2017/06/18 のログ
ご案内:「屋上」に鈴ヶ森綾さんが現れました。
鈴ヶ森綾 > 空の色が赤く染まった夕暮れ時の校舎屋上
少し湿り気のある風が吹き付けるそこへ女生徒が一人現れる。

今しがたくぐった扉を静かに閉めると、緩慢な動作で周囲を見やる。
幸か不幸か、そこに誰の姿も認められないと小さく靴音を響かせながらフェンス際まで歩いて行き、遠くに見える赤く燃えるような山並みをじっと見つめた。

鈴ヶ森綾 > 今の自分が産まれた日、もうぼんやりとしか思い出せないが、あの日もこんな夕焼けだった気がする。
その日から五百年以上経っていてもその美しさは何一つ変わらず、
きっと今から五百年後も、変わらず美しくあり続けるのだろう。

「……はぁ。」

何事か、感想めいた言葉を呟こうとしたのだろうか。
しかし口から漏れたのはため息に似た吐息だけだった。

その表情はつい先日、路地裏で人知れず凄惨な事件を引き起こした怪物のそれと同一人物とは思えぬ憂いを帯びたもので。

鈴ヶ森綾 > それからどのくらい時間が経っただろうか。
空の赤色は次第に西へと遠ざかり、その反対側からは夜の闇が迫ってくる。

沈みかけの太陽の残照を横目に踵を返すと、ここへ訪れた時と同じようにゆったりした足取りで歩きだす。
その背に何かが呼びかけるように、ごうと強く風が吹き付けた。

長い黒髪が揺れ、女は一瞬足を止めたが、そのまま振り返る事無く扉に手をかけ、屋上を後にして。

ご案内:「屋上」から鈴ヶ森綾さんが去りました。