2015/07/04 のログ
ご案内:「広報部部室」に麻美子さんが現れました。
麻美子 > こんこんと扉をノックすると、
入るッスよーと一言だけ声をかけて室内へと踏み込んだ。

広報部の部室、所せましと並べられたパソコンには、
学内のあらゆる場所が映っている。

「……で、麻美子になんの用ッスか?」

その中央に鎮座している彼女を呼び出した本人を見て、
あくびをしながら声をかける。

麻美子 > 2言3言言葉をかわすと、麻美子は不満気に唇を尖らせた

「たーかだか恋人ができたくらいで、
 麻美子がポリシー歪めるわけがないじゃないッスか。」

彼女が今日ここに呼び出されたのは、
本来絶対中立の広報部の人間が、公安委員会の男と恋仲になっている。
という情報が広報部に届いた為だった。

『まぁ、あれだけバカみたいにイチャついてればそりゃバレるッスけど。』

彼に告白されて早数日、ここしばらくは、
お互い『仕事』も忘れてそれはもうバカみたいにイチャイチャしていた。
最近ようやくお互いに『仕事』を思い出し(特に緑のほう)
お互いの『仕事』に戻ったばかりだ。

内心で苦笑いしつつ、やれやれと首を振った

「心配しなくても『仕事』はちゃんと今まで通りにやるッスよー。
 ……は?『彼と別れろ?』なーにいってるんスか、
 部長サン、恋愛漫画のライバルキャラみたいな事言うなッスよー。」

麻美子 > 呼び出した彼は、麻美子の態度を見て、
笑みを張り付けたような顔をピクピクと動かす。

「そんなに気に食わないなら、
 除名にでもなんでもすればいいじゃないッスか。」

心底めんどくさそうに言うと、はぁ、とため息をついて
『そろそろ帰っていいッスかね?』と、目の前にいるそいつに声をかけた。

「………はいはい、どうもッスよ」

『ああ、そういう事なら仕方ない』と首を振る彼に、
ひらひらと手を振りかえすと踵を返し、
肩ごしに黒塗りの手帳を彼に向けて放り投げた。

「じゃ、今までどうもッス。世話になったッスね。」

そう最後に声をかけると、彼女はゆっくりと外に出て行った。

麻美子 > 彼女が居なくなった室内、
彼、『広報部の部長』は瞳を伏せてしばらく考えると、
スマートフォンを取り出してどこかへ連絡する。

『――――――。』

簡潔に用件だけ伝えて、終了ボタンを押してふぅと息をつくと、
机の上にあったコーヒーを飲み干した。

『その選択は実に君らしくないよ。未見不麻美子。
 ―――冷静に考えればわかる事だろうに。』

彼はそう呟いて、
大量に並ぶパソコンの内の一つに目線を動かすと、口元を歪めた。

ご案内:「広報部部室」から麻美子さんが去りました。
ご案内:「美術部部室」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
日恵野ビアトリクス > 「…………」
放課後。
ビアトリクス以外誰もいない美術部の部室。
室内に張り巡らされた紐に、洗濯バサミで吊るされた画用紙。

沈んだ配色で描かれている水彩画。
陸に打ち上げられたニシン。
翼の折れた鳩。
飢えた瞳の痩せぎすの犬。

無表情で佇む彼を取り囲む結界のように並べられた絵の、
それぞれのモチーフが、冷たい視線を向けている。

日恵野ビアトリクス > 木製の椅子を引いてきて、そこに座る。
薄暗いなか、こうして自分の作品に囲まれていると、奇妙な安らぎがある。
しかしこの絵の結界には、あるものが足りない。

油彩画は臭いがキツく、水彩画は臭いがしない、と言われる。
それは正確ではない。
使用される絵具の品質にもよるが、水彩絵具に使われている
フェノールのツンとした臭いはかすかにだがある。

「…………」

しかし、描き上げられたばかりのはずのこれらには
そういった臭いはしない。

なぜなら――この画用紙たちに描かれたものは
すべて《踊るひとがた》によるものだからだ。

日恵野ビアトリクス > 《踊るひとがた》――二次元情報を改変する異能。
日々の修練と、友人によってもたらされた(おそらくは喜ばしい)変化によって
ちょっとした着想をこうして絵という形で出力できるぐらいには
この能力は成長した。

