2015/10/16 のログ
ヨキ > 「学園祭が終わるまで……ああ、想像していたよりもずっと早いな。
 そうか、あと三週間……」

(笑いながらに、眉を下げるのを隠しもしなかった。
 どことなくしょんぼりとして、じっと譲莉を見る)

「寂しいなあ。
 通りすがりにこうして声を交わすことも出来なくなってしまうのか」

(けれど続く譲莉の言葉に、ふっと気を取り直す。
 まるでこちらが慰められたかのように、うむ、と小さく頷く)

「……そうしてくれ。
 『常世学園の生徒』としての思い出は最後やも知れんが――
 終わった後も、この島のことは忘れずにいて欲しいんだ。
 観光地……のように、自由にやって来られるような土地ではないが。
 ……ああ、ヨキが本土の君へ、会いに行けば済む話か」

(そこまで言って、頭を掻いて笑う)

「いやだな。
 毎年何人も送り出しているというのに、生徒と離れるのはいつまでも慣れなくて」

茨森 譲莉 > 笑顔でも、その下がった眉から寂しがっているのが分かる。
そういう顔をするのは、せめて船着き場から船が出て行く時にして欲しい。
寂しいとかそんな事、言わないで貰いたい。………出て行くのが、もっと嫌になるじゃないか。

アタシが常世学園に行くと決まった時も特に何も言わなかったクラスメイトや、
行ってらっしゃいとだけ言った先生を思い出しながら、アタシは握っていた手をより一層強く握る。

「ヨキ先生が会いに―――。」

それは嬉しい、嬉しいけど。

「そんな事したら、ヨキ先生、皆に化け物ーって言われて逃げられちゃいますよ?
 最初に会った時言いましたけど、アタシの住んでる所だと、
 異邦人は人を食べるとか、そんな事を言われてるんですから。」

出会った時の事は、つい数日前の事のように思い出せる。思えば、随分と失礼な事を言ったものだ。

「勿論、忘れませんよ。
 ここであった事は、ずっと大事に覚えています。

 って、もういなくなるみたいですね。
 まだ三週間もありますから、その間にまだまだ思い出が作れるのに。」

なんかもうすぐにわかれるみたいな空気を作るから流されてしまったが、
あと3週間もあって、学園祭なんていうおっきいイベントもあるのだ。

「ヨキ先生、良かったらなんですけど。………学園祭、案内してくれませんか?
 結構長い期間なんですよね。ヨキ先生の授業の展示だけでも、一日だけでもいいので。

 ―――出来たら、お願いします。」

「一緒に回りませんか?」なんて恥ずかしくて言えないアタシはせこい言葉を選んで、頭を下げる。

ヨキ > (声として表された『三週間』がもうカウントダウンでも始めているかのような顔。
 譲莉の言葉に、ならば、と考えて笑顔を作る)

「化物と呼ばれることには、もう慣れてる。
 ここでも初めには、随分とそう言われて……いや、君にする話ではないな。
 ほら、こうしてみてはどうだね?この耳を隠せば、ヨキとて『普通の』人間と変わらんであろう?」

(垂れた耳を、髪の毛の陰へ手のひらで持ち上げ、覆い隠してみせる。
 それでもその牙だらけの大きな口、四本指の大きな手、瞬きのしかた、笑うときの筋肉の動き――
 何もかもが人間とは大きく、あるいは『どことなく』違った。
 慣れない人間に不自然さを催させるには、十分なほどの)

「………………。無理かな」

(手を離す。ぱたりと音がして、再び薄い耳介が垂れ下がる。
 参ったな、とだけ一言。困ったように笑う)

「いや……具体的な日付を聞くと、どうもそればかりに気を取られてしまうな。
 本当にいちばん寂しいのは、君であるだろうに。失敬した」

(案内を、という譲莉の言葉に、ぱっと表情を明るませる)

「ああ……ヨキで良ければ、それは勿論、喜んで。
 友人らとも、沢山見て回るといい。ヨキがその中のひとりになれるなら、嬉しいことだ。

 ――ヨキと一緒に、見て回ってくれ」

(微笑む。譲莉が言いあぐねた言い回しを、ごく軽い語調で口にした)

茨森 譲莉 > 「たとえ大丈夫でも、そうやってずっと押さえてたらアタシと手が繋げないじゃないですか。」

そんな冗談を言いながら、ヨキ先生の子供のような理屈と子供のような仕草に思わず笑ってしまう。
四本指の大きな手も、牙だらけの口も、全然隠せてない。騙せるとしたら赤ずきんちゃんくらいだ。

そもそもヨキ先生は普通の男の人としても十分目立つ。背とか高いし、変わった服装だし。
変わった服装でもお洒落に見えるのが、この獣人の先生の不思議な所だ。
ファッションブランドでも立ち上げてみたら案外流行るんじゃないだろうか。

