2015/08/25 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (午前。美術室ではなく、小教室のひとつ。
芸術学の講義が一コマ終わり、生徒たちが出席票やレポートの提出を済ませて退出してゆく。
ヨキはといえば、正面の教壇に腰掛けて、生徒からの質問や相談に応じたり、雑談に興じていた。
先生これお土産、と本土の米菓が入った小箱なんぞを受け取ったりして、最後の女子グループを見送る)
「………………、」
(笑顔で手を振って見送ったのち――
独り残されたのを確認すると、やおら自分の手や首筋の匂いを嗅ぎ出す)
「……大丈夫だよな。
バレてはいないはずだ。臭くない」
(普段どおりぴかぴかの土気色をした唇を、手の甲でぐいぐいと拭ってみる。
肌には汚れひとつない。
昨晩、夏服はいろんな汚れがこびり付いてお釈迦になった。
今日になって幸運にも気温が下がり、そ知らぬ顔で衣替えを果たしたのだ)
■ヨキ > (何しろあのあとメチャクチャ風呂に入ったし歯も磨いたし消臭カプセルも飲みまくった。
首筋には異国調の香水。獣の嗅覚さえあれば、付けて濃すぎることもない。
翌日の朝方から授業があることを見越して、昨晩は内臓を食べ控えさえした。
ヨキ偉い。これぞ人間の理性の勝利と言えよう)
「……とりあえず安心だ。
ヨキは二学期も常世学園の教師である。安泰だ」
(心なしかほくそ笑みながら、授業に関する日誌をさらさらと書き付ける)
■ヨキ > (昨晩の獲物について思いを巡らせていると、日誌をうっかり書き損じた。
『ガルニエ宮、パリ万博、薬物取弓 | 』……)
(違う)
(『薬物取引』の語をペンでぐりぐりと塗り潰し、上から修正テープを引く。
ガルニエ宮はミラノスカラ劇場ではない)
「……ミラノスカラ、か」
(二学期。まもなく秋が来る。『芸術の秋』が。
劇団フェニーチェ――その『脚本家』。少女の姿を思い起こして、机に頬杖を突く)
■ヨキ > (芸術の秋。食欲の秋。スポーツ(※暴力)の秋。そして恋と友情の秋。
夏休みの間にどことなく顔つきが変わった女生徒とか、妙によそよそしくなった男女らなどを眺めるのが好きだった。
そういった若人らの顔は、眺めているだけで楽しくなれる。毎年の風物詩、というやつだ)
「秋……なあ」
(窓から吹き込む風は昨日よりも冷たい)
(秋はスポーツ、そして暴力の秋である。
そう、誰が何と言おうと――だ)
「……………………、」
(まるで稲穂の首を刈るように、かつてヨキが『討たれた』のもまた秋だった)
(年月は巡る。
ヨキが人間として産まれ直した季節が、またやってくる)
「……恋でもするかあ」
(出来ようはずもないものを。
それが唯一無二の逃避の手段であるかのように、ぽつりと零した)