しかし。
ビアトリクスも最初は勘違いしていたことだが、
けっして『絵を描く』ための異能ではない。

本当なら、こうして乾かすために紐に吊るす
必要すらないのだ。

「“にせもの”」

口に出してみる。
途端に、モチーフたちの向ける視線が
自分を糾弾するようなものに感じられる。

自分は何者にもなれない“にせもの”。
そんな自分が描く絵もまた“にせもの”。

「…………」

震えた息を漏らす。
カーテンまで閉めきった部屋の中、気化した幻の絵具の毒が充満したか。
席を立って、ほんの少しだけ扉を開く。
外の光が差し込んだ。

日恵野ビアトリクス > 孤独なビアトリクスは、無様な歩調で静けさの帳の中を彷徨う。

世界から一人逃れたのか、
世界に一人取り残されたのか。

乾き続け、飢え続け、血を流し続ける。
このとき彼は陸のニシンであり、痩せぎすの犬であり、翼の折れた鳩である。

絵を好きになんてなれない。
だって絵が自分を好きになってくれるとは限らないから。

にせものを本物に変えるまでに、
いったいあとどれほど、乾き続け、飢え続け、血を流せばいい?

自分を置き去りにする世界たちの背中を見つめながら、
それを続けなければならない。

ご案内:「美術部部室」に加賀背 雄さんが現れました。
日恵野ビアトリクス > ふらふらと辿り着いて手をついたその机には、赤いドレスが置かれている。
資料として美術部が所蔵しているものだ。
何年前からあるものか知らないがそれは、随分と着古されていて生地が薄い。
色あせてもいるし、しわと埃だらけだ。
それを手に取る。

部室の隅に置かれた大鏡の前で、ドレスを自分の身体に合わせてみる。
みすぼらしいビアトリクスに、みすぼらしいドレス。

少年でも少女でもないその姿が、自分に向かい合っている。

加賀背 雄 > あ、あのう…すみません、誰かいますか?
(すごく控えめにノック。 注意を要するテストはそうそうに終わって、比較的自由な時間。
 かねてから考えていたプランを実行するために訪れたのは美術室…美術部だ。
 人の気配を感じとると、そのままそっと、うるさくないように扉を開く。)

わ、っ……あ、ええと、勝手にドア開けてすみません。
(ドレスを自分の身体に合わせる人が見える。 だけれど、女らしい!みたいな感じではなくて、
 どちらでもない…あるいはどちらでもあるような、不思議な雰囲気に息を呑んだ。
 我にかえって、まずはごめんなさいをする。 誰だって作業中に
 邪魔をされて嬉しいはずがないからだ。)

日恵野ビアトリクス > ゆっくりと開かれた扉が、かすかな風を室内に運ぶ。
物音と人の声にびくりと肩を揺らし、ドレスを手放す。
少しの間を置いてそちらに振り向く。
いつも通りの無感情な、人に向けるには適さない、不機嫌ともとられかねない表情。

「別にかまわないけど」
人と話したくないような、話したかったような、どちらとも言える気分だった。
カーテンを開き、明かりを取り入れる。
室内には散らかった画材、不揃いの机と椅子、吊るされた陰気なモチーフの絵たち。

「部員じゃないな。見学希望かい?」
来客の全身をじろじろと眺める。

加賀背 雄 > ああ、よかった… その、いつも美術部ってきちんと部活してるから、声をかけづらくて。
(構わないと言われると表情をほころばせる。 よく言えば落ち着いた、
 悪く言えばそっけない対応とは言え、許可してもらえたのは嬉しい。
 彼女が付けてくれた明かりで、部屋の中がよくわかる。辺りを見回して、
 なるほどとばかりに頷いた。)

なるほど、なるほど…こういうの、すごいなあ…
(雰囲気に圧倒される。 どこか明るくない絵はとても綺麗だけれど、
 なんとなく彼女の纏う雰囲気にも似ている。)
あ、ああ、うん。 見学したい。 色々学んでみたいんだ。
その… 服を作りたいんだけど、ぼくは美術のいろはもわかってないから。
(素直に目的を告げる。 もちろん、その服がなんのことか、
 どう使うかは言えないのだけれど。)

