2018/01/30 のログ
鈴ヶ森 綾 > そうして彼女が傍を離れた間に、流れた涙をハンカチで拭い取る。
目元が少し赤くなった以外は、それで元通りだ。
枕元に置いておいた眼鏡を掛け直し、再度上体を起こして戻ってきた彼女からコップを受け取る。
今度は問題なく、しっかりと自分の身体を支える事ができた。

「ありがとう。…なんだか、貴方にはみっともない所ばかり見せている気がするわ。」

自嘲気味に力なく笑ってコップを傾け、喉を鳴らしてその中身をあっという間に飲み干す。
自覚は薄かったが、思った以上に喉は乾いていたらしい。

「ふぅ………あれは、そう、大きな木と、神社…だった気がする。」

水を飲んで一息つくと、唐突にそんな事を口にする。
どうやら先程聞かれた事への返答らしく、脳裏に微かに残った夢の断片がそんな光景だったようだ。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 水を運んできたときには、意識もはっきりしていて、
会話のやり取りも、自身の身体を起こすことも問題なくできるようだった。
その様子に一安心する反面、赤く泣きはらした目元を見ると、どこか不安も感じる。

「いえ、私は気にしないと言うか、その……誰にも言いませんから」

みっともないと自嘲して話す彼女にフォローを入れようとするが、
いまいちうまい言葉が見つからなかった。

「大きな木と、神社……ですか。」

夢の話をしてくれる彼女の言葉を、反復する。
この島にも神社はあるが、行ったことが無い。
彼女が見た夢が、いったい何を意味するのか、
様々な憶測が脳裏に浮かぶが、それを言葉にする勇気はなかった>

鈴ヶ森 綾 > 「ふふっ、ありがとう…。」

変に気を使われてしまった。
その事自体より、そうされた自分自身に対する笑いがこみ上げてくる。

「でもね…正直に言うと、それも良いと思えてしまうの。
 みっともない、情けない所を見られるのも、貴方だったら別に良いかって。」

信じたい、寮の部屋でそう言った時の気持ちは今でも変わっていない。
本性を全て見せられる程に自分は強くないが、それでも自分の事を知ってもらうというのは心地よいものだ。
困惑する彼女の手を取り、指を絡めるようにして握る。それは邪な気持ちの交じらない、純粋なものだった。

「そんなに難しい顔をしないで。夢はただの夢よ。私が思い出したい事と、なんの関係も無いかもしれない。
 それに…一人で無理に過去を思い出そうとするより、貴方とお茶でも飲みながら話をした方が、今の自分を知るのには良いのかも。」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「えっと、なんて言うか、改まってそう言われると恥ずかしいですね」

彼女が自身を私にさらけ出してくれているということを、
改めて言葉にされるとなんとも言えない気恥ずかしさがこみ上げてくる。
そうやって指を絡められると、ドキッとして心臓が早鐘を打った。
邪な気持ちや、下心なんて無いと言うのに、何を考えているのだ。
そう自分を心の内で𠮟責するが、鼓動はテンポを落としてくれない。

「ただの夢だったとしても、何か意味を持つかもしれません。
 私で良ければその…話してください。綾さんのお話も聞きたいですし。
 そうですね、どうせお話しするなら楽しい方がいいですもんね」

一時でも、彼女の居場所になる。そう言ったのは私の方だ。
そしてこうやって話をしてくれているのは、ある意味で信用してくれているからなのだろう。
それが伝わってくると、それに応えるように自然と指を絡めた手に力が入って>

鈴ヶ森 綾 > 「あら、ラウラは私の居場所になってくれるのでしょう?
 これから私の事をもっと色々知ってもらうつもりなのよ。これぐらいで動揺されていたら困るわ。」

そういう反応を返されると、すぐに悪戯心が湧いてしまうのは自分の悪癖だろう。
絡めた指を一旦解くと手の甲をするりと撫であげ、そのまま今度は指と指の間を人差し指が擽るように這う。
先程までの顔色の悪さはどこへやら、愉快そうに指芸に励んだ。

「…そうね。何か思い出せたら、その時はちゃんと貴方にも伝えるつもりよ。
 こうして心配をかけたわけだし、そのお詫び代わり。」

おふざけは一旦やめて、少しまじめな口調に戻すとこちらからも手を握り返す。
そこでちらりと壁の時計に目をやって時刻を確認する。
今は丁度休み時間だ。

「今日この後まだ授業はあるの?良ければ、この間のカフェでお茶でもどうかしら。」

そう尋ねる本人はと言えば、まだ一つ受けなければならないものが残っているのだが、
そんな事は彼女と一緒に過ごす事に比べればどうでも良いようだ。
サボる気満々の邪な誘いをかけるのだった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「も、もう……そうやってすぐ弄ぶんですから。
 あまり度が過ぎると……それ!」

こちらが困った顔をすると、すぐに調子に乗る。
まるで机の上で球を転がして遊ぶように彼女の指がこちらの指を這うと、
ワザとらしく怒ったように振る舞う。
そしてぐっと顔を寄せると、彼女の頬に軽くキスをした。

「私だって綾さんに負けるようなタマじゃないですよ!
 ……でも、すごく嬉しかったりもするんです。
 いつの間にか呼び捨てしてくれているところとか。
 
 お詫びなんてそんな。居場所になるって言ったんですから、
 存分に甘えていいんですよ?」

真面目そうにする彼女を尻目にちょっと悪戯っぽく言って、また彼女を抱きしめる。
が、本心を言えば相当勇気を出した行動だった。
仕返しのつもりでキスをしたわけだが、
頬の紅潮を見られたくなくて、抱き寄せたまま顔を見せようとしない。

「この後ですか?
 うーん、今は授業よりも一緒にお茶したい気分ですね」

そんな返事をすれば、お互い悪だくみをする子供のように笑うのだろう>

鈴ヶ森 綾 > 「あまり度が過ぎると、どうなるのかし…あら、これは一本取られたわね。」

言いかけた言葉は頬に触れる柔らかい感触に一旦途切れる。
思わぬ反撃に面食らったのか、目を丸くする。
しかしその表情はすぐに指を弄んでいた時より愉快そうなものへ変わり、にんまりと口元に笑みを浮かべていた。

「そうみたいね。今日のところは勝ちを譲っておくわ。
 …今日はもう十分甘えたわ。これ以上は癖になってしまうから、また今度ね。」

そんな相手の心情を察してかどうかは定かでないが、
勝ちを譲るという言葉通り、相手の顔を覗き見たりはせず、そのまま抱き合うように相手の背に手を回して、先程そうして貰ったのを真似るように背中をさすった。

「それじゃあ、鞄を回収して門のところで待ち合わせにしましょうか。」

暫しの抱擁の後、ベッドから抜け出て身支度を整えると、一旦相手と別れて自分の教室へと向かった。

ご案内:「保健室」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
ご案内:「保健室」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。