「ヨキ先生の顔を見てたらつられてちょっと寂しくなっただけです。
 アタシは別に寂しいなんて、思ってないんですからね。」

寂しがってる所を見せたらヨキ先生が益々寂しがると思って必死に言い訳してみたけど、
なんか妙な言い回しになってしまった。こういうのってなんて言うんだっけ、そうだ、ツンデレだ。
そうして恐らく「はにかんだ笑み」とか称されるような表情を浮かべていたアタシに、
ヨキ先生の「喜んで」という返答と、「ヨキと一緒に、見て回ってくれ」という言葉が向けられる。

「………ありがとう、ございます。」

きっと、耳まで真っ赤だ、間違いない。
態々人がせこい言い方をしたのに、そんな風に軽く口にされると、
アタシだけが変に意識してるみたいじゃないか。……まったく、ずるい。
物理的にも社会的にも届く位置にあったら耳の一つでも引っ張ってやったのに。

「それなら、ヨキ先生の都合のいい日があればその日に、
 特に無ければ、アタシのほうから連絡入れますね。」

髪の毛を弄るアタシの口からは苦し紛れにボソボソとした声が漏れた。

ヨキ > 「あ。
 …………、君と手を繋げないのは重大だな……」

(手を繋げない、と聞いて、本気で思い至らなかった顔をする。
 大の男の顔をしているくせ、出てくるのは『帽子でも被るか』などと、子どものような発想ばかりだった。
 いわゆるツンデレめいた言葉回しに、大げさにえぇ、と声を上げる。
 どうやら言葉尻を、全くそのままの通りに受け取ってしまう性質らしい)

「何だ、寂しくなっているのはヨキだけか?
 女性は強いな……」

(半ば感心したように頬を掻く仕草までして、柔らかく笑う。
 譲莉の言い訳と、学園祭を共に見て回ることの誘いに、すっかり機嫌を直した様子だった。
 顔を真っ赤にするのは、単に喜びから来るものと思っているらしい)

「そうだな、ヨキの方でも予定を確認して……君にメールでも送ろうか。
 それならば、メールアドレスでも交換するかね?話が早かろう」

(言うが早いか、懐からシャンパンゴールドのスマートフォンを取り出してみせる。
 手馴れた手つきは、非日常的な装いのくせ随分と俗っぽい)

茨森 譲莉 > 「あの、冗談ですから。」

そこでさらっと「君と手を繋げないのは重大だな」なんて言ってしまえるのがなんとも憎い。
常に落ち着いた雰囲気で、大人らしい魅力の塊のような先生なのに、
そういう所では妙になんていうか、チャラい。………天然ジゴロというやつだろうか。
狙ってそんな事を言っているなら大したものだと思う。

「いえ、アタシも。寂しいです。
 ……帰りたくないって、どうしても思ってしまうので。」

そこまで素直に感心されるとむしろ罪悪感で嘘がつけない。
正直者の前では正直ならざるを得ないという事か。
益々熱くなってお好み焼きの鉄板のようになった頬を冷えた両手で押さえて冷ます。
好きな人への気持ちで焼けるからお好み焼き、なんちゃって。

照れを追い出す為に、脳内で変な事を考えてしまった。

「ありがとうございます。それじゃあ、お願いします。」

手慣れた手つきで携帯を取り出すヨキ先生とは対照的に、
緊張でわたわたとスマートフォンを取り出す。
ヨキ先生はなんとなく新しいモノを使っているイメージがあるが、
実際にどんな機能が備え付けられているか分からない。

とりあえずアナログな方法なら確実に大丈夫だろうと、
自分のアドレスの書かれた画面を出すと、ヨキ先生に差し出した。

ヨキ > (『冗談』と聞いて、また落ち込みそうになるのを寸でのところで堪えたのが判る。
 チャラい。軽々しい。ジゴロ。……あるいは犬。人間の言葉に、ひどく容易く一喜一憂する。

 譲莉の口から正直なところが吐露されると、ふっと笑って)

「では……こうして連絡先を交換しておけば、安心だな。
 学園祭を一緒に回る約束も取り付けられるし……

 君が本土へ帰ったあとでも、いつでもやり取りが出来る。
 思い出したときどきに、連絡をくれたら嬉しい。そうでなくとも……
 ヨキの名を見て、ああこんな獣人も居たな、などと思い出してくれるならば、それで」

(受け取った画面の表示を見ながら、片手ですらすらとタッチスクリーンを操作してゆく。
 相手へスマートフォンを返すと、間もなくメールが入るはずだ。

 『よろしく』という、短い件名。
 本文には一言、ヨキのスマートフォンの電話番号だけが書かれている)

「うむ。よろしく」

(にっこりと笑って、目を細めた)

茨森 譲莉 > 「あ、そうですね。」

その考えに至っていなかったアタシは、ぶるっと震えて着信をアタシに知らせ、
『よろしく』という件名からはじまるメールを表示しているスマートフォンを見て、
帰ってからも連絡が取りあえるという事実に僅かに頬が緩むのを感じた。

