2016/09/30 のログ
烏丸秀 > 「あ、いたいた」

ひょっこり教室に入ってきた生徒。
烏丸は、目当ての人物を見つけると、嬉しそうに近寄る。

「や、千尋ちゃん」

特に何をしに来たわけでもないが。
一度知り合った女の子には、きちんと粉をかける。
ナンパの基本である。

化野千尋 > 「わ、からすまさん! 
 こないだぶりですねえ。お元気ですか?」

開きかけた本を閉じる。
「黒魔術基礎概論」。異世界のものと関わりの深かった魔術師の著書であった。

「もしかして忘れ物でも?
 あだしのでよければ、一緒に探しますよう。」

本をドサドサと積み上げて、きょろきょろと周りを見回した。

烏丸秀 > 「忘れ物じゃないよ」

へらへらと笑いつつ、近づく。
まったく、無防備なことこの上ない。

「ほら、ボクって特に特技も無い一般学生だからさぁ。
ちょくちょく顔出さないと、忘れられちゃうと思って」

などと言いながら、彼女の近くへと座る。
魔術関係の本を見ているようだが、まぁ烏丸には関係無い物だ。
なにせ、魔術の才能などからっきしである。

化野千尋 > 「そんなことないですよう。
 あだしのは記憶力には自信がありますから!

 忘れ物がないのなら、それはそれでよろしーでしょう。
 といっても、からすまさんは忘れ物、しなさそうですけどねえ。」

ぐぐ、っと腕捲りをして自信満々を示すポーズ。
任せてください、と言わんばかりにゆるりと微笑んだ。

「からすまさん、最近おすすめのおもしろいこととかってありますかあ。
 噂話でも、からすまさんの周りのおもしろいひとの話でも。
 おもしろい現実のお話、あだしのは興味津々でして。」

おとぎ話をねだる子供のように、純粋に彼の顔を覗き込む。

烏丸秀 > 「それなら嬉しいなぁ。
ボク、忘れられるのが一番きついんだよねぇ」

ふふっと笑いながら言う。
事実、忘れられるとすごく凹むのだ。

「ん、最近面白い事?
そうだねぇ、ボク、人生全力で楽しいし。
おもしろい事ならいくらでもあるけど」

何がいいかなー、と指折りして数えつつ。
とりあえず、知り合いの性悪軍師の話でもしようか。

化野千尋 > 「そうですね――」

思わせぶりな間を作って。
特に何があるわけでもないのだが、少ししてふんわりと笑う。

「この学校の中でのお話に限定させてもらっちゃいましょうか。
 いくらでもあるものの中から、もすこしだけあだしのの傍にあるもので。
 どの先生とどの先生がいい雰囲気だ、とか。
 あの委員会が最近大変そうだ、とか。なんでもよろしーので!」

机に肘をついて、楽しげに笑った。友達との放課後の談笑タイム。
実に普通の学生らしいシチュエーションに、化野は一人大満足の様子であった。

烏丸秀 > 「あー、この学校限定ねぇ」

うーんと考えつつ。

「あ、そうそう。
ある授業で新記録を打ち立てたよ。
ほら、なんと得点、12点」

先生からの評価を見せる。
まごう事なき最低点数である。

「いやぁ、先生の課題はこなしたんだけどね?」

化野千尋 > む、とやや不機嫌そうな表情を作ってみせる。

「からすまさんって、勉強できないんですか……?」

てっきり、勉強は得意なのかと――と、言葉は続く。
言ってしまえば、あまり喜ばしくないギャップに困惑する。
12点。一体何をどうやったらそんな惨状になってしまうのか。

「勉強が出来ないのは、よろしーことでもおもしろいことでもないですよう。
 学生の本分は勉強ですから。しっかり学ばないと社会に出て困りま――……」

こく、と首を傾げた。
社会で順風満帆に物事を為す烏丸に言う言葉として正しいのか、という疑問を感じていた。

「困りますよう、きっと。」

烏丸秀 > 「うーん、勉強というか」

見せた評価は特別授業のもの。
魔術による諜報の課題である。

「まぁ、ボクはほら、先生からの評価は良くないからねぇ。
でも、この点数でも先生の講評は『見所あり』なんだよねぇ」

変な授業で有名だが、最低点数でこの評価も珍しい。
ま、授業で評価しきれる部分ではないという事だろう。

「千尋ちゃんは、勉強できるの?」

化野千尋 > 「うむむ……ちょっと見せていただいても構いませんかあ。
 『見所あり』、なんですよねえ。

 ……! あ、これ。さては普通の問題じゃないですねえ。
 なんだか女の子たちが話していたの、聞いたような気もします。」

記憶力には自信がある、というのはどこにいってしまったのやら。
じいっとその評価の全体を見て、見覚えのある名前の教師が担当する教科であることに気付く。

「この授業って、難しいって評判のやつじゃないですか。
 それに、『見所あり』、なんてなかなか拝めないものだと思うのですが。
 ……魔術はからきしなのに授業を取ってる辺り、からすまさんは変な人ですよねえ。」

