん > な、なんじゃよ、もー! 白衣ってそんな簡単に買えるものなのかのー。
そうじゃよなー。だれか隣におるのとおらぬのではなー。 んーっ…♥
(精一杯ぎゅっと彼女を抱きしめる。匂いをかがれるのは恥ずかしいけど。)

ワシだってなー、本当の姿になればお主だってぺろりなんじゃぞ。
本当なんじゃぞ。 そうじゃのう、またいずれ…んふふ、楽しみじゃな…!
(ハグを終えてから満足気に、9本の尻尾をふりふり。さっきよりもずっと軽い。
 手をしっかりいれてくれたおかげだ。 尻尾はピカピカである。)

さて、そろそろワシは戻るとするかの… しづき、さっきの言葉、忘れるでないぞ。
いっぱいいっぱいかわいがってやるからのう!
(捨て台詞みたいな感じの言葉を残してから、上機嫌で保健室を去るのでありました。)

ご案内:「保健室」からおこんさんが去りました。
蓋盛 椎月 > 「真の姿、ね……」
時折おこん先生の口から、そんなフレーズが漏れる。
負け惜しみぐらいにしか今のところは働いていないけど。
もしそんなものがあるとしたら、ぜひ見てみたい、と思う。
そして、『真の姿』については、ちょっと尋ねたいこともある。
まあ、それは次の機会にでも、ゆっくりと訊けばいいだろう。

「楽しみにしていますよ」
おこん先生が去った後、抜けた毛を箒で掃いて集める。
それらの処遇については少し迷ったが、ふつうにゴミとして処分することにした。
さすがに保存するのもどうかと思ったし。

「ふふ」
満足の余韻を味わいながら、通常の業務、日常へと戻る。

ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。