2016/07/26 のログ
ご案内:「屋上」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 曇り空の午後。
高さのある教室棟の屋上ともなれば、吹く風は冷たささえ感じられるほどだ。

タイルの真っ直ぐな目地を辿るかのよう、魔術書を手にしたヨキがのらくらと屋上を往復している。
片手に開いた書物には目もくれずぶつぶつと暗誦しているのは、魔術を構成する文法からなる――つまり詠唱だ。

魔力さえあれば、すぐにでもこの屋上一帯に術式が展開されるはずなのだが、
ヨキの唱えるそれは何ら異状を起こす気配さえなく、まるで外国の詩でも諳んじているかのようだった。

ヨキ > 防護に結界、相殺、中和。
借り物の魔術書を手引きに、身を守るための術式は何でも紐解き、学び、理解しようと努めてきた。

だが表立って現れる効果と言えば、ヨキの鼻っ柱を真正面から引っ叩く、反発するような紫電だけだ。
次に感電すれば皮膚が裂け、この頃の腐敗した体組織が噴き出ることは想像に難くない。

「……………………、ううむ」

眉間に皺を浮かべかけて、やめた。

「とりあえず、考えるのは後だ、後」

本を閉じる。
閉じた拍子に、指先から小さくばちんと青白い光が跳ねた。

「おっ、と、とっ……と、」

衝撃で取り落としそうになった本をキャッチしながら、屋上の片隅に設えられたベンチへ向かう。
ヨキの普段使いの、革の鞄が置かれている。