2017/08/14 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 夏休み中の職員室。
普段より静かな室内で、バニラ味のアイスバーを齧りながら独り端末のキーボードを叩くヨキの姿がある。

島外へ帰省する者、島内で部活に精を出す者、寄る辺なく島で夏休みをやり過ごす者――各々事情はさまざまで、学内も全くの無人ではない。
ヨキはと言えば、集中して仕事に打ち込めるこの時期を選んでわざわざ出勤しているという訳だった。

「……………………、」

薄く大きなディスプレイに映し出されているのは、「常世大ホール」の図面である。
毎年秋に行われている学園祭――「常世祭」に向けて、作品展示の計画を立てているのだ。

ヨキ > 異能や魔術を用いた、ないしは超常の能力者が手掛けた作品の展示には、常に細心の注意が払われなければならない。
展示される環境や鑑賞者、あるいは作品同士の干渉によっては、いかなる不測の事態が起こらないとも限らない。
指導者たるヨキには、参加する学生らの特質を把握し、適切な展示を行う義務があるのだ。

真剣な顔で画面を見据えながら、片手で書類を繰り、もう片手でアイスを齧る。

「……………。む、」

最後の一口を舐め取ったアイスの棒に、今時めっきり少なくなった「あたり」の焼き印が捺されていた。

「……………………!」

勇んで室内を振り返る。
当然ながら、誰も居ない。

ヨキ > 普段なら誰かしら目の合う者が居て(ヨキの図体が目立つだけなのだが)、よかったですね、とかおめでとうございます、と一言掛けてくれるところである。
廊下の遠く向こうにほんの小さな声や楽器の音が聴こえてくる以外、今のところ職員室に居るのはヨキただ独りだった。

心なしか残念そうな顔をして、作業中の画面へ顔を戻す――程よく煮詰まってきたところで、一旦休憩を取ることにした。

自席を立ち、備え付けのポットで沸かしていた湯を使って、コーヒーを淹れる。
とっておきのお取り寄せで手に入れた豆の香ばしい匂いが、整った空調に乗って室内に広がってゆく。

ヨキ > コーヒーポットとマグカップを手にデスクへ戻ってくると、アイスの当たり棒を隅へと寄せて、持ってきた一式を机上に置く。
休憩と言いながらも、考える頭までは緩めないのがヨキの性格だった。

コーヒーを啜って、チェアの背凭れに体重を預ける。

「…………、うん。美味い」

そのうち職員室にも同僚か学生か、誰かがやって来るに違いない。
無人の隙に、ほっと独り言を漏らした。

ご案内:「職員室」に藤巳 陽菜さんが現れました。
ヨキ > 懸案事項のいくつかは、異能そのものを研究領域としている教師に意見を仰ぐべきだと考えていた。
ヨキはあくまで異能芸術に造詣の深い教師であって、異能に直接対処するだけの技術や知識を持ち合わせている訳ではない。

一杯目のコーヒーを飲み終え、二杯目を注ぐ。
職員室の出入口に大きな背中を向けた姿は、静かな室内ではさぞ目立つだろう。

藤巳 陽菜 > 「…失礼します。」

職員室に一人の生徒が顔を出す。
それから少し遅れて入ってくるのは長い蛇の尻尾…。

不安そうな様子で中を見る、どうやら彼女の目当ての教師は見あたらなかったらしい。
…開けて入った扉の中で少し悩んで、立ちすくみ、…何を思ったか取り合えず扉を閉める事にして。

また、しばらく間を空けて…

「あ、あの!ミザリー先生はおられますか?」

教師、一人しかいない職員室でそんな風に声をあげる。

ヨキ > ややあって、職員室を訪れた陽菜を振り返る。
日本人のように見えてどことなく彫りの深い、異邦人らしいヨキの顔がぱちぱちと瞬きした。

「――おや。こんにちは」

彼女が尋ねて来たらしい教師の名を聞くや、頭を掻いて立ち上がる。

「ミザリー……ああ、魔女の。
 彼女なら、今日は姿を見ていないよ。このところ夏休みの間は、休みを取っている教師も多くてな」

長身がミザリーの席を一瞥して、陽菜へ笑い掛ける。
獣人の学生も見慣れているらしく、相手の姿を気にした風もない。

「彼女に用事があって来たのかね?
 暑い中、ご苦労だったな。少し休憩してゆきたまえ。

 麦茶と、好ければアイスもある。
 先ほどヨキが当たりを引き当ててしまったのでな、ハズレやも知らんが」

藤巳 陽菜 > 「あ、はいっ、こんにちは…えっと…。」

…見たことはあるけど関わりの無い教師。
今までみた人間?の人の中では一番身長が高いのではないだろうか?

「で、ですよね…どこ、行ったのかしら?
 それじゃあ、すいません失礼しま…
 えっ、じゃあ、はい…。」

見れば分かる質問に帰って来たのは当たり前の答え。
よし、帰ろう!と一度蜷局を巻くようにして来た道を戻ろうとすると追加で掛けられた声。
このまま、帰ろうかとも思ったがアイスはともかく喉は乾いてしまっていて…。

「じゃあ、その…麦茶をいただいても良いですか?」

そういって、その教師の近くに寄る。
…既に生まれついてのラミアと区別のつかないほどに自然な動き。
慣れなどではなく恐らくこれは異能の作用によるものだろう。

ヨキ > 既に残り少なくなっていたコーヒーを飲み干して、机上をざっと片付ける。

「あはは。急ぎでなければ、で構わんよ。
 朝からほとんど一人で仕事をしていたから、ちょうど話し相手でも欲しいと思っていたところだ」

麦茶を求められて、壁際の棚からガラスのコップを二人分、取り出してくる。
冷蔵庫で冷やしていた麦茶を注ぐと、氷がからりと融ける小気味よい音がした。

「さてと……普通の椅子では、ともすれば座りにくかろう。
 応接用のソファが空いているから、そちらの方が座りやすいかな?」

職員室の隅に置かれたローテーブルと、ゆったりとした広さのあるソファを示す。

「さまざまな事情に配慮して設計された学園ではあるが、ヨキには気付かぬところで、君や学生らには不便を掛けているところもあろう……おっと。
 そういえば、互いに知らぬ顔であったな。

 名をヨキというよ。長いこと、ここで美術……金属を使った工芸を教えている」

君は?と尋ねて、首を傾ぐ。

藤巳 陽菜 > 「あっ大丈夫です。
 今日ここに来たのもついでにみたいなものですから。」

図書室での調べ物のついでに。
久しぶりに顔を見せておこうと思ったのだけどいなかった。
…まさか、里帰りとかではないだろうし。

「大丈夫ですよ。
 むしろ、こっちのほうが慣れてますし。」

普通の一人用の椅子の背もたれが側面に来るようにして深めに座る。
前から尻尾を出して、椅子ごと蜷局を巻くようにすれば安定して座る事が出来る。
…他のヒトがやってるのを見て覚えた座り方だ。

「いえ、本土の方と比べると何をするのにもかなり使いやすいですよ。
 この間、実家に帰った時も何もかも狭くて凄く不便でしたし。」

ラミア型の異邦人は比較的似た性質の生徒が多くいる為配慮された所も多い。
学校内であるならば大抵、困る事はない。

「えっと、藤巳陽菜。一年生です。
 こう見えて4月まで普通の人間だったんですよ。 」

美術の先生、それは関わる機会もなくても仕方がないなと納得する。