日恵野ビアトリクス > 適当に余っている机と椅子を引っ張って、
冷蔵庫から取り出したペットボトルのお茶を紙コップに入れて出す。
飲んでろ、ということだろうか。

すごいなあ、という反応には、
つまらなさそうに鼻を鳴らすだけ。
慣れているのだろうか。

「服? 服ねえ……」
首を傾げる。

「まあ、ご自由にどうぞ。
 参考になるかどうかは保証できないけどね。
 美術部って、そんなには意識高い連中いないから」
普通に美術や服飾の授業受けたほうがいいんじゃない?
とは、余計なお世話だろうし言わない。
イーゼルにスケッチブックを乗せ、木炭を手に取る。
その前に椅子を引っ張って座る。

「ちなみに、どういう服がいいの?」

加賀背 雄 > あ、ありがとう……
(たぶん飲んでいいよということなのだろう。 一口お茶を頂いてから、うん、と頷いて。)

その、色々やってはいるんだけれど…技術はわかるんだ。技術は。
ただ、センスを磨くのが難しくて。 うん、ちょっと見学させてもらうね。
試験中だけど部活に打ち込んでるような人なら、
少なくても意識高くない人よりもいい話が聞けるかもしれないって思って。

(スケッチをするつもりであろう彼女の動きに呼応して、その辺の椅子に腰掛ける。
 少なくても邪魔者扱いされないだけ十分だ。 彼女の作業を眺めていたのだけれど、
 突然振られた話題… 服について尋ねられると、眼鏡の奥にある視線が揺れた。)

あ、ええと…うん、それはええと…色々、かな。 いや、ええと…
うん、女の人の服が作りたいんだ。
(逡巡してから回答。 彼女のことだから、特に変に思ったりもしないだろう。)

日恵野ビアトリクス > 人に見られながらの作業にも少しは慣れた。これも成長だろうか。
木炭を持ったはいいが、モチーフを決めていなかった。
指が宙を彷徨う。

「ああ、名乗り忘れてたな。
 ぼくは一年の日恵野ビアトリクス。
 きみは?」

にしても、過大評価されている気配を感じる。
美術をやっている、ということを明らかにした時
人が自分に向ける視線はわずかに変わる。
それが少し厭で、それを気にする自分もまた厭だった。

イーゼルの前で数分悩んだあげく、立ち上がり、
棚から図鑑を取り出して、頁を開いた状態で近くに置く。
さまざまな品種のうさぎの写真が見える。

「ふうん。
 それは誰かに贈る用?
 それとも、自分で着る用?」
別に答えなくてもいいけど、とひらひらと片手を振って。

加賀背 雄 > 失礼、僕も名乗ってなかったね。加賀背 雄。 まだこの島に来たばかりなんだ。 よろしくね。
(彼女の作業の邪魔をしてしまったかもしれない。 少し罪悪感。
 邪魔をするわけにはいかないし、彼女が資料を選ぶ様を見ていたり、
 いざ準備をする様子を眺め……たかったけれど、問いかけに身体を硬直させた。
 視線が左右に揺れる。 ぎゅっと手を握って、彼女から視線を外した。)

…ま、待って? なんで後の方の選択肢出てきたの?
いやあ、冗談だよね。 うん。うん。 誰かに送る用でね。
(ブラフかもしれないけど、反応しないわけにはいかなかった。
 もごもごと言いよどみながら返事をする声は、とっても震えていた。)

日恵野ビアトリクス > わかりやすく震える様が、正面を向いていなくてもわかる。
「まあ、半分冗談だけど。
 部屋に入ってくるときのきみの歩き方、少し内股気味だったから。
 それと、似合いそうな顔してるし」
冗談の気配を感じられない、平坦なままの声。
本格的な女装を行う人間は、少しでも男らしさを漏らさないように
極力女性的――つまり身体の内側に向けた立ち振舞をする。
それが無意識に出たのかもしれない、とビアトリクスは言ったのだ。
とはいえ、そこまでしっかり観察していたわけではないし、
ハッキリとした確信があるわけではなかった。

(まあ、見学者がどういう目的だろうがどうでもいい)
自分のやることが何かの参考になるとは到底思えない――
ビアトリクスはそう考えながら、木炭による素描を始める。
モチーフを描く時、頭頂部――上からはじめるやり方と
足元――下からはじめるやり方、両方がある。
今回は後者を選択した。
地面に付いた動物の足が画用紙に現れる――
ちんまりと座り込んだうさぎの足だろう。

