2016/06/04 のログ
ご案内:「教室」に松渓つばめさんが現れました。
松渓つばめ > 「グゥ・・・ッ、またも、失敗、だとぉ・・・ッ」

娘は邪悪な煙をもうもうと上げる地獄の大鍋を前にして、絶望に膝をついていた。

……調理実習室である。

松渓つばめ > 作っていたはずのものは、今朝バイト先でもらって来た新鮮な海の幸。学園にクーラーボックスを持ち込むのはどうかと思いますが、持ってきたのだからしかたない。

大釜というのも言い過ぎで、実際には小さな味噌汁用の鍋だったりする。

時刻は、そろそろオヤツが夕食につかえる程度。
娘は一人。
自主トレと称して何の変哲もない実習室の一角を、料理という一般的な行為を以って、ロスアラモス国立研究所に変えていたのだった。

松渓つばめ > 取り落としたプラスチックの味見皿が無情にカロンカロンと鳴る。後で拭き掃除しておいてください。

「ただの煮付けがこれほど難しいとは……」
色々と要領のいい彼女にとって、それはもはや特殊能力と言えた。世界のまずさが地獄の交響曲である。
「うう、新しい魚さばくの嫌だよぉ」
本邦初公開の涙目で、残った素材を見る。切り身が3枚。後はクーラーボックスの中に。

松渓つばめ > 「まあ、それでも……」と、気分を持ち直す。
ちらりと視線を動かしたのは、良く洗って乾かしていた小型のナイフだ。刃渡りはわずか7センチ弱。
「包丁」と銘打って売られていて、何故かそこそこ高かったのだが、さらに何故か気を引かれて購入してしまった品。
スッスッという具合に三枚おろしをやってのけたのは道具のおかげだろう。合掌。

「いつまでも あたしの時はデリで~なんてワケに行かないし。料理マスターに、俺はなるっ」
どんっ、と効果音をつけて、ラスト3の切り身に手を伸ばした。
それから、鍋の中身に気がついて……別のお皿にあけた。後でスタッフが美味しく頂きました。ええ、美味しく頂きましたとも。

松渓つばめ > 「ふう……」
鍋を洗ってもう一度、というところ。
携帯の画面に、魚料理のレシピページを表示した。

せっかく貰ってきた魚だ。自分の手で料理して振る舞いたい。
だけどルームメイトにひどい料理を食べさせるわけには行かない。女心。

「いくわよ」決死の表情。これでダメなら帰ってから夕陽ちゃんに手取り足取り教えてもらいながら作ろう、いやそれも悪く無い良いかも。……かぶりをふる。

鍋で魚に焼色をつけ始めた。

ご案内:「教室」に十六夜棗さんが現れました。
松渓つばめ > ……焦げ臭いニオイにまざって、新鮮な魚の油が熱せられる香り。悪くない。
「最初の問題は――タイミングね」集中である。

十六夜棗 > 放課後、廊下を歩いていると、謎の異臭が漂っている。
調理部が何かしらやっているのだろうかと近づいてみると、どうも部活動のような大勢いるような音はしない。

「様子を見てみたいけれど。」

入っていいのかしら、と貸切中とか調理実習室の扉に何かしら札でも掛かっていないか、まず見上げて。

そして、そーっと廊下を見回した後扉を少しだけ開けて様子を覗いてみた。
その頃には異臭が普通の料理の香りになっていたような気もしないではないけれど。

松渓つばめ > 「まずは砂糖……5,4,3――今!」カッと目を見開いて、砂糖を適量突っ込んだ。砂糖が焼かれ始める。
そして、「次は」と画面に目を移した。その間も砂糖がカラメル化を始めている……
見ているページもページだが、手順を全部いちいち確認するのがいけないらしい。

醤油を入れる頃には、「うあーっ!なぜだあーっ!」と悲痛な声をあげるのだった。
焦がし白身魚の味醂と醤油絡め、完成である。後でスタッフが以下略。

十六夜棗 > 「料……理……?」

覗いて見えた光景の感想が思わず声に漏れた。
しかも一人で料理の練習をしているとなると、食べてくれる人やアドバイスする人も居ないのではないだろうか、と痛ましげな表情を中の人に向けてしまう。

嫌な予感もする反面、知ってしまえば放っておけなくなって。

扉をノックしてがらっと開ける。

「その、大丈夫かしら。」

もしかしたら同級生だったかも知れないが、記憶にあるかどうかは謎である。

松渓つばめ > 目の前、頭を抱えてのけぞっている背中が止まった。
腋越しに振り返る。
「    十六夜さん」半泣きから、少し恥じ入るような顔をした。
アナログ学問を得意とする娘。
専攻科目は違うが、テクノロジーと運動を両立させ目立ちがちな少女のことは、知ってはいたのだろう……顔と名前を一致させるのも得意であることだし。

