2015/08/20 のログ
■上那賀 千絵 > 「・・・」
第三教室棟の屋上へと続く階段を上がっていく。
教室にいてもなんとなく落ち着かないからだ。
階段を上がり終え扉の前、
ドアノブに手をかけてゆっくりと開く。
「・・・ふぅ・・・、やはり外の方が・・・。・・・?」
屋上へと足を踏み入れ扉を閉じ一度深呼吸、
澄んだ空気を取り入れ気分転換した所。
ゆっくりと眼を空けて外の景色を視界に映せば、
何やら不可解な光景、不安定な状態でフェンスにいる一人の存在が眼に留まる。
危険を感じ咄嗟に言葉は出る。
「━━!?、危ない・・・!」
急ぎ目の足取りで其方に向かいつつ、
焦りを感じた言葉を放った。
■倉光はたた > 「あ」
ぐるり、とはたたの首が声のしたほうを向いた。
均衡が崩れる。それとともに、指先から零れた電撃が、
フェンス一帯を覆った。
眩い閃光。
バランスを失い、ぐらりと傾いた少女はフェンスの内側へとぼとりと落ちる。
フェンスに止まっていた別の小さいもの――すずめと共に。
■上那賀 千絵 > 「なっ・・・何だ!?」
少女がフェンスから落ちる瞬間、
フェンスが突然の閃光を放ち咄嗟に手で眼を隠し視界は奪われた。
何が起きたかわからないが閃光は収まり、
眼を隠していた自分の手でどける。
(先ほどの少女は・・・?)
と、頭の中で呟き視線を泳がせると、
幸いにもフェンスの内側で落ちた姿が見える。
外側じゃなくて安心した為か足取りはゆっくりとその少女へと向かう。
「・・・無事か?」
屈んで地面へと落ちた少女へと問いかける。
・・・近くに落ちてるスズメにも気づく、
先程の閃光が影響しているのだろうかと予想しつつ
視線は少女の方を見つめて
■倉光はたた > 翼のようなものを生やした、白い髪の少女は
屋上の床に寝そべるようなかたちで落ちていた。
顔が上を、千絵のほうを向いた。感情の抜け落ちたような相貌。
「だいじょうぶ」
小さく口を開いて、これだけ言った。
実際、大した怪我をしている様子はないことが、
少し観察すればわかるだろう。
すぐに千絵には興味を失った様子で、立ち上がりもせず、共に落ちていた
ぐったりとしているすずめを寝転んだまま手でたしたしと叩いた。
たしたし。たしたし。つかまえた獲物をもてあそぶねこのように。たしたし。
すずめが目覚める気配は見せない。
■上那賀 千絵 > 人間・・・?のように見えるが翼のような物まで生えている。
一体何者だろうか・・・と倒れたままの少女を眺める。
少女が此方を向きその表情が露となるが、
生気が無いようにみえる雰囲気が観えた。
「そうか、それならばいいのだが・・・。」
これ以上は関わる必要が無いのか、
余計なお世話だった様だと屈んだ姿勢から立ち上がろうとした時、
死んでいるのだろうか動きもしないスズメを弄ぶ少女の行動が目に留まってしまった。
「・・・止せ、死を迎えた者を弄ぶのは。」
実際死んでいるかわからないが
少女がそこまでふれて動かないところを見ると
死をむかえているか、若しくは虫の息だろう。
決して口調は厳しくない、
ただ、聞く人によっては冷たく聞こえる無機質な声色。
■倉光はたた > 「?」
はたたの手が止まり、顔が再び千絵を向く。
「し…… もて……?」
言っていることの意味がわからなかったらしく、
断片的に言葉をもごもごと繰り返した。
しかし興味が向いたのは僅かな間の話で、
再び、はたたの注意は動かないすずめへと向く。
じぶんの中から出るぴかぴかでいきものにさわってはいけないことは
どうしてか知っていた。
なぜさわってはいけないのはわからない。
すずめは起きあがらない。
起きあがらないのは面白くないから起きあがってほしいと思った。
どうすればいいのだろうか。
今一度はたたの指から稲光が奔った。
そして肉の焦げて弾ける音と臭い。
さきほどとは比にならない高圧電流は、多大なジュール熱を発生させて
すずめを真っ黒焦げにしてしまった。
自ら起こした事態をただしく理解できていない様子のはたたは、
その黒い塊を呆けたように見つめていた。
■上那賀 千絵 > 「・・・?」
此方の方を向いた(はたた)は相変わらず生気が無い様な素振り
ハッキリしない言葉を発したと思えばスズメへとまた振り向いてしまう。
興味が無いというよりも私自身が言った言葉を理解してないと、
そんな風にも見えてくる。
「君は一体何を・・・っ!?。」
この言葉を発した瞬時、
(はたた)の指先から生成された稲光、
電撃の走る音と眩い光、
音と光からしてかなりの高電圧だろう、
言葉を失い光に目を細めると、
死んでいただろうスズメは見るも無残に黒く姿をかえていた。
「何故こんなことを・・・?君は何をしたかった?」
目の前の少女からは悪意を感じられない、
ならば何故?もしかして自分のしたこと、
今何が起きたのかを理解してないのだろうか?