ヨキ先生に倣って、そのメールに返信する形で「宜しくお願いします。」という件名と、
自分の電話番号、加えて、茨森譲莉という名前を入力してメールを送信する。

読み方が随分特殊なせいで、相手に「どう書くの?」と聞かれる事が多いアタシは、
連絡先を交換する時は前もって名前を書き込んでおくのが癖になっている。

「さすがに、ヨキ先生の事は忘れませんよ。
 特徴的な見た目ですしね。一度見たら忘れません。
 予定のメール待ってます、あと、本土に帰っても必ず連絡します。」

スマートフォンを操作して送信先のアドレスと書かれた電話番号を入力して、
名前の所に「ヨキ先生」と入れて登録する。
当然別れるのは寂しいが、ヨキ先生とそして、
この常世学園と縁が完全に切れるわけじゃない、と考えれば、多少はその寂しさも紛れる。

……つくづく、アタシは現金なヤツだと思う。

「それでは、アタシは次の授業を受けないといけないので。そろそろ失礼しますね。」

行間の休み時間はそろそろ全て消費されきって、次の授業が始まる時間だ。
アタシは背にした教室から椅子を引く音が響きはじめるのを聞きながら、
取り出した時とは対照的に大事にケータイをしまう。
乱暴にしまっても別に壊れやしないだろうけど。

ヨキ > (自分のスマートフォンが受信したメールに目を落とし、はにかんで微笑む。
 『しのもり・ゆずり』という名を、繰り返し視線だけで読む。
 アドレス帳に打ち込んで保存を済ませ、譲莉に向き直る)

「ありがとう。
 ふふ……君の毎日には、他に魅力的な出会いも多かろうから。
 記憶の隅に埋もれぬ見た目をしているだけ、ヨキは得だ。
 それでは、近いうちに連絡させてもらうよ。学園祭……楽しみが増えたな」

(スマートフォンを懐に仕舞い込む。
 やがて学内が次の授業へ至る空気に切り替わると、さて、と頷いて)

「ああ、お疲れ様。授業、頑張りたまえよ。
 それではヨキも、次の講義の準備をせねばな」

(笑い掛けて、手を上げる。踵を返して、また廊下を歩き出す。
 教室へ向かう生徒と、擦れ違いざま朗らかな挨拶を交わして――曲がり角の向こうに、姿が見えなくなる)

ご案内:「教室」からヨキさんが去りました。
茨森 譲莉 > ヨキ先生を見送ると、アタシはふぅと息を漏らす。
そしてついさっき仕舞い込んだスマートフォンを取り出すと、
ヨキ先生のアドレスを開いて、その名前を視線で撫でた。

「異邦人の素敵な先生が居たんだ。」なんて言っても、
アタシの学校、いや、アタシの元居た学校のクラスメイトは信じないだろうか。
いつか、ヨキ先生が、いや、ヨキ先生のような異邦人が、
気兼ねなく遊びにこれるような場所になったらいいな、と思う。

アタシは窓の外に広がる青い空を見て、窓から差し込む暖かい日差しに目を細めてから、
間もなくやってくる先生に「静かにしろー。」と言われて間もなく静かになるであろう
ギャーギャーと喧しい授業直前の教室に戻って行った。

窓に映ったアタシの顔は、小さく笑っていた。

………席についた直後に目の前の席の、あだ名しか知らないクラスメイトにからかわれて、
得意の鉄板顔を披露する事になったのは、あの素敵な先生には内緒だ。

ご案内:「教室」から茨森 譲莉さんが去りました。
ご案内:「職員室」に天導 操さんが現れました。
天導 操 > 【職員室の中にある、自分のデスク…椅子に座っていた彼女は、机の上にある資料を整理しながら小さく伸びをする】

特に問題なく、お仕事しゅうりょーっと…良かったァ 約束通りの時間に十分間に合いそう

【何時もよりも少しお高めの腕時計を確認して、そう呟く】

天導 操 > (この前、リビドー先生には「また今度お話の続きを」って事にしてたけれど、お酒のお誘いを頂けるなんて…しかも、先生オススメの隠れた名店ってことで…)

…ふふっ

【自分でも意識しないうちに、口許に笑みが浮かぶ…それもそのはず、この教師は相当のお酒好き、週末になるとほぼ毎週居酒屋に向かっては飲み、ハシゴしては飲み、日を跨いで自室に帰っても飲み、そして酔い潰れ、目覚めたら夕日が…ともかく、そのような独身飲んだくれがこの島にあるらしい穴場をこれから知るとなると、当然その期待感は抑えきれる訳でも無かったらしい】
【身なりも、何時もよりも気を使った物にしているようで…】

天導 操 > (………さぁってと、そろそろ…)

【資料を片付け終わると立ち上がって、さっさと荷物をまとめて、そして焦る気持ちを表すかのように早足で、職員室を後にする】

ご案内:「職員室」から天導 操さんが去りました。