2017/07/08 のログ
ご案内:「ロビー」にセシルさんが現れました。
■セシル > 放課後。
試験が近いとはいえ、アイスコーヒーのボトル缶をおともにがりがりと勉強している風紀委員の制服姿は、それなりに悪目立ちした。
…何故その上で教室棟ロビーで勉強しているかといえば、職員室が近くて、分からないことが出来た時に聞きに行くのが楽だからだ。自分で調べてなんて労力、出来るだけ省力化したい。
「………。」
以前、寮のロビーで眠りこけるという失態をやらかしてしまい、大事をとって警邏の業務を減らした。
その分の結果を効率良く出さねばならないという責任感で、セシルはちょっと切羽詰まっているのである。
■セシル > 「えぇっと、この公式は…」
とはいえ、流石にテキストの基本的な記載内容や板書で重要だとなった部分を確認もせずに堂々と聞きに行ったら心証が悪いだろうということで、軽く確認はする。
今のところ、順調というほどでもないが聞きに行かなければいけない詰まりは発生していない。
出身世界の文明の問題もあり、セシルは理科に属する科目が得意ではない。
去年で基礎部分はある程度何とかなったのだが、何とかなりきらなかった化学だけは、今年も付き合わされる羽目になっていた。
「………。」
彫りの深い顔立ち、その眉間に皺を寄せながら、試験対策として教師から提供された計算問題の演習をこなしている。
■セシル > 暗記も、計算も、理科の基礎くらいならば何とか出来る程度には苦手ではない。
…セシルが化学に手こずっているのは、純粋に「文明の違い」により、化学という学問の考え方に馴染むのに苦労したからだ。
(…手順だけならば、大分馴染んだと思いたいが)
去年に比べれば大分スムーズにペンを動かすようになった手だが、深い意味での「理解」に届いたかと言われれば、自信は希薄だ。
■セシル > (しかし…どうしたものかな)
この世界で呼吸をし、この世界のあり方を理解するにしたがって、望郷の念が薄れつつある自分を、セシルは自覚していた。
…しかし、その次にやってきたのは、そのことに関する罪悪感だ。
母親のこともあるし、一緒に実習に臨んでいた同期がどうなったのかも気がかりなのに、この世界に馴染みきって、適応しきるつもりで…いいのだろうかと。
(…いかんな、集中せねば)
アイスコーヒーのボトル缶に手を伸ばし、その苦みをぐっと飲み込んで、問題演習に戻ろうとして…
「………あ」
別の解法の演習に、ちょうどぶつかった。
■セシル > 「…えーっと…」
それなりに順調に進んでいたらしく、演習は応用問題に差し掛かろうとしていた。
………つまりは、考え方の理解が浅いため、お手上げである。
「………先生に聞きに行くか」
セシルは演習教材とペン、それと筆記用具を手にし、職員室へと向かって行った。
ご案内:「ロビー」からセシルさんが去りました。