2016/07/17 のログ
ヨキ > 不意に知った曲が流れ始めて、徐に目を開く。
しばらく人とも獣ともつかない、茫洋とした眼差しで天井を見上げる。

そうしてじわりと灯が点るかのよう、金色の瞳に理性が戻る。

アラームを設定した時刻には、まだいくらかの猶予があった。

「………………、目が醒めた」

流れているのは、十年も前に人気のあったナンバーだ。
まだテレビも音楽の楽しみも知らぬ頃、よく流れていた曲だった。

ヨキ > 頭をくしゃくしゃと掻いて、目線を机の上へ引き戻す。
肘掛けに腕を置き、腹の前で指先を組み合わせた姿勢のまま、
とろけるような半眼でぼんやりとしている。

ヨキにとって、音楽ほどの毒はない。人間の歌声ならば尚更に。
声の創り出す抑揚は、ヨキの耳と身体を縛り付けて止まない。

のろのろと手を伸ばす。

スマートフォンのアラームだけを解除して、音楽は引き続き流しっぱなしにする。
その音量は随分と小さかったが、ヨキの耳にはひどく明瞭に響き渡っているかのようだった。

ヨキ > 机に突っ伏すようにしながら、スマートフォンの画面に触れて音楽を止める。
それだけの動きが随分と、ヨキにとっては過酷なものだ。

ヨキにしては弛緩に過ぎるとさえ見える体勢で、しばらく深呼吸して意識を整える。

ふっと顔を上げれば、もう元通りのヨキ――ともゆかず、
その目はいつになく眠たげだった。

ぱしん、と音を立てて、自らの頬を叩く。
午後の仕事へ出てゆく前に、水道で顔を洗って目を醒ますこととする。

ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。