2016/07/03 のログ
ご案内:「廊下」に松渓つばめさんが現れました。
松渓つばめ > 学生服をヒラヒラとさせて、さてこれから帰ろうかという所。
見つけたのは笹を前にボンヤリと立ちすくむ美術教師、だ。
その姿は、つばめにとって珍しくも見えるかもしれない。獣だ、というものが祈りか何かを捧げているかのようで。

「あ、ヨキせ――」声を掛けてみてもいいものだろうか?
攻めの娘でも少々すくむような……神気?そういうのが感じられるような感じられないような。

ヨキ > どうせ願うのならば、自分ではどうすることも出来ないことがいい。
つなぎのポケットから自前のボールペンを取り出す。

書き付けようとして、振り返る。

「おや、松……つばめ君」

笑う。
普段どおりの、良く言えば親しげで、悪く言えば馴れ馴れしいヨキの顔だ。
指先に挟んだ短冊をひらひらと揺らして手を振る。

「こんにちは。
 七夕の笹だとさ。君も書いていったらどうだい?」

その立ち居振舞いは、前に顔を合わせたときと何も変わらない。
ただどことなく――憑き物が落ちたような、晴れやかな顔をしている。

松渓つばめ > 「チワー、センセ何か雰囲気変わったね、どっかイメチェンでもした?部屋の掃除とか香水変えたとか」
それが男子三日会わざれば――の一種とわかる女ではない。がその変化を見て『悪いものだ』と思う程愚かでもない。
少しおちょくるような笑みを返すのもその証左か。
キザに指二本の挨拶で。

そして。
「ぉぉっ?七夕」
娘の頭上。
先ほどまでは引っ込んでいた狐の耳が飛び出していた。
魔王バラルの呪い。
最近魔力の流れをどうこうで引っ込めておけるようにはなったが、少しの驚きや感情の変化で出る。時には尻尾も。
授業中はえらく邪魔だ。

何故そう感情に動きを得たかというと。
「お願いごと?
すっごいヨキせんせーもこーいうのやるんだ、意外!」
と、その程度で発現する呪いであった。
「どんなの願ったの?良いもん食べたいとか?カワイイ彼女とかっ?」
発想は微妙だが、自分の願いもあるが彼の願いにこそ興味があるようで。

ヨキ > 「イメチェン?そんなに変わったか?香水はいつもと同じやつだが……」

言うまでもなく、お高いブランドのやつだ。
それが仄かに香る自分の身なりを見下ろしてから、にやりと笑う。

「そうだな。目標がひとつ、決まったからやも知れん」

言いながら、ふとつばめの顔を見て――
忽然と飛び出した狐の耳に慄く。

「! なッ……。
 君、もしや狐の獣人であったのか。それは知らなんだ」

言って、自分の頭を小さく掻く。

「うむ、折々の催しは欠かさぬようにしているでな、そんなに意外だったか?
 はは、ヨキの願い事など大したものではあるまいよ」

喋りながらさらさらと短冊に書き込んで、つばめに見せびらかす。

“健康に長生きしますように”。
若い見た目の割に老けた筆跡と相俟って、完全に年寄りが書いた短冊だ。

「な。ささやかであろう」

松渓つばめ > 「目標?それは例え……あっ――ちゃぁ」
踏み込む前に、自分の頭に思い至って、バツが悪い。
なんせ落第街でもらった呪いだから、ヘタに説明したら怒られそうだ。
「いやいやそーじゃないの。訓練中に変な呪いかけられて……しかも戻し方知らんって言うのよ。
 ――一発しばいておいたけど」
ということにしておいた。獣人じゃないの―

その短冊を見れば、さすがの達筆に息を呑む。
美術教師とは絵筆をペンに持ち替えてもかくあるものか。
きっと筆でも上手いのだろうと容易に想像できた。。
「すげー渋い」総合評価。
「マァ、あまり大きいこと願ってもねー?って所?
 ケッコヨキせんせーっぽいかも」

そして、あたしもーと一枚受け取ると、
「んー、自分の力では何ともできないものが良いだろうし」
と僅か悩んで、壁でガガガッと書いてしまう。素早い。
願いは瞬間的に出てきたものをそのまま、という勢いだ。

「あたしはこうかな?今年は晴れ多めでっ!」
どん。それって結構大きい願い事のような。

ヨキ > 「呪い?それはまた物騒な……ううん、魔術と呪術では仕組みも異なるであろうし。
 戻し方を知らぬ術を人に行使するのは、あまり褒められたものではないな」

狐の耳を見下ろしながら渋い顔。
まるきり頭から直接生えた毛並みをしげしげと見て、やがて顔を引き戻す。

「ふふん。この渋みがヨキの魅力ぞ」

渾身のドヤ顔。

「他にも長生きしてほしい奴がおるのだが、ヨキといい、其奴といい、
 どうにも生き急ぐ性質でな。
 不測の事態で早死にしてしまっては困るのだ」

軽い調子で笑う。
そしてつばめが手早く願いを書き記す様子に感心する。何とも爽快だ。

「ほう……なるほど、晴れ多めか。まったく君らしい。
 それならプールにも気持ちよく入れるであろうしな。
 晴れねば見えぬ天の川のこと、ピッタリの願い事だとも」

ほれ、とつばめに手を伸ばす。

「その短冊、図体のでかいこのヨキが、とっておきの高さに吊るしてやろう」

松渓つばめ > ドヤ顔には一応拍手を返すのが礼儀だと思う。なのでそうした。
そして、誰か長生きして欲しい奴?……女か。
短絡的に考えればそうなる。
「生き急いで早死にしかねないって、どっかで見たことあるような人ね」
ん?
「それあたしか」いいえ違いますね?
「それって女の人?仲いいんだ」
と、女でなくても仲の良いのはいいことだ、という風で。