それを確かめるべく此方に意識が向いてない少女に再び問いかける。
その口調は先程同様、
余り感情は豊かではなくあやす様な言葉遣いはできない。
勿論、放っておいてもよかったのだが、
なぜだろうか、放っては置けなかった。
■倉光はたた > なにかまちがえたのだろう、ということがわかった。
「…………」
寝そべっていた体勢から身を起こす。
はたたは再び千絵を向いた。
ゆらゆらと、背の翼状突起が揺れている。
「…………」
そして少し身を引く。
人間らしい機微は伺えない。かすかな警戒の気配だけがある。
「すずめ」
「おきる、ない」
「おきる、したい」
千絵の言葉のニュアンスをはたたなりに手繰り寄せて、
ぼそ、ぼそ、と、たどたどしく、ぶつ切りの言葉を口にした。
■上那賀 千絵 > 「・・・」
寝そべる姿勢から起きた少女(はたた)、
目線は屈んだ自分と同じくらいで正面、
少しだけ何かを疑っている様な雰囲気を出しているが、
基本的には変わりは無い、
あるとすれば少女(はたた)が何かを求める言葉を発したこと。
最初は何を伝えたいのかすぐにわからず一度首を少し傾げたが、
少し考えればなんとなくだが理解できた。
「スズメは、もう・・・、起きない。」
真っ黒になったスズメを見た上で少女(はたた)のこの発言、
何が起きたのかすら理解してないことが確信に変わった。
如何伝えていいか悩んだ末の答え、
ただ、死に関する言葉だけは先程の結果からさけて置いた・・・。
「変わりに、私が遊ぶ、だめかな?」
屈んだ姿勢から地面に座り、少女(はたた)への再び問いかけ。
なんとなく、この少女と自分は感情が欠落しているとこが似ている。
尚更ほってはおけないなと、小さく頷いた。
■倉光はたた > 「おきない」
起きない、とは、どういうことだろうか。
はたたは考えようとしてみた。
焼き切れたはずのこの脳髄は思いのほかいろいろなことを知っていたけど、
それについてはアクセスを拒否されてしまった。
起きなくなってしまった、すずめだったものに一度視線を落とす。
振り向く。
「でも、はたた(自分の胸を指差した)は、おきた」
「だいじょうぶ」
遊ぶ、という言葉に、そう言ってがくがくと頭を縦に振った。
しかし、再びすずめだったものを見て――少し考えた後に、
それを、壊れないようにそっと両手ですくい取った。
「すずめ、どうする」
起きないのなら、どうしたらいいのか。
何かするべきことが別にあるような気がした。
起きないことを知っている彼女であるなら、きっと知っているのではないか。
そんな期待をしたのかどうかはわからないが、懇願するような眼差しを、千絵に向けた。
■上那賀 千絵 > 「それは・・・」
死、以外の良い言い回しなんて自分には持ち合わせていない、
口元に手を沿えて考えていると、
不思議な言い回しと行動をする少女(はたた)、
スズメを見た後に自分は起きたと・・・。
もしかして少女(はたた)は同じ境遇にあったことが・・・?
否、そんな筈は無い、生命を維持できる筈なんて無いのだから・・・。
ありえない答えに首を小さく振り自分の思考を否定した。
「君の名前は、はたた、私の名前は、ちえ。
そうだな、はたたは起きることができた。」
少女(はたた)の意見に同意し雰囲気をあわせる。
大丈夫の一言に安堵の息をつく。
少女がすくい取った両手掌の中にある黒い亡骸。
このままにしておいてはいけないということはわかっているのだろうか・・・。
此方をじっと見つめるような眼差しは答えを求めている様。
それに答えるべく此方はコクリと頷いて。
「すずめは、地に埋めないといけない、そうしないと・・・」
なんと答えようか、言葉を捜すために暫しの沈黙、
あまりこういったことは考えたことは無かった・・・、
自分は逆に命を奪ってきた人間だから。
考えを深めた上で余り良い言葉ではないが。
「もう一度、起きれる体に、生まれ変われなくなるから、ね。」
此方にそのなきがらを渡すように両手を差し出す、
後で自分がうめてあげようと・・・
■倉光はたた > 「ちえ」
眼差しを、千絵に向けたまま、小さくつぶやく。
理解できているのかいないのか、かくかくと頷いた。
差し出された両手に、意図を察したか、そろそろと、すずめの亡骸を渡そうとする。
つつがなく引き渡しは行われたが、ぽろ、と一部分がとれてしまう。
片方の羽根に当たる部分が、はたたの手の中に残った。
「…………、」
それにじっと目を伏せて、
「…………はたた、うめる」
考えが変わったのか、手の中に納めたまま、身を起こし、たん、と地面を蹴る。
背の生える翼に似たものが、淡く光を放つ。ふわり、と身体が浮き上がった。
夏の湿った空気のなかを泳ぐように、
はたたの小さい身体はフェンスを飛び越えて、その向こうへと消えていった。
この時は結局、千絵とともに時間を過ごせはしなかった。
ご案内:「屋上」から倉光はたたさんが去りました。
■上那賀 千絵 > 「あぁ、その方が良い。」
意味はきっと伝わったのだろう、
屋上から飛び去っていく少女(はたた)を見送る。
掌の中に残った亡骸を見つめる。
「・・・、まさか、私が死を弔うなんてな・・・。」
屋上を後にして校庭へとむかう・・・。
もしも、あの少女が人へとその力を振るうときがあれば、
私は全力を持ってとめなければならないかもしれない。
「はたた・・・、か。」
少女の名前を一度だけ呟いた。
そのようなことがないことを願って・・・。
ご案内:「屋上」から上那賀 千絵さんが去りました。