2015/06/08 のログ
ご案内:「第一部室棟」にエカチェリーナさんが現れました。
■エカチェリーナ > がちゃり、とドアを開けて部室に入れば、そこには誰も居なかった。
「珍しいこともあるものね、まぁその方が面倒はないけれど。」
ぱたん、と後ろ手にドアを閉めると実験器具の並んでいる研究のセクションへ向けて歩きだした。今日は製造のセクションに用はない。
■エカチェリーナ > 常世島において部活は同好会的な側面だけではなく、企業のような一面を持つ。素材の開発から機械類の製造、それらのメンテナンスまで手がける工学部は全体的に見て忙しい部活だろう。
「それが今日は誰も居ない、と。」
いつもは何かの依頼をする人やそれに対応する人数ぐらいはいるのだが今日はそういう人たちも居ない。産業区にある工場にトラブルでもあったのかな……と思いつつあまり真面目な部員とはいえないエカチェリーナはぱぱぱっとストックしてある実験用の素材を手にしていく。
■エカチェリーナ > 「さて、それじゃあはじめるかな!」
そう言って実験用の器具が乱雑においてある机の前に行き、るつぼやらなんやらを脇にどけ、魔法陣らしき布を机の上に敷く。
「……」
別にそれらを扱えないわけでもないし使ってもいいのだが、あくまで彼女の目的は自身の魔術、金属の加工を魔術的に行う冶金魔術の研鑽にあった。
結果として同じものが出力されるとしても、他の部員とは明らかに違う方法で同じ場所を使うことに妙な後ろめたさを感じる。
「でもまぁ、仕方ないわよ、ね。」
他に人がいればそんなことはおくびにも出さない、というかもしそんなことを指摘されれば即座に反論するのだが、一人ではつい本音も出てしまう。
「とにかく、はじめましょうか。」
魔法陣の上に素材を配置し、集中する。まずは熱を与えて――
■エカチェリーナ > 熱を、つづいて圧を加えられて明滅しながら輝く金属を見つめる。
ここには異世界からの物も含めておよそありとあらゆる場所から集められた鉱材が調べる暇もないまま集積されている。
単純に融点も沸点も、どころか果たして本当に金属なのかすら不明なものも多いので、とにかくその性質を調べていく。
「これはすぐ溶ける、これは……熱には強くても脆いのね。これは……」
簡単な調査だが、右から左へ次々と素材を変えては実験をしていき、結果をノートに書き加えていく。
ご案内:「第一部室棟」に設楽 透さんが現れました。
■エカチェリーナ > 手段はともかく、結果は変わらない。彼女の魔術はあくまで魔術的な変容をもたらさず、現実の加工を代用するだけのものである。
「うぅん、これただの石じゃないの……?」
およそ金属的な特徴の見いだせないものを取り上げて、つぶやく。
■設楽 透 > 「へぇ~」
「いつ来てもこの部室は珍しい物がごろごろしてるねえ」
【扉が開かれた様子は無かった】
【しかしその男はいつの間にか部室内に居て、】
【物珍しそうに、】
【しかし決して手は出さない様に注意しつつ器具や鉱材を眺めていた】
■エカチェリーナ > びくぅ! とはために見ても明らかに肩が跳ね上がる。危うく出そうになる声をすんでのところで押しとどめて、振り返ると何やら物珍しげに周囲を物色する男の姿が目に入った。
「あっ、あなたいつの間に、いいえそれよりも商用なら今対応できる人間は居ないわ、また出なおして――」
とにかく、セリフから部員ではあるまいと適当にあしらおうとしたが、目立つ長身と金髪、それにかすかに聞いた(芳しからぬ)噂に心当たりがある。
「ええっと、あなたなんて言ったかしら。確か――」
だが、名前は出てこなかった。
■設楽 透 > 「ああ、おかまいなく」
「ただ物珍しさに寄ってみただけだから」
「満足したらそのうち出ていくさ」
「だからどうぞ続けて、」
「えっと……コロコルちゃん?」
【お気になさらず、と男は笑顔で告げて】
【再び視線を鉱材へと向けた】
■エカチェリーナ > 「そう、まぁそれなら別に……見られて困るものもないわね。」
私には、と心のなかで付け加えながら。誰かの秘密の研究成果が転がっているかもしれないが、きちんと閉まっておかないのが悪い。
「……」
再び息を吸って集中しようとするが――。
ダメだ。驚いたのとやはりウロウロされては集中できない。
若干イラつきながら一度向かった机からぐるっと再び椅子をまわして設楽に問いかけた。
「あなた何で私の名前、というか姓を知ってるの? 私は多分あなたのことを噂でしか知らないわ。」
■設楽 透 > 「うん?」
「そりゃあ、生徒名鑑を見れば顔とフルネームくらいわかるさ。」
「後輩の顔と名前くらいはきちんと覚えておかないとね」
【何に使うのか見当も付かない器具から少女へと視線を向け、】
【そして再び器具へと戻す】
【この男の興味は今のところ、】
【少女よりも未知の器具や工具に向いている様だ】
■エカチェリーナ > 「それはまぁ、そうよね、うん」
この男の言うことは一々もっともらしく聞こえる、けど、やっぱりおかしい!