笹のてっぺん近くまでつけてくれると言われると、
目を輝かせて短冊を渡した。
「ホントっ?センセがつけたら誰よりも上じゃん!」と

ヨキ > 「君も生き急ぐタイプか?おいおい止してくれ。
 教え子にはみんな長生きをして、たくさんのことを成し遂げてもらわなくてはならんのだから」

つばめが早死にしかねないタイプという話には納得したらしい。

「いいや?男だよ。ヨキの友だちだ。
 仲の良いことには変わりないがね」

正しくは“(そのうち自分を殺しに来る)友だち”であるのだが。

「ヨキが特定の女性のことを書いては、他のご婦人方に失礼であろう?」

何故だか妙に偉そうで自慢げだ。
つばめから短冊を恭しく受け取ってみせると、よっ、と腕を伸ばして高い位置の葉を抓み取る。
眼前まで引き下ろして、二人分の短冊を引っ掛けた。

しなる枝ぶりがヨキの頭上でぶらんと揺れて、見る間に自分たちの短冊は誰より高いところにぶら下がった。

「見よ。我々がいちばんであるぞ、つばめ君。
 翼や空を飛ぶ魔術がなくとも、あれだけの高さに付けてやったわ」

叶うといいな、と言い添えて、親指と人差し指でマルを作った。

松渓つばめ > たっかい所にある短冊。てっぺんへ向かう茎の、その先端近く。
自分からは読めない所にあるそれに、大変満足。
「んー、あれはもうお星様しか見れないわね」
正確には、天井まで跳び、貼り付けば短冊を見ることは可能。
だが、逆さ立ちのまま短冊を笹に結びつけるような細かい作業をするのは色々と危ない。

「うわセンセーってそんなモテるの?
 ってかちょっと言い過ぎ!超わかる!」わかる。自分も格好いい男は好きですからね。
しかしその言い様は
「相変わらずヨキセンセーってばあたしを笑わす天才よね」
そして娘はどこぞの授業が難しすぎる教師との関係を知ってかしらずか。
「でも、ヨキせんせーが男の友達とか……二人で何か悪い遊びしてそー」
と半眼で笑った。

「うん、叶う叶うって」
腕を伸ばす。真似するのが彼女流の同意だ。
「ガシーン」と言いながら己のマルをつなげて、鎖を作った。
図らずも「なんか飾りっぽい」と笑う。

ヨキ > 「だろ?直接読んでもらって、いの一番に叶えてもらわなくてはな」

腕組みをしてつばめを見下ろす。
言葉の選びは不遜だが、その調子は至って軽い。

「ヨキは嘘を吐かんよ。
 自ら胸を張っておれば、それだけ人はついてくる。

 一方で、ヒンシュクを買いやすいのも事実だが……
 まあ、背も態度もでかいからな。杭にしてはさぞ打ちやすかろうよ」

気にした風もなく笑う。

「ヨキは君を笑わせようとしているつもりはないんだがな……。
 だが自分で普通にしていて笑ってもらえるならば、ヨキと君は相性が良いってことだ」

悪い遊びしてそう、の評には、同じく半眼を作る。
笑みではなく、考える表情だ。

「悪い遊び。…………、
 考えてみれば、話し込むばかりでろくに遊んだ覚えがないな。
 悪い遊びというよりは、悪巧みの方が近いやも知れん」

繋ぎ合ったマルを、仲間同士の握手のように揺らす。

「ふふ。君は見た目こそ小さいが、心が大きいな。
 見ていてとても気持ちがよい。
 狐の耳が生えたみたいに、呪いでこの指が解けなくなってしまったりしてなあ」

松渓つばめ > 「おぉぅ。でもちょっと羨ましい。モテて悪いことなんて無いもん」ですよねぇ
時々「こう?」と無い胸張ってみるも、ちょっとどこかの水泳が得意なピンクのベストの芸人さんのようで。
「なんだあんまり遊んだり、ってやっぱ悪巧みなんじゃん!」
そう、また楽しそうにウケている。


「んふふ、元々そー簡単に解けていいとか、考えてないよセンセー」
尊敬する師へ、また共に居て楽しい友への感情を示すように、
もし金属だったらチャリチャリと音がなるように鎖のつなぎ目を動かしてみせた。

そしてそろそろ帰らなければ、と手を離す。
「――こんど教えてよモテの秘訣。相性良いんでしょ?ね、センセ」
と、そして「短冊ありがとっ」と、手を振るのでした。

ご案内:「廊下」から松渓つばめさんが去りました。
ヨキ > 「つばめ君ほどの娘なら、ヨキ以上にモテても可笑しくはないと思うんだがな」

嘘は吐かないと明言したその口で、すぐにそんなことを口にする。
明るい笑い声を上げるつばめと、一緒になって笑う。
鋭い牙の並ぶ大きな口で、さながら歳の並んだ子どものように。

「おや、離しがたいのは君も一緒か。お揃いだな」

相手が指を離すのに併せて、ぱ、と手を開く。

「秘訣なあ。言葉にして教えられるようなことがあるかな?
 ふふふ、それでは次の約束であるな。

 もしも雨が降って退屈したなら、ヨキのところへ遊びに来ると良いさ。
 本当なら、晴れても変わらず来て欲しいが」

手を振り返して、軽やかに去るつばめを見送った。
自分もまた荷物を持ち直し、作業へと戻ってゆく。

ご案内:「廊下」からヨキさんが去りました。