2016/10/27 のログ
美澄 蘭 > 今日は、ピアノの先生に自主練習のチェックをしてもらう日だったのだ。
チェックしてもらって、ミスが減ったことは褒めてもらったのだが…

『雑音のない演奏を目指すのは良いけど、甘いところはもっと柔らかく弾かないと音楽の特徴が立たないわよ?』

先生の開口一番がこれである。正直、全く凹まないと言えば嘘にはなった。

『自分の録音チェックも良いけど、たまにはお手本もきちんと聴いてね』

と言って、いくつかの音源も教えてもらった。その一部は、蘭が既に持っている音源だった。

(…確かに最近、参考音源をあんまりしっかり聴けてなかったかも)

気分転換の魔術訓練や「瞑想」など、気分の切り替えをしていないわけではないのでさほど精神的に追い詰められてはいないつもりだったが…まだまだ、視野が狭かったらしい。
音楽の方は気をつけているからまだ良いが、勉強の方に支障が出ていないか、うっかり心配になりもした。
…が、課題自体はこなしはしているので、その見直しは後だ。
勉強は、帰ってから家でも出来る。今日は、この時間に録音などのチェックをしてまたピアノの練習に行くつもりである。

ブリーフケースから楽譜を取り出して、端末を操作。
参考音源でも、特に気に入りのものを再生しようとする。

美澄 蘭 > 音源を呼び出し、イヤホンをセットして再生開始。

外側から見れば、シャープペンシルを手に楽譜(表紙には『Danse Macabre』と書かれている)を開き、難しそうな顔をしながら何かを聴いている少女。
彼女を知る者には、蘭らしくない不遜さとも映りかねない、微妙な表情だ。
時折、首を横に傾げたりしているのは、何か思うところがあるのかもしれない。

美澄 蘭 > 「…なるほどね、次は…」

周囲を気にしていないのだろうか、そんな呟きを零しながら再び端末を弄り始める。
そして、音源を呼び出して聴き…たまにメモを取る、ということを何度か繰り返していた。

「………うぅん、加減が難しいわね………」

一区切りついたのだろう、少し疲れた息をつくと、少しだけ温度の下がったミルクティーのペットボトルに手を伸ばし、口を付けた。

美澄 蘭 > 「楽譜の指示に従う」。それ自体は当然のことだ。
しかし、「楽譜の指示に従」いながら、どこまで自分の好きな音を追求していいのか。
どこまでなら、「楽譜の指示に従」ったと看做されるのか。
そこには、専門家によるある程度の合意はあるものの、明確な答えはないのだ。

(…少なくとも、「足りない」と思われたから指導の開口一番が「ああ」なったわけだけど…)

どこか納得出来ないものを感じ、そしてそれを目元で表現しながら、楽譜を開きつつペットボトルのミルクティをごくごくと飲む。

美澄 蘭 > 「………よし」

飲みきったペットボトルを、席を立って自販機の傍らのゴミ箱に近づいてから放り込む。
それから、テーブルの上に広げた楽譜を畳んでブリーフケースに押し込み、シャープペンシルもペンケースにしまい直してブリーフケースに突っ込んだ。

(…とりあえず、手を動かしてみましょう。
私が納得出来る甘い表現…ちゃんと、探せるはず)

ブリーフケースを抱えて、蘭はピアノの練習に向かうため席を立った。

ご案内:「ロビー」から美澄 蘭さんが去りました。