加賀背 雄 > そ、そうだよね、冗談だよねー!! ビアトリクスさん、結構痛烈な冗談言うね…
(胸をなでおろして長い溜息を吐く。 歩き方について言われると、
 自分でも知らないうちにぴしりと背筋を伸ばした。)

似合いそうっていうのはたまに言われるけど… その…面と向かって言われたのは初めてで。
(彼女の観察眼はとても鋭い。 少なくても自分が簡単にやり込められるぐらいには。
 まるで見透かされているかのような言葉に、もぞもぞと椅子に座り直す。)

(彼女のデッサンが始まると、静かに口を閉じる。 先ほど選んでいた資料からするに、
 兎を描くのだろう。 するすると木炭が動き、紙に兎の足が描かれていく。
 おお、と感嘆の声を上げ、て。) 

日恵野ビアトリクス > 「…………」
ひどくわかりやすい。
あんまり追い詰めてもいいことはなさそうなので、それ以上は何も触れない。
歩き方なんて観察するようになったのは
ビアトリクス自身が女装をはじめてからだった。
あるいは、仲間を探そうとしていたのかもしれない。

ともあれ、素描は続く。
うさぎの全身図が徐々に完成していく。
足から胴へ。密度の高い短毛に包まれた、丸っこいフォルム。
消しゴムをあてつつ、炭の濃淡で毛の色を表現していく。おそらくは茶色であろう。

そうしてやがて頭部へと至る。
画用紙に見えてくるのは、上にまっすぐ伸びた耳を持つ、つぶらな瞳――
ではなく。
発達した前歯を持つ、あらわになった頭蓋骨。
図鑑の頁がめくれると、うさぎの解剖図が載っているのが見えた。

加賀背 雄 > …………
(若干気まずくなった。それにしても、彼女はどうやって人が女装している条件を
 見つけるに至ったのだろう。的確なアイデアは出てこなかった。)

あ、可愛い……
(丸っこくて可愛らしい兎が、彼女の手が動くたびに紙の上に作り上げられていく。
 自分だって色々やってはいるものの、手から実際に絵を生み出したりするわけではない。
 驚きと感嘆を持って作業を見守る。 たった一色でここまでできる彼女の技量も見事だ。)

……骨…?
(ふわふわの柔らかくて丸い身体の上にのった、まるで怪物のような頭蓋骨。
 何度かまばたきをしながら、彼女が描き出すそれが完成する様を見守って。)
 

日恵野ビアトリクス > とうに、見学者のつぶやきは耳に入っていない。
クライマックスに至り、一心不乱に木炭を画用紙に叩きつける。
屍体ではない、今にも飛び跳ねそうな、
しかし決してキュキュとは鳴きそうもない異形のうさぎ。
全身図が完成したら、仕上げに地面の土を足元に描く。
草や野の花をまばらに描き加えたりして。
牧歌的な印象を与える、うさぎの素描だ――首から上を隠しさえすれば。

人と話して少し気が紛れたのか、
自分としては悪くない出来だ。
木炭を置いて、ふう、と息をつく。

そこでようやく雄のことを思い出したのか、くるり、と振り向く。
「どうかな」
良作の完成の高揚がそうさせるのか。
口元に、満足感が滲んだ薄い笑みが浮かんでいる。

加賀背 雄 > おお………
(野原に佇む兎。 だけれど、その首から上だけは骨になっている。
 周りが楽しげな雰囲気なだけに、そこだけが異彩を放っていた。
 息を呑む。 生とか死とかとも異なる、なにか別のもののような気がする。)

ねえ、ビアトリクスさん。 この兎は……死んでるのかな、生きてるのかな。
(なんだかわからないけれど、感じるものはある。 それを表現できる口がないのは
 とても情けないことだ。 それでも必死に問いかけようとして言葉を紡ぎだす。
 畏れるような、惹かれるような。不思議な感覚に囚われるその絵をじっと見つめ、
 次にビアトリクスさんに目を向けて。)

日恵野ビアトリクス > 「さあ、どうだろう。どっちに見える?
 ぼくは見た者が勝手に決めればいいんじゃないかな、と思ってるけど」
何が愉快なのか、口元に手を当ててくつくつと笑う。

「けど、このうさぎが生きているか死んでいるかは……
 きっと彼しか知らないことさ。
 生と死、肉と骨。
 その曖昧なところにこそ、きっと彼の真実があるのさ」
立ち上がり、雄へと歩み寄る。