この学園の生徒は割と冗談にならない人数だしそれらすべての顔と名前を一致させるなんて
「後輩の顔と名前くらいはきちんと覚えておかないとね」なんて殊勝な発言だけで納得することは出来なかった。
「いやそうじゃない! おかしいでしょ私なんか未だに同学年どころかクラスメートすらよくわかってないのに――」
声を張り上げながら、機械や素材をやたら熱心に見ている姿にむくむくと不信感が沸き上がってきた。
まさかと思うが産業スパイの類ではないか? 結構優秀な研究員もいるはずだしそういう連中が来てもおかしいとまでは言えない。
さっきは閉まっておかないほうが悪いなんて思ってたがやはり一応同じ部活の部員である。
研究の成果を盗まれるのを座視しているわけにはいかない。
「ねぇ、あなた何者? おかまいなく、じゃないわよ。せめて名乗ってもらわないと落ち着かないわ。」
一段声を低くして問いかけた。
■設楽 透 > 「ああ、確かに」
「君の疑問は尤もだし、」
「変に誤解をされても困るしなあ」
【これは失礼、と改めて少女に向き直る】
【不信感を露わにしている相手に対して拍子抜けするくらいに】
【和やかな笑みを浮かべていた】
「僕の名前は、設楽 透。」
「一応、三年生でささやかな異能持ちだよ。」
「趣味は島内散策と君のような可愛い子とお話をすること」
「ありふれた、何処にでも居る、ごく普通の自称情報屋さ。」
【すらすらと自己紹介を終え、】
【とは言ってもここの研究成果を漏らす気は無いよ、と付け加えた】
■エカチェリーナ > トオミネと違う意味でその笑顔はこちらから毒気を抜くものだった。
まさか天真爛漫な無垢の笑顔とまでは言えないがともかく敵意や悪意は微塵も感じない。
「そう、シタラね。私からの自己紹介はいらなさそうだけど一応名乗っておくわ、エカチェリーナ・コロコル、高等部二年よ。」
趣味を聞いて思い出した、彼は女性関連でよく話題になる先輩だ、と思ったがまぁそれは置いておこう。
「別に情報屋なんてありふれていないと思うけど、あとどこにもいるってほどはいないでしょ? 裏通りとかならともかく……」
なるほど、漏らす気がないなら安心だ、と思ったが
「漏らさないってことは情報収集してるんじゃないの!?」
やはり不審人物か、と思い声をあげた。
■設楽 透 > 【貶めるつもりは無いのだから敵意はなく、】
【辱めるつもりも無いので悪意もない】
【純粋に目の前の相手に対する敬意を笑顔に変えて】
【その男は立っている】
「うん、存じてるよ」
「それにしても写真で見るよりも可憐だね」
「ああ、それと僕のことは気軽に『設楽先輩』って呼んでくれよ?」
「そっちの方が馴染があるからさ」
【ひとまず疑念は払拭出来た様なので、と】
【再び器具に目を移すが、】
「うーん、一応蒐集はしてるけど……」
「これはあくまで僕の『個人的な』ものであってね?」
■エカチェリーナ > 「そう、まぁ先輩ぐらいはつけておくわ。言葉遣いまでは直らないでしょうけどね。」
無闇な反骨心だとは重々自覚しているが、もはやこれは天性だと諦めてもいる。
教師にさえほとんど敬語を使わないのだから先輩ではなんというか……仕方がない。
「私もカーチャと呼んでもらえたほうが気安いわ、シタラ先輩。それで個人的な、ってどういうこと?
