2017/05/03 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 連休中の職員室。
教師と委員会の学生がちらほらと仕事をしていることを除けば、平日に比べてぐっと静かだ。

ヨキは自席でノートパソコンに向かい、湯呑の茶を片手に普段どおりの仕事に励んでいた。

「これでよし……と」

学生の自主性を重んじる常世島において、教師はその基盤を担っている。
教え子らが作品の制作に集中できるよう、ヨキはその環境づくりに最も心血を注ぐ。

未だ初夏の兆しさえ見えない春の午後、パソコンのディスプレイに映し出されているのは秋のスケジュールだった。

「ふう」

椅子の背凭れに身を預け、眼鏡を外す。
集中していた目を指で抑えて、一息ついた。

ヨキ > 裸眼のまま頬杖を突く。
さわやかな風が吹き込む窓の向こう、青空をぼんやりと見遣る。

生まれが犬であったヨキは、人間になっても近視だ。
たまに矯正を緩めて遠くを見るのは、それなりの気分転換になった。

「………………、」

いい陽気だ。
遠くのグラウンドから、学生らの明るい声がする。
暖かい空気が室内に満ちている……。

一仕事終えたあとの心地よさに、目元が穏やかにとろりと落ちてくる。

ヨキ > ほんのわずかな時間、夢ともつかない夢を見た。
次に瞼を開いたとき、心なしか目が冴えていた。
休憩するなら、うつらうつらと舟を漕ぐ程度が丁度いいのだ。

「――くぁ、」

大あくび。
食事といい、睡眠といい、ヨキは享受に我慢をしない。
摂りたいだけ摂ったらそれで終わり、とひどくさっぱりしている。

急須に残る冷めた茶を飲み干して、新しく淹れ直そうと立ち上がる。
長時間座り放しだったらしく、腰を左右に捻って解す。

ヨキ > 急須に湯を注ぐ。
ヨキの脳裏には、秋のスケジュールを組み立てると同時、このひと月の予定も組み上げられてゆく。

ヨキのブラックリスト――無論のこと、文字に記されたものではない――には、
可及的速やかに始末をしなければならない違法部活の存在があった。

大人しく落第街を根城にしていればよかったものを、表の街へ手を伸ばそうと目論んだのが運の尽きだ。
“正義の番人”に、休む暇などない。

「……やれやれ」

教師として人を育てるためには、土づくりが必要だ。
取り除き、追い払い、仕留めて消し去り、潰して均し、固めて清め、秩序を盤石のものとする。

湯呑に注いだ緑茶から、のどかで温かい香りが立ち上った。