「けれど人は、曖昧なことをきらい――
 どちらかに区別しようと躍起になる」

「生と死。
 善と悪。
 大人と子供。
 ほんものとにせもの。
 実在と非在。
 ――男と女」

「そんなものを誰かが勝手に決めてしまうなんて――
 ひどく傲慢なこと、そう思ったりしない?」

熱にうかされたような、饒舌な口調で語りながら、
息がかかりそうな距離まで詰め寄る。
口元には笑みをたたえたまま。

加賀背 雄 > どっちかな……… いきものじゃなくて絵だから、っていうことなら、
生きてもいるし、死んでもいるのかもしれない、かな…。
なんだかすごく、気になっちゃって。
(ぼんやりした口調で言葉を返す。ゆっくりと立ち上がって
 此方に歩み寄る彼女を見つめる目も、どこかぼんやり。
 絵の力に完全に飲まれている。)

そう、か…どっちか、とか、そういうことじゃないんだ…。
(そういうことなんだ。 彼女の考えが描かれた絵…
 それが指し示す意味をようやく理解して、小さく呟く。
 饒舌に語る彼女の気迫に押されて、彼女が近くにいることすら、
 身体を引いたりすることすらも考えられなかった。
 ただただぽーっと、まるで酔ったかのような、夢見るかのような表情で
 彼女を見つめる。)

日恵野ビアトリクス > じっと視線を向けられれば、目を細めて見つめ返す。
そうして満足そうに頷いた。

少しして身を離す。
ずいぶんと熱が入った喋り方をしてしまったことに
気づいて我に返ったのか、目をそらしてしまう。

画用紙同様に白い指で、異形のうさぎが描かれた頁をそっと切り取る。
「どうやら気に入ったようだけど、持って行くかい?」
そして差し出してみせる。

加賀背 雄 > (彼女と視線が絡む。 頷いてもらえるだけでなんだか心地よくて、かすかに身体が震えた。)

っは、ぁっ……うん、もしビアトリクスさんが良ければ、だけど…
(彼女が離れると、がっくりと背もたれに身体を預ける。 ほんの短い時間だったけれど、
 なんだかすごく…自分の中にある、自分すら気づかないなにかを覗かれている気がした。
 頭を一振りしてから、絵を受け取ると立ち上がる。)

今日はありがとう、ビアトリクスさん。 その…また来てもいいかな。
(絵までもらったし、と続けてはにかむ。 お礼も含めて、また遊びにきたいなと考えて、
 彼女に確認。)

日恵野ビアトリクス > 「そうかい。
 絵は、より気に入った人間の手に渡るほうがいいからね。
 それが絵にとっての“幸せ”――なんて言うつもりはないけど」

礼を言われれば、チェシャ猫のように機嫌よく笑う。共犯者に向ける笑み。
「満足していただけたかな。
 許可なんていらないさ。好きなときに来ればいい。
 なんなら入部してくれてもかまわないぜ」

そうしてイーゼルの前に座り直し、再び木炭を手にする。
また新たなモチーフを何にしようか考えているようだ。

加賀背 雄 > うん、なんだかすごく……この絵は、いい。 あんまりうまく言えなくてごめんね。
(なんだか彼女の笑顔は、自分の中のなにかを刺激する。 とても素敵なはずなのに、
 ぞくっと背筋が震えた。 それが悪寒なのか、別のなにかなのかはわからないけれど。)

入部も視野に入れて考えておきたいな。 ビアトリクスさんがいい人でよかった。
じゃあ…失礼するね。 今日はありがとう。
(再び作業を開始しようとする彼女に、早口で言葉を返す。 作業の邪魔になる前に、
 深々と頭を下げて、部室を後にした。)

ご案内:「美術部部室」から加賀背 雄さんが去りました。
日恵野ビアトリクス > 「からかいがいがありそうな奴だな」
彼を見送ったあと、ひとりくつくつと笑う。
真剣な気持ちで挑んだ絵を、素人とはいえ
良く評価されて気持ちよくないといえば嘘になる。
芸術家とは常に孤独なのだが、
真なる孤独に耐えられるものはそういない。
(――きっと、誰かに見てもらわなければダメなのだ)

少しは“ほんもの”に漸近できただろうか?

さて、次のモチーフは何にしよう。
図鑑をぺらぺらとめくる。
(――そうだな、猫かな)

ご案内:「美術部部室」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。