2016/07/31 のログ
ご案内:「廊下」に化野千尋さんが現れました。
化野千尋 > 校内を何日かに分けて見て回った結果、最後にたどり着いたのはここだった。
美術室を含む一帯。美術室沿いにある掲示板には、
所狭しと色々なポスターが並んでいた。

常世島にある博物館や美術館のポスター。
これは、島の外と何らかわりないようで、化野千尋は僅かに目を見開いた。
そして、インターンシップの告知だろうA4のプリント。
「普通」から外れていると思っていた学園に並ぶ普通さに目を丸くする。
存外、普通でないと思っていた学園も実際のところ、こういう部分は
割と「普通」に島の外と同じなのだ。学校であるのだから、当たり前かもしれないが。

化野千尋 > そして、目に入ってきたのはある教諭からのお知らせだった。

その教諭の名前はヨキ、と言うらしい。
金工の授業を受け持ち、学外でも芸術方面で活躍しているのだろう。
その知らせには、"美術館の展示室を借りて初の個展を開催する"――とある。

「へえへえ、先生と作家の二足のわらじですかあ」

もはや定番と化した一人言をぶつぶつと溢しながら、
携帯端末でそのお知らせをパシャリとカメラに収めた。
――が、写真もどうにも苦手らしく、何度もピロリンピロリンと
生徒行き交う廊下で、やかましくシャッター音を鳴らしていた。

化野千尋 > 何度かしつこく撮り直したところで、ようやっとブレずに撮れたらしい。
視線をそのお知らせから外して、ゆっくりと壁一面に視線を向けた。

国立常世島博物館・恒常展の大まかな記載のあるポスター。
学生証の提示でややお安くなるよ、といった内容の煽り文句。
これは、化野千尋が通っていた本土の学校と本土の博物館と変わらなかった。

「なんだか心機一転と転校してきましたけど、
 ぜんぜん全く違う、なんてことはないんですねえ。
 もう少しなんだかんだと違うものかと思ってましたけど、こういう部分も
 なんというか――そう、ふつう、ですねえ……」

残念そうにも、感嘆の声にも聞こえる。
次いで視線を遣ったのは「たちばなクラブ」と大きく書かれたアルバイト募集文。
はて、と近づいてみれば、どうやら委員会街のラウンジのバイト募集だった。

「委員会街、ですかあ。……働くのもありかもしれませんけど、
 いまはあだしのは存分に遊びたいので行くとすればお客さんとしてでしょーか」

ポスターと一対一で会話する少女は、どうにも不審であった。

化野千尋 > それから暫く色々なポスターを見て回った先に、気になる文言を見つけた。

「常世財団公開データベースの利用について……?」

内容は、校内のパソコンやその他のデバイスで常世財団の公開している
《大変容》の報告書を閲覧することが出来ますよ、といった趣旨のものだった。

「……《大変容》。
 ああ、おばあさまがよくしゃべっていたやつですかあ。
 なんだかずーっと皆既日食で、幽霊もたくさん出た、なんてお話でしたか。
 はなしはんぶんで聞いておりましたが、調べているひともいるのですねえ」

そのお知らせもついでにピロリンとカメラに収めた。

「ようし、時間ができたらちょっとだけしらべてみましょう。
 あだしのの好奇心がたいへんにくすぐられました」

化野千尋 > 写真を撮っている最中に、初日に声を掛けてくれた
ショートカットの少女にまた声を掛けられた。

「あれ、化野さんまたガッコ? 呼び出し?」
「いいええ、違いますよう。ちょっと探検です」
「探検かあ。このガッコ広いから中々楽しめるよね」
「はい! それはもう、とってもとっても」
「もしかして今から暇? ユリコたちとパフェ食べに行こう、って話してるけど」
「パフェですか! もしかして、あだしのもいってもよろしかったり、」

「当たり前じゃん!」と快活な声が返った。
黒いセーラー服の裾を揺らして、ぱたぱたとその場を後にした。

ご案内:「廊下」から化野千尋さんが去りました。