2018/05/24 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 夕刻の職員室。
残務処理を終えた職員や学生がちらほらと退出していく中、ヨキは独りレポートの採点を行っていた。
顔見知りの朗らかな挨拶を見送ると、さて、と顔を机へと引き戻す。

「あともう少し……。うむ、なかなか読み応えがある」

まるで面白い小説でも読み進めるかのように、じっくりと目を通してゆく。
今回提出を受けたのは入学して間もない一年生たちだが、論点はなかなか真面目だ。
たとえ知識が及ばずとも、掘り下げようとする熱意をヨキは高く評価した。

開け放した窓から、程よく冷めた風が入り込んでくる。

ヨキ > 赤色のボールペンを取って、余白に点数と寸評をすらすらと書き込む。
まだ常世学園へやってきて間もない若者へ向けた、視点の変え方と定め方のアドバイスだ。

答えを書かずに導く言葉の選びと丁寧な筆跡、そして紙に向かうヨキの面持ちは、
いずれも我が子へ向けたもののように優しい。

夢中になって書いていると――

「……くしッ」

知らず知らずのうちに身体が冷えていたらしく、小さくくしゃみをした。

ヨキ > 「いかんいかん。教師が風邪を引いてはならぬ」

切りのよいところまで作業を終わらせてから、全開にしていた窓をそろそろと閉めた。
大きく心地よさそうな伸びをして、備え付けのポットで仕事終わりのコーヒーを淹れる。
インスタントの買い置きだが、味は悪くない。

季節柄日が長くなったとはいえ、外はそろそろ暗がりに沈みつつある。
静まり返った職員室の自席に座り直し、愛用のマグカップを片手に長い息を吐き出した。

ヨキ > 半分ほどまで中身の減ったコーヒーを机に置くと、ついでに眼鏡を外す。
椅子の背凭れに後頭部を預けて、目尻の紅を擦らないように目頭を柔く揉んだ。

人間にしたって未だタフだが、それでも疲労を感じるようにはなった。
仕事に打ち込んだあと。他人と細やかな対話を交わしたあと。長時間のゲームのあと。
裏通りで違反学生の後始末を終えたあと……。

呼吸に合わせて胸を緩やかに上下させながら、しばし目を閉じる。
ヨキには珍しく、独りきりならではの、まるきり油断しきった顔だった。

ヨキ > 少しして、眠りに落ちる前に目を開く。
何事も、一区切りつくのは気持ちのよいものだ。

机の上を手早く片付けると、施錠を確認して職員室を後にする。
ヒールの音が、規則正しいリズムを刻んで遠ざかっていった。

ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。