2016/07/02 のログ
ご案内:「部室棟」に鬼灯 怜奈さんが現れました。
鬼灯 怜奈 > 「あー……すずしー……いやざれるー……。」

部室のソファーに寝転がり、冷房をガンガンに焚く。
その居心地の良さたるや、彼女の自室を遥かに上回るほど。

「ここが家でいいよ。家で。」

A4ノートサイズの携帯端末を取り出して、自身の成績をチェックする。
一般的に不良とカテゴライズされる彼女が学業の心配をすることは勿論ない。
部活名の由来にもなっている対戦型アクションゲーム、タイタニックギアについてである。

「なーんか、アタシもウリが欲しいよなあ。」

勝率は7割以上キープをしているものの、番狂わせには程遠い。
機体構成が悪いのか、はたまた純粋に腕の問題か。
自身では答えが見いだせない。ここがひとつの越えるべき壁というものなのだろう。

ご案内:「部室棟」にインフラブラックさんが現れました。
鬼灯 怜奈 > パパッと指先で、武器構成の操作中。
右腕に重量級ライフル、背中には多段ミサイルと、距離を選ばない構成ではある。
それもそのはず。ゲーム開始時に入手できる構成のまま、装備の更新だけを行ってきた。

「なーんかこう……いっそガッツリ替えちまうかァ……?」

鬼灯 怜奈 > 「お。」
インフラブラック > 「フッ……人が作り出した凍気…今はその恩恵に預かるとしよう」

部室棟に入ってくるなり黒いハンドタオルを取り出して汗を拭う暑苦しい格好の少年。
インフラブラックと名乗る彼は異能や特殊能力の類は一切持っていない。

つまり……暑いものは暑いのだ。

「緋の羅刹たる者よ……懊悩の果てに何を望み、何を得る」

エアコンの風が当たる位置にそっと移動しながら告げた。
要は鬼灯に何を悩んでいるのかと聞いている。

ご案内:「部室棟」に鬼灯 怜奈さんが現れました。
鬼灯 怜奈 > 「乙女に向かって誰が羅刹だ。誰が。」

たぬき型クッションを放り投げながら、むくりと起き上がる。

「まあ、なんつーかさ、アタシに合う構成ってこう、別にあるような気がするんだよねェー。」
「それがよくわかんないんだな。」

インフラブラック > 顔にぼふ、とたぬき型クッションがぶつかり、
それを落下する前に左手でキャッチして右手で髪をかきあげる。

「フッ……操作や反射速度に自信があるなら装備を削り重量を軽くし」
「エイムや咄嗟の判断力を誇るならば狙撃型や火力型へ舵を切る」
「ミドルボディは総合力に優れるが、連携を意識しなければ器用貧乏に陥りやすい…クックックッ…」

普通に喋った。
というか、連携云々を言えるようなプレイスタイルではない。単騎突撃していたし。

「フッ……新たなる戦いの地平線において全ては不安定なる天秤が如く…」

鬼灯 怜奈 > 「お前今ちょっと妥協したろ。」
「自分のキャラ妥協したろ。」

鬼灯 怜奈 > 「……まあ、いいけど。」

ソファーの縁にもたれかかる。

「じゃあさー。どんな味方と組むのがラク?」
「部長が『ゆくゆくはチーム戦でランクあげたい』つってたんだよね。」
「実績あるとあのバカデカい筐体を、学園が部室に置いてくれるらしい。」

インフラブラック > 「フッ………私はキャラを作ってなどいない…」
「泰然自若…全ては大極のあるがままに……」

エアコンの風を受けながらも髪を整える。
そして左手のクッションを投げ返しながら、

「私のカレイドスコープ・シャドウは接近戦でないと火力が出せない」
「つまり全てを破壊する魔皇のように武装した火力型が好ましい……」
「私の機体が装備しているエネルギーランチャーは相手を追い込んだり動きを制限したりしやすいからな…」

と言って白い歯を見せてミステリアスに笑った。

「ちなみにこのインフラブラック、苦手な機体は遠距離を完全に捨てた近接特化型だ……」
「天をも焦がす攻勢の焔に灼かれて果てるも運命か…」

鬼灯 怜奈 > 「貼り付いてやっちまうタイプが、貼り付かれるとしんどいっつーのも皮肉な話だな。」

ぽぽんとソファーの空いた側を叩く。
まあ座れと。

「じゃあアタシがそいつを張り倒す間に、後衛を一気に潰してもらう……っつーのもアリか。」

ふんふんと頷きながら、腕部装備のカテゴリをスライドさせていく。

「じゃあショットガンかー……。確かに悪くないかも。」
「あ、そこの冷蔵庫に入れてあるサイダー飲んでいいから。ストックしといたから。」

部費様様だよな、と笑いながら。

インフラブラック > 「相手の頭に射撃の選択肢がなく、完全に近接白兵に手馴れていると距離を取るしかない…それも世界の理だ」

そして遠距離武装のエネルギーランチャーに敵を倒しきる威力はない。
トータルでの勝率はかなり高めのインフラブラックだが、白兵型との一騎討ちでは勝率が極端に悪かった。

