2015/09/27 のログ
織一 > 美術部の部室__いつもなら近寄らない場所に、勇気を出して来てみた。
ドアをノックし、「見学に来た」と手短に伝えると、ハイハイと適当に通された。
随分適当な様子だったが、あんまり見学者には興味がないらしい。

「…………」

適当に部室をうろつき、無言で作品を眺める。
完成品、製作途中で放り投げられたもの、何週間も掛けたであろう大作、鉛筆で描かれた習作。
玉石混交、雑多に置かれた作品達を、一つ一つ丁寧に観察する。
観賞ではなく観察。

「…………」

部室には織一と部員らしき男の二人しかいない。
さらさらと紙に筆を走らせる音と、神経質に静かな足音が響く。

織一 > 獣は芸術を真に理解できない、ただパターンを記憶し、出力するのみ。
そんなものは唯の学習、芸術ではない。

壁に掛けられた絵の一つ、写実的な樹の油絵の前で足を止める。
リアルだが平面的な絵だと思った、視線を移す。
横に置かれた粘土細工には魔力が込められていた、用途は分からないが魔道具のようだ。
その隣の宗教画も術式として機能する代物らしい、「この絵に魔力を込めないように」と付箋に書かれている。

織一 > 目を瞑り、宗教画の前で集中する。
行使するのは見鬼の業、直感と才覚のままに宗教画を”視る”。
部員の男が手を止め、おや、と声を上げた。

(……この部室、相当”散らかって”いるな)

見鬼に慣れていないせいか、余計なものも”視える”。
物質的にも散らかっているが、霊的にも結構散らかっていた。
何回か事故が起きているのだろう、一応致命的な事故は起きていないようだが。

余計なものも視てしまったので、再度集中しなおす、そして宗教画の見鬼にリトライ。

「……なるほど」

この宗教画の意味はシンプルかつ単純な「浄化」、絵の具、表現法、額縁の一つ一つが術式として意味を為していた。
それだけ理解して、目を開ける。

織一 > 『すごいねー、君も魔術師なんだ』

それだけ言って部員の男は作業に戻る、会話を続ける気はないらしい。
”君も”というあたり、美術部には魔術師が多く在籍しているのだろうか。

「…………」

適当に椅子を取り、魔道具や術式らしい作品の前に座り、”視る”。
下校時間になるまでそれを繰り返していた。

ご案内:「美術部の部室」から織一さんが去りました。