2016/07/02 のログ
ご案内:「廊下」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 放課後。教室棟を繋ぐ廊下の中途、中庭でヨキが笹を見上げている。
七夕シーズンのために設置されたものらしい。

「うーん……、」

白紙の短冊を見るたび、ヨキはひどく考え込む性質である。
その足元には、使い込んだ工具箱と画材店の大きなビニル袋がひとつ。

学生らの指導を終え、いざ自分の制作に移ろうと学内を移動している最中、
この見事な大きさの笹に捕まったのだ。

「願いたいことがあり過ぎて、絞れんな」

それも去年と同じ台詞である。
備え付けの箱から短冊を一枚拝借して、庇の日陰に置かれたベンチへ腰を下ろす。

ヨキ > 自他に向けて“誓いを立てる”ことが多いヨキにとって、手放しに願うことは少ない。

「作品の入選……はヨキの腕で勝ち取るものであるし、
 最高の魔術……は本人の努力次第であるし、

 食うに困らない……は去年書いたし、
 そもそも今すごく困っておるし……」

決まりそうにない様子で、式典委員会からの掲示物に目をやる。
“学業・仕事・友人関係、はたまた恋など”……。

筆舌に尽くしがたい、ものすごく難しい顔をした。

ヨキ > 考えあぐねて視線で空を見上げ、素肌を露わにしたうなじを擦る。

「けっこう涼しいな……」

日に焼けることのない、生白い首を晒したヨキの姿は珍しい。
思えばあの首輪も、日に灼かれて随分と熱せられていたのだと気付く。

「…………、」

教え子の不凋花ひぐれには偉そうなことを口にしたが、
実際“恋人”を作ったところで、自分は次の週末には違う女と寝るだろう。
その在りようばかりは、天地が引っ繰り返っても変わることはあるまい。