サイダーを取ってソファに座ると自分の携帯型デバイスを取り出す。

「ショットガンでの制圧力は驚異的……ただし接近しながらのエイムの練習が要る…」
「フッ……万物流転の大きな流れの中で自分だけが変わらないのは不自然と言える…」

そう言って自分の新たなる機体、ダーククルセイドのデータを呼び出す。
遠距離火力型のその機体、実に勝率40パーセント。
このプリセットでは不慣れが祟っている。

「これも世界の選択か…」
サイダーを一口飲んだ。美味しかった。

鬼灯 怜奈 > 「あっ サブアセン持ってるんだ……うっわあ、こりゃひでえ……。」

目も当てられないとはこのことだろう。
メインだと推定ランク30以上はありそうな腕前なのに。

「とりあえず、メインはショットガンにするとして……重装甲抜けないと困るか。」
「アタシこの間、それで部長ともども負けたんだよなァ、ランク50のアンジェラって奴に。」
「……っしゃ、練習してみるか。エネルギーブレード。」

方向性が見えてきたのか、鼻歌混じりで構成データを書き換えてゆく。

「暇だったらちょっと付き合ってくンない?」
「リ・ベ・ン・ジ・マ・ッ・チ。」

インフラブラック > 「フッ………因果は歪曲し、確率は収束していく…」
「万能が無能の証左であり、全能が神を示す言葉であるならば尚更だ」

インフラブラック少年はこのゲームを愛している。
ゆえに、色んな可能性を試している。
一番勝率が高いのがカレイドスコープ・シャドウであることに変わりはないが。

「ランク50……」

それは100位内ランカーではないのだろうか。
負けたっていうか、勝ち目がある戦いなのだろうか。
思っても自分なりの言葉で出てこなかった。

「いいだろう、このインフラブラックの黒き片翼がお前の力となる……これも因果か」
「それで、相手は?」

鬼灯 怜奈 > 場面変わってゲームセンター『アッセンブルEX10』。
落第街におけるギアランカーたちの聖地。
店奥に設置されたアリーナでは、ゲーム内容を映し出す超大型モニターと、コクピット型の筐体。
それを周囲ぐるりと大きく囲む観客席であった。
急遽のマッチングであり、未だその客足は疎ら。
しかしオンライン中継の視聴者数を示すカウンターは、見る見るうちにその数を増やしていった。

「ランク50、アンジェラだ。」

デニムのジーンズに身を収めた、妙齢でスレンダーな女性が現れる。
傍らにはエキゾチックな風貌の、大柄な男が立っていた。

「そいつはランク51。神斬(カミキリ)だ。滅多に喋らん。」

アンジェラが不機嫌そうに腕を組みながら、インフラブラックを一瞥する。
まるで値踏みをするかのようにだ。

「下層のランカーが我を呼びつけたと思えば、なんだ。」
「『男自慢』か?」

「ぶち転がすために決まってんだろ。年増。」

互いに苛立たし気に睨み合う。

インフラブラック > 「……………」

相手はランク50だった。
その隣はランク51だった。

なのに鬼灯先輩は啖呵を切っている。
何故? Why? えっ今から自分も戦うの?
暑苦しい格好なのに背筋が凍る思いをしている金田洋平17歳だった。

アンジェラに一瞥をもらうと、右手で髪をかきあげた。
「フッ………軍場にあって死の象徴…いや、死そのものが相手とは」
「だが面白い。これだから戦いの地平線は面白い……」
「世界は歪んでいる。神は絵筆を下ろし、救世主は眠りについた…全ては闇の」

いつもよりよく喋る。
だって緊張してるんだもん。

鬼灯 怜奈 > 「だそうだ。今夜はテメーらからそのランクを引き剥がして、お外へ叩き出してやるぜ。」

「ぬかせ。」

中指を突き立てたまま、踵を返す。
ギアドライバーたちは、それぞれ筐体の中へ入っていった。
ステージ選択はランダム。シャッフルされた映像が次々映り込み、最終的に城砦ステージに決まった。
鬱蒼と茂る森に囲まれた、古城をモデルにしたステージだ。

「アンジェラのホーリーブルはクソかてーしクソいてーぞ。」
「異常な量のミサイルと、グレネードランチャーを撃ってきやがる。」
「真っ先に始末しねーとアタシらがあぶねえ。」
「神斬って奴はアタシが止める。あの偉そうなクソ女は任せた。」

3、2、1とカウントダウン。
ゲームスタートの合図と共に、四機全てがフィールドに躍り出た。

「っしゃ、行くぜーッ!」

ランク77、クリムゾンタイド。新アセンの初陣が始まる。