情報屋の店先に並べるつもりはないって解釈でいいのかしら。」
研究は確証のない努力の成果だ。くどいともしつこいとも思われようと、一度守ると決めれば一応はっきりした答えを聞きたかった。
■設楽 透 > 「ふふ、ありがとう。」
「まあ通り名みたいなものだと思ってくれよ」
「……ああ、分かったよ、カーチャ。」
【少女の申し出を快く受け入れる】
【敬称をつけるか悩んだそぶりを見せたが、】
【語呂も悪いので諦めたようだ】
「うん、そういうことさ。」
「今僕がこうして眺めているのは、」
「あくまで僕が個人的に『知りたかったから』で」
「この情報──いや、『知識』を流す気は無いよ。」
【にこにこと笑みを浮かべたまま、】
【近くの器具をじっと見つめる】
■エカチェリーナ > 「そうね、そう、えーっと……わかったわ。なんていうか、ごめんなさい。失礼をしたわ。」
やや浮かしかけていた腰をぐっと椅子に預け、大きく息を吐いた。ギシッと椅子が鳴る。
「それでええっと、あのー……な、なにか飲む? お茶ぐらいはあるはずよ。」
警戒感バリバリの態度をとり続けたことに気まずさを感じながら、目を微妙にそらしつつそう聞いた。
■設楽 透 > 「はっはっは、」
「気にする様な事じゃ無いさ。」
「ここの研究成果が然るべき時に然るべき手段で以て公表された暁には、」
「僕も出し惜しみはしないけどね」
【要するに『宣伝はするよ』ということらしい】
【お茶を、と言われれば静かに首を振って】
「いや、結構だよ。」
「君みたいな美人に気を遣われるだなんて、」
「何も喉を通らなくなりそうだしね。」
【そう言って、次の器具へと視線を移す】
■エカチェリーナ > 「いらない? そうね、まぁ私もジャム置いてきたしいいかな。」
ややトンチンカンな返事のようだが、彼女は常にお茶にベリーのジャムを入れる。
というか彼女からすれば何も入れないお茶をパカパカ飲むことのほうが異常であった。
「発表の後なら盛大に売ってもらいたいわね、やっぱり努力は報われるのがいいわ、うん」
そう言って機材を眺める設楽をなんとなしに目で追っていたが、ふと情報屋という単語を思い出す。
「ねぇシタラ先輩、あなたが売る情報って高いの?
例えば誰がどこによくいる、なんていうのはどれぐらいになるのかしら?」
そういえば伝言を預かっていたことを思い出した。
見かけたら、という話だがせっかく情報屋という人がいるのだからとにかく聞いてみてもいいだろう。
■設楽 透 > 「ああ、また日を改めて」
「此処じゃあなくてもっとお洒落なカフェでご一緒したいね。」
【不注意からお茶を溢してしまいかねない】
【そういう懸念も、『一応』あったようだ】
「おや、僕の仕事の話かい?」
「そうだなあ……」
「あくまで僕が求めるのは『お金』じゃないんだ」
「僕が扱うのは単なる『噂』、信憑性で言えば眉唾も良いとこだからね」
「だからまあ、『誰を何処でよく見かけるか』程度なら、」
「君の可愛いスマイルで幾らでも教えてあげるぜ?」
【そんな事を言いながら視線を気高い後輩へと向ける】
■エカチェリーナ > さっきから可憐だとか、美人だとか、言われて、なんか気にならないわけでは決してなかった。
だがその都度微かな悪評を思い浮かべそれらを沈めてきたが、スマイル、スマイルときたか!
「カフェね、カフェはまぁ機会があればね!」
そもそも今まで彼女は圧倒的に分が悪い、工学部は決して排他的な集団ではない。
もちろん学生相互の良心に依存する部分はあれど、研究のセクションは決して秘密の聖域ではない。
けれども彼女は終始疑い、結局どうもあらぬ嫌疑をかけてきたようだった。その罪悪感が胸に染みる。
「お金ね、お金はまぁ求めてないのね!」
ついでに言えば情報を求めたのは彼女からであり、提示された対価は不可能ではない。あと頼まれごとでもあるし、まぁともかくなんやかんやあるけど、
「……おっ、教えてください♥ シタラ先輩♥」
ともかく、必死にとにかく笑って見せてそういった。組んだ手をやや傾けたりしながら。
■設楽 透 > 「おや、」
「にべもなく断られるかと思ったけど」
「じゃあまた日を改めてお誘いしようかな」
【くす、と楽しそうに笑う】
【疑われていたことは風評や立場上珍しい事でも無いので、】
【大してどころか全くと言っていいほど気にしていなかったのだが】
「……どうやら無理を言ってしまったみたいだね、」
「そこは素直に謝るよ」
「OK、誰の事を聞きたいんだい?」
■エカチェリーナ > 「謝られるとなんか、余計バカみたいじゃない!?」
笑っている人間が更に笑ってもわかるものだな、とか変なことに気がついたがまぁとにかくいい、
とにかく情報は聞き出せるのだから、それで良しとする。
ぐじぐじと前髪をいじって心を落ち着かせたあと、本題に入る。
「ええっと、猫耳パーカーを着てる、背の低い、そういえば男か女かわからないわね……
ええっとそういう人……子供かな? と、イヌカイっていう風紀委員よ、こっちは大柄らしいわ。」
■設楽 透 > 「ええっと……」
「別にそうは思わないけどなあ」
【少し困惑した様にも見えたが】
【すぐに食えないニコニコ顔に戻る】
「猫耳パーカーの、小柄な子と……」
「ああ、犬飼くんなら知ってるよ、」
「風紀委員の。良くも悪くも目立つからねえ。」
■エカチェリーナ > 「目立つの? 目立つのになかなか捕まらないというのも不思議な話ね。」
人探しの大変さを知らない彼女はぼんやりとそんなことを言う。
「それじゃあイヌカイの方でお願いするわ、どこなの? まさか『タチバナ』なんてことはないわよね?」
この界隈でも有名なカフェテラスの名前を出してみる。あんなところに大柄で凶暴らしい人間がいたらさぞ目立つだろう。