「恥ずかしいとこ見られたなぁ、どしたの?」原因自ら質問である。

十六夜棗 > 「ま……、まつ、松渓さん。」

振り返った顔をみて、名前を呼ばれて。脳を回転させ。
思い出すのにちょっとつっかえた。

それなりには目立っていた相手だったけれど人の中にいる人を思い出しにくい、それ位の認識だったものの。

「いや、異臭がしてね。
何だろうなぁ、と見に来たら異臭の原因みたり、よ。
確認したいのだけど、食物で作れる臭気兵器の作成ではないのよね?」

どこかの授業でそんな課題があったと言う噂を思いだし、
念のため、来た理由を説明して、質問を投げ返した。

松渓つばめ > 『兵器』とまで言われると内心不服も少々ではあるけれど、現実に鍋の中にあるのはデーモン・コアみたいな破滅的代物。
一本取られたと頭を掻いて笑わざるを得なかった。
「つばめ、でいいわ。あたしも苗字さんじゃ呼びにくいもの。
料理の練習してたんだけど、マァ兵器成分がニオイなだけ救いよね」
肩をすくめて言う。
「良い魚が相当手に入ったから。だーけどこれ以上失敗したら勿体なさすぎて……諦めようかと思ってたところ」 示した皿の上には、2回分のお魚が新鮮。そのままでも食べられるものだ。

「……」何かを考えるように棗を見ていたが、跳びはねるようにポンと手をうち「料理できるっ!?」

十六夜棗 > シュールストレミングにありあわせの材料で近づいてみよう。
そんな課題の結果でなくて良かったと言うか、むしろ良くないと言うか。

「わ、わかったわ。つばめさん。
匂いだけですんで食べられるなら救いね。」

仮定であって、食べる気には今の所はならない。
残っているお魚を見て、これがああなったのか、と残念そうに完成品へと視線を移した。

「え、あ。ええ。一人部屋だから、料理は身につけているわよ?
……考えている事が当たっていれば、手本になるかどうかはつばめさん次第だけれど。」

勢いに押されるように少し引き気味に頷いて。まだ無事なお魚をもう一度見た。

松渓つばめ > 「ぉお~!」という具合の大きいリアクション。そして考えるより手が早いのがこの乙女。
「OK、そしたらこっちで手ー洗って、棗ちゃん」
手を取って流しの前へ連れて行こうとする――目をキラッキラさせながら。近くには数人分のエプロンもかかっていて用意の良いことで。

十六夜棗 > 「ま、まぁ先生レベルとかそう言うのはき」

言い終わる前に手を取られて押しに流されながら素直に手を洗い始める。
この展開は予想外。色々持っていかれたような気が抜けた表情のままエプロンを装着。

今のうちに思い出さねばなるまい。あの魚の名前と調理方法を――!

松渓つばめ > 洗ってる間に、ナベを二つ用意し始める。ただ、調理方法は『先生のお勧め』を採用しようと思っているようだ。

食戟のお題は――血合い眩しい小ぶりなカツオであった。煮物?

「あっと、そうねどんな教え方が良いかは棗ちゃん次第だし……あたしは最初は見てよっか?それとも隣でする?教えてくれながらあたしがするでも良ーいけど」
喋りかけながら、ワクワクとした表情で見つめている……猫から犬にクラスチェンジでもしたのだろう。

十六夜棗 > 思い出してみれば普段は使わないカツオ。
事故の予感を感じても、もう後には引けない。

「そ、そうね。少し遅れてワンテンポずつ見てからやってみるのがいいと思うわ。」

未踏の領域に踏み込みながら、冷や汗をかかない事を祈り、詠唱、念じて。
そう、まずは他の材料と調味料を見るのよ私。

松渓つばめ > 「……ん?もしかして材料足りなかった」
と、調理テーブル横に一卓一台設置された(!)冷蔵庫を開ける。
ハーブに残りものの野菜に冷凍の肉……きっと調理台下にはサラダ油に天ぷら鍋もあるだろう。
もはや商売と化している常世の部活郡の恐ろしさ。料理部の、部外者でも使えるようにしている常備品。選択肢の増加という危険さを、つばめは理解していない……!

「どうしようか、フレンチ?イタリアン?懐石?」呑気である。しかし、一挙手一投足を間違うまいと集中力を高めているのか、目は本気だ。

十六夜棗 > 思い出せ、似ている魚は扱った筈。
鮭、違う。秋刀魚、鯖、ヒラメ、シシャモ、違う。
鯛、マグロ(赤身)…?

他の材料は…色々ある。

「あ、大丈夫、これならいけるけれど、先生やシェフのような代物は期待しないで。」

まず、失敗の原因が疑われるのは混ぜすぎと火加減。
ならば、単純な代物を作ればいい。

「まずはこうやって魚を捌いて……」
恐らくやれる筈、と気合を入れて包丁を手に取りまな板の上でカツオの身を切る。
刺身にした後、やってみて、と場所を譲り。

松渓つばめ > 「切るのね」と、神妙な面持ちで自分の包丁を手にとった。
ストストと身を小さくしていく。
見るとそのサイズはしっかりお手本に近く、測ったかのよう。もちろん先ほどまで使っていなかった猫の手も完璧だ。パーフェクトトレース!

「ふふ、これでせっかくもらった魚一匹まるまるアウト、は回避できそう」と、既に勝った気でいる。
「卸のおっちゃんたちに謝らなくて済みそうだわ」などと言っている間に、切り終えたようで。