2015/08/16 のログ
ご案内:「美術室」に織一さんが現れました。
■織一 > (美術室の端、大きな机といくつかの椅子、一番端っこで目立たない場所に、縮こまるように織一は座っている)
「……むう」
(小さいが堅い手のひらでこねくりまわすのは小麦粘土、
ちぎったり丸めたり伸ばしたりして、動物達を形作っている、
鳩の骨格はどういう形か、熊の筋肉はどういう肉付きが、鹿の内臓はどういう作りか、
いままで仕留めて食った獲物達を手のひらに思い浮かべ、粘土で作っている)
■織一 > (美術室に行こうと思ったのは、ほんの気紛れ、
「人」の美術を理解してみたいと考えた、ただそれだけ、
そのことを「たちばな学級」の非常勤講師に言ったら、美術室の鍵を貸してくれた、
美術室が空く時間、それと自由に使っていいものも教えてくれた)
(美術室に来てみた感想は「なんだか変な臭いがする」というものだった、
絵の具の臭い、粘土の臭い、それとよくわからない画材らしき何かの臭い、
青垣山の空気とは違う、妙な閉塞感)
(壁に飾られている絵や彫り物を見ても、なにがなんだかよく分からなかった、
このまま帰る気はしなかったので、下校時間になるまで使っていいと言われた粘土で遊んでいる)
■織一 > (この前狩った野鳥を作ってみた辺りで、手を止める、廊下からざわざわと人の声と足音が聞こえてきた、
椅子の上に体育座りをして、小さく小さく身を縮こまらせて、ドアや壁の窓から自分の姿が見えないように、
呼吸の音も心臓の音も潜めるようにして気配を殺し、廊下の気配が消え去るのを待った、
席に座る前から何度も何度も廊下から見えない位置を確認したし、部屋の電気も付けていないけれど、
その程度では安心できなかった、人の音が怖かった)
(気配が立ち去ったのを感じると、体を僅かに脱力させて、密着させた足と胴の間にため息、
人の声が、人の足音が、人の気配が怖い、どうしようもなく怖い、
こんな調子では「たちばな学級」を卒業するのも難しいだろう)
■織一 > (人が溢れかえったこの世界で生き残るには「人の社会」に適合しなくてはならない、
そんな簡単なことは解っているけれど__時々、思うのだ、)
(人間がこの世から消え去ればいい)
(人間の築いた歴史が、時代が、文明が、彼らが踏み台にした自然に踏み潰されればいいのに、
血肉を獣に喰われ、建物を地震に呑み込まれて、
彼らが大地に敷いた悪趣味で質の悪い舗装を、「水」で、「災害」で、洗い流されればいい)
「__はは、はははっ」
(そう思い至ったとき、何故だか口から渇いた笑いが漏れた)
(きっと常世島にくる前の”自分”は、人間への怒りと恐怖のままに神の力を振るったのだろう、
心に積もる負の感情ごと、人間を洗い流すために)
(しかし自分は敗北して、常世島に繋がれた、世界から弾かれた者のための常世に、
この島には世界から疎まれ、嫌われ、厄介払いとしてやってきたものが沢山いる、
そういったものを世界に、人に適合させるための場所が常世島らしい)
「笑わせる」
(私達は世界に、人に適合しない、いつか人の社会をひっくり返して、嫌っていた人達を呑み込み殺す)
■織一 > (粘土を触る気分ではなくっなっていた、机の上を片付けると、音もなく歩き出して、美術室を出る)
(ドアを閉めて鍵を閉める、一応窓も閉まっているか確認してから立ち去った)
ご案内:「美術室」から織一さんが去りました。