2015/08/13 のログ
ご案内:「美術室」にネコメドリさんが現れました。
ネコメドリ > 夏季休暇もそろそろ終わり。そんなある日、美術室でやっているデッサン講習会に"ソレ"は現れた。

ガラッ
「ちーっす!ヨキせんせーちーっす!!」

──しーーーん。人は居るのだが、場違いなその鳥のような生物に誰もが沈黙を禁じえなかった。

「…あ、アレ?もしかしてもう始まってます?」

ちょうど講習会の説明をし始めた段階のようで、
美術教師のヨキ先生はこの鳥に空いてる席に座るよう言った。

「し、しつれいしまーっス」

と、先程の醜態を誤魔化すようにのそのそと席に座るのだった。
ある生徒がその鳥をまじまじ見れば『あの翼でどうやってデッサンなんてするんだよ…』とか小声で言ったりしてる。

ネコメドリ > 彼は"ネコメドリ"と名乗っており、その名に相応しく猫のような目をした鳥だ。
何故、絵も描けそうもない手──否、翼をしている彼がここに居るかと問われれば、
ただ単純にこの前、先生にばったり会った所に誘われただけだったりするのだが。

ヨキ先生からの説明でデッサンのポイント、【構図】【質感】【奥行き】についていくつか簡潔に説明された。
ネコメドリは時折「ふむぅ」「むふん」「なるへそ」等とわかっているのかわかっていないのか曖昧な相槌を加えながら話を聞いていた。
説明の間、この鳥は特に暴れたりとか奇声を上げたり──といった事もなく説明は終わる。

「うっわあ、なんだか本格的だわ…」

説明が終わり、机の上に乗ったモチーフを見て戦慄するネコメドリ。本格的ではない、本格だ!
しかし幸いな事にこの講習会はデッサン経験の有無は問わない、
──つまり未経験者でもOK!とかいうそんなバイト募集のお約束みたいな感じのノリなのだ。多分。

さてさて、デッサンというものがよくわかっていないこのネコメドリは、さして考えもせず適当に空いている席の一つにドカッと座る。

ネコメドリ > この場に居る全員が席に座ると、先生は時間内に描き終わるようにと念を押して開始を告げた。
今から三時間が制作時間、その間に描かなければならない。
ちなみに物など持てそうにない翼は、変に折れ曲がり、さながら人の手のような動きで鉛筆を持っていた。
このネコメドリを馬鹿にしていた生徒も度肝を抜かれた。『漫画のキャラか!』とか訴えたいような顔をしている。

そういえばこのネコメドリ、実は漫研部員だったりするが、さして絵はうまくない。
もしデッサンを描かせようものならメガネ男子がメガネッ娘になる勢いである。ちょっと前にそうなった。
[1d10-1→9+(-1)=8]
ネコメドリ > 【構図8】

紙の上に適当にアタリをつけている。丸描いてちょんって感じだ。そこから線を引いて机の上に乗っているものの形にしていく。
座った場所がよかったのか、構図はそんなに悪くない──と思うが、ネコメドリは何を思ったのかモチーフにないものまで描き加えていく。

「うーん、この辺に美少女とか欲しいよねェ~…」

その後ろでじーっと見ていたヨキ先生はとても何か言いたそうな顔をしていたが、あえて何も言わずに他の生徒の分を見て回っていった。
うっすらと描いているだけなのでまだ練り消しで消せる段階、セーフ!セーフです!!

ネコメドリ > とりあえずは美少女は後回しにしたのか、うっすらとその容貌が見えるだけに収まった。
机の上のモチーフは大体が形ができてきたので、続いてケトルの所に筆を伸ばす。

鏡のようなその表面、果たしてネコメドリにその質感を再現する事ができるのか!?
[1d10-1→9+(-1)=8]
ネコメドリ > 【質感8】

少し描いていくと、何かに気付いたのか一旦筆を止め、じーっとケトルを見ながら思案する。

───

─────

「ここに美少女を置くと表面に反射するんじゃ…!?」

ネコメドリは悟った。ケトルの表面に物が反射して見える事に!
でもモチーフの中に美少女は居なかった。残念ネコメドリ、さっさと進めるんだ。

「でも他のものも色々反射して見えるだろうからコレは後回しにしよう…」

と言ってケトルの横にあったコンクリートブロックを先に描く事にしたのだった。
その甲斐あってか、そんなに悪くない質感に仕上がったかもしれない。

ネコメドリ > コンクリートブロック、その上のリンゴ、そして机に敷いてある布の質感を表現していき、最後にケトルに筆を戻す。
そうして出来ていった物の一つ一つを見ればそれなりに悪くない出来だと誰もが言うだろう。

それら全てが収まった場合、どうなるかは一度離してみるべきなんだろうと、
そう思ったネコメドリはぐぐぐ~っと翼を伸ばして少し離れた位置で紙全体を見た。

「あー、なんか肩がこっちゃったな~~、こう、たまに腕伸ばしたりしないとね~~」

割と変な体勢だったので照れ隠しにそう言う。
[1d10-1→6+(-1)=5]
ネコメドリ > 【奥行き5】

「な~んか漫画の背景描いてるみたいだなぁ……」

と、ぽつりと自分の描いたものに感想を漏らす。
流石漫研部所属、やはりどこかしらで漫画やイラストらしさは出てしまうのかもしれない。

「いや、むしろここから美少女を描けば漫画になる…!」

と、不穏な事を言い出すや否や謎のやる気を出したが、そういや今何時だ、と思って時計を見るネコメドリ。
描いている間、休憩やら何やらはせず、割と没頭していたのだ。
[1d10-1→3+(-1)=2]
ネコメドリ > 【時間2】

「げぇッ!?もう10分しか残ってない!?」

作業時間の実に2時間50分も没頭していた。そう、このネコメドリは漫研でも筆が遅い事で有名なのだ。
あわあわしていると、とりあえずこの辺描いておこうかなー、ここ描いておこうかなーとかとか思いつつ、全体的に描き足していったのだが──

無慈悲にも作業終了を告げられた。筆を止め、描き上がったものを提出する。

「あー、なんとか形にはなったかなァ……」

構図や質感は悪くなかったかもしれない。
しかしモチーフの位置関係はそこまでいいものではなかったし、何よりそれを直している時間はなかった。
だがまぁ、初心者なりにはがんばったかな…と自分を慰めるネコメドリだった。

ネコメドリ > デッサンの講習会が終わり、解散する。

「んじゃおつかれーッス。ヨキ先生まったね~~ん」

ひらひらと翼を振りつつ、窓を開けて飛び去っていく。
それを見た生徒の一人が『飛べるのかよ!徒歩で来てたろ!?』とか思ったりする。

空をふわりと飛ぶネコメドリは今回の講習を振り返るのだった。

「割と本格的だったなァ…オイラうまく描けてたかなぁ。
 あのヤカン(ケトル)は割とよく描けたと思うけど、美少女はもうちょっとよく描き込み…」

自分の独り言で何か気付いたのか、脂汗をかきはじめる。

「び、美少女を消し忘れてた……」

先程、薄っすらとだったが美少女?を絵の内に収めていた。
ネコメドリは時間の無さに慌てる余りにそれを消し忘れたのだ。

「やべえ、どうしよう……そ、それでも!先生なら笑って許してくれる!」

と希望を秘めつつ空の彼方に消えていくネコメドリだった。

ご案内:「美術室」からネコメドリさんが去りました。