ううむ、と考えこむようにして顎に手を当て。
次いだ質問には、あはは、と薄い笑いが零れた。

「得意でもなければ、苦手でもないんですけれど。
 普通よりは出来ないほうにはいるのではないでしょーか。
 なので、こうやって居残りで勉強しないといけないんですよ。」

烏丸秀 > 「んー、魔術はからっきしなんだけどね」

くくっと笑いながら言う。
まぁ、確かにからっきしではある。

「でもね、魔術『でしか』できない事って、少ないじゃない。
ちょっと工夫すれば、魔術じゃなくても同じような事ができたりするもんだよ」

そう、少しの工夫。
それが、烏丸の唯一の武器である。

「ん、そう?
結構勉強できそうだけどなぁ、千尋ちゃん。
今度のテスト前は期待してたんだけど」

けらけらと笑いながらからかうように。

化野千尋 > 「たしかに、」

ぽん、と小さく手を打つ。
「そうですねえ。」と納得したように何度か頷いた。

「例えば火の元素魔術が使えなくても、あだしのもマッチさえ持っていれば、
 魔術と同じようなことができる、ってことでしょーか。
 それでも、どうしても魔術『でしか』できないことをしようと思うと、
 難しいのかもしれませんけれども。」

工夫、工夫、と。繰り返し口遊ぶ。
そして、いいことを思いついた子供のように目を輝かせる。

「風の魔術が使えなくても、扇風機がある、みたいな!」

笑い声には、苦笑を返す。
生憎と、化野は勉強が得意でなかった。
得意でない、というのも、ひとつのことに集中していられないのだ。
興味が二転三転、あっちへいったりこっちへいったりしてしまう。勉強には向かない。

「ところで、からすまさんはなんでその魔術の授業をお受けに?
 魔術『でしか』出来ないことを、しようとしてらっしゃったのでしょーか。」

烏丸秀 > 「あはは、扇風機はいいねぇ。
でもそう、そういう事。魔術って大層に言うけど、それでしかできない事って、意外と少ないんだよね」

うんうんと烏丸は頷く。
やはり、彼女は頭は悪くないようだ。

「ん、いや、何となく興味がね。
ほら、諜報の技術でしょ?
ちょっと気になる子の事とか、調べられればなーって」

化野千尋 > 「言われてみたら、確かに納得がゆきますねえ。
 魔術『でしか』出来ないこと。……なるほど、異能『でしか』できないことも少ない。
 何らかの行動を、超常で行うか。それとも別の方法でやるか。
 ……実は全く、超常も特別なものではないのかもしれませんねえ。」

ノートの隅に、小さくメモを取る。
化野にとっては、かなり参考になる意見だったらしい。

「諜報で気になる子のことを調べるっていうのも、中々に中々ですねえ。
 もっと直接聞いたりじゃだめなんでしょーか。
 それとももっとこそこそしないといけないよなことを知りたい、とかですかねえ。
 よくないですよう。バレたら嫌われちゃうかもしれませんし」

ふふ、と小さく笑う。
なんだか行動に対しての理由が、イメージしていた彼とは違っていて。
どうにも可愛らしく見えてしまうのも仕方がない。

烏丸秀 > 「まぁ、その結果に至るまでの過程が大分違うけどね。
でもまぁ、別に魔術や超常だけで出来る事ばかりではない、って事だね」

よいしょと立ち上がる。
そろそろ時間だ。

「うーん、じゃあ千尋ちゃんの事を調べるのはやめておくよ。
素直に色々と聞く事にするからさ」

くすくすと笑い、手を振る。
そしてそのまま教室を出る。

ご案内:「教室」から烏丸秀さんが去りました。
化野千尋 > 「ふふ。相変わらずお上手ですねえ。」

口元に手を当てて、穏やかに笑ってみせる。
彼の本気か本気でないのかわからない言葉は、いまいち本心が掴みづらい。
きっと、本人にそれを言えばなんてことのないように、「本心に決まってるだろ?」とキザに返すだろう。

「調べるのは構いませんけれども、嫌いにならないでくださいねえ。
 聞いてくれれば、あだしのに応えられる範囲でなら答えますから。」

ひらひらと手を振り返す。
目の前に積み上げられた本に、また手を伸ばした。

ご案内:「教室」から化野千尋さんが去りました。