2015/08/28 のログ
ご案内:「禁書庫」にアカズキンさんが現れました。
アカズキン > カタ、カタカタ、カタ

シン、と静まり返った禁書庫。
当たり前ながらこんな所に好き好んで訪れる人もいないのだから静まり返っているのも道理なのだが、そんな静まり返った空間に何かが揺れる音が響く

カタカタカタ、カタ―――

暫くすれば揺れる音が収まったかと思えば一冊の、禁書庫には似合わない何の変哲もない見た目の本が床に落ち、その反動で本が開けば

ぱらり、ぱらり

その本を斜め読みされているかのように速いペースで頁が捲られていくと大きくある文字が書かれている
『赤ずきん』と

その赤ずきんの字が禁書庫に空気に触れたと同時に汚れが落ちるかのように禁書庫に床に落ちていき、その汚れは人型の形に成って行く

アカズキン > 赤い頭巾、フリフリのスカート、摘んだ花を入れる為の手提げバスケット。
見た目は童話で良く見る赤ずきんそのままなのだが、その異質な現れ方からして普通の赤ずきんと違うのが分かる。

その汚れは人型に成る事に成功したのか久しぶりに身体を動かしたとばかりに身体の至る場所を動かし始める。

「アーアー、あー。うんうん。声出すのってこれだね
 それでここは――本の山?あー、うん。思い出してきた。あの糞生意気な魔術師に封印されたんだっけ」
自分が封印されていた本を気に入らないとばかりに蹴飛ばして、周囲を確認する。
本の山。久しぶりに現実世界に帰ってきたアカズキンでも分かる。ココはヤバい所だって

「ヤバい所ってぐらいは分かるけど…ま、出られただけでも良好って事でここは一つっと」
自分が封印されていたであろう本を左手で持ち上げれば右手を鉈のような物に変貌させて「ソイッ」という掛け声と共にその本を叩き斬る。

アカズキン > 「これで同じ話に戻らされる事は無いでしょ。
 っはー、やっぱり現実の空気は美味しいのなんの。
 物語の空気はずっと同じ事しかやらないから味覚が狂いそうだったわー。っはー」
パラパラ、と舞い散る本だったものを見向きもせずに深呼吸を始める。
ここは恐らく図書館のような場所なのだろう。しかも埃の貯まり具合を考えれば人の出入りもしない鍵を閉められているような密室空間。
それでもこの空気の美味しさだとするなら、屋外に出た時の空気の美味しさと言ったら―――想像しただけで身震いしてしまう

「はやく、はやくでなきゃ、おおかみにみつかっちゃう~♪」
スキップ、スキップ&スキップ。この図書館の出口を探す為の第一歩を踏む。
赤ずきんの主人公が言うには全く重みも感じない、それどころか見つかってしまうことを望んでいるかのような、そんな雰囲気も感じ取れる

アカズキン > スキップを踏みながらも周囲を見渡す。
この空間は魔力に満ち満ちていることぐらいは200年以上現世離れしていたアカズキンでも分かっている。
この場でその本を読み漁り、その力を修得してしまうのも悪くはない。

「そんなことしたら、おかあさまにおこられるわ
 わたしはいいこになったんだから」
禁書に手を伸ばそうとした時に脳裏に物語に現れた赤ずきんの母親が思い浮かぶ。
その母親は赤ずきんが祖母の家から帰ってきた後に毎回『おしおき』をしてくる。
道草をしたらダメという言い付けを守らなかった罰だとかなんとか言って毎回、毎回同じ場所同じ時同じお仕置きを赤ずきんに行われる
それを知っていながらアカズキンは200年以上お使いを頼まれ、知っているのに道草をしてしまい、狼に食べられ、帰ってきてお仕置きをされる。

「ア、ァァアアァァッ!」

右腕を再び鉈に変貌させて鬱憤を晴らすように周囲にそれを振り回せば禁書庫にある本は鉈の台風に巻き込まれて切り刻まれるものもあれば地面に落ちて放置されるものもある。

アカズキン > 「わたしはいいこ。わたしはいいこ。わたしはいいこ」

自分の心を落ち着かせるように右腕を胸元に抱き寄せて誰に聞かせる訳でもない独り言をブツブツと呟く。
いいこ。いいこ。いいこ。
アカズキンにとってこの三文字は心を落ち着かせる魔法の言葉であるために事ある毎に呟く事が多い。それも物語の中でも変わりない

「うふふ、私はいい子。いい子だけど、私はやっとあの世界から抜け出す事が出来たの。
 だから何も怖がる事はないじゃない。いい子なんだから、いい子でいる内は怒られる事もないの」

変貌させた右腕を人型の腕に戻す事なく歩き続ける。
この惨事を起こした部屋から出たかったという気持ちが気持ちを急かす。


やがて、禁書庫の扉を見つけると鍵が開いているか閉まっているかを確認する事なく右腕の鉈を振りかぶり、
騒音なんて気にする事なく扉を腕力で破壊していく

ご案内:「禁書庫」に雪谷 憂乃さんが現れました。
アカズキン > 一振り、二振り、三振り。

ガツン、ガツンと鶴嘴を使って壁を破壊しているかのような騒音が禁書庫含め、図書館に響く
三回目を振りかぶる頃にはアカズキンの体格なら通れるぐらいには破壊出来る。
しかし、アカズキンは腕を止める事はない

四回、五回、六回。

「大人はズルいなぁ。子供にこんなことし続けるなんて」
もしかしたらアカズキンをお仕置きしていた母親の気分はこんな感じだったのかもしれない。
楽しい、暴力を振るう事はこれだけ楽しいのか。
アハハ、という短い笑いとともに鉈を振り回し続ける

雪谷 憂乃 > 夏もそろそろ終わる今日この頃の事である。
怪談のシーズンも潮時か。

だがしかし、思ってもみなかった。
私が、私自身が―――。

「…?!」

怪談そのものに出くわすだなんて。
いや、言ってしまえば吸血鬼も人間にとっては怪談なのだろうが。
しかし、警戒心が強い私には尚一層この今の状況が怪奇的に"聞こえる"のだ。

そう、聞こえる。
まだ、そこに何かいるかは分からない。
ドゴォーーーン!と、豪快に響き渡る音。
イイコイイコと囁くように響く少女の声。

「え…ええと…その。…ここ…から…だよね?」

さて、
あ…ありのまま 今 起こっている事を話そう
「私は 図書館でいつも通り働いて、本の整理をしていると
思ったら 怪異の音に聞き耳を立てて、いつのまにか禁書庫との狭間に立っていた」
何を言っているのかわからないと思うが、私も何が起こっているかわからない…
頭がどうにかなりそうだ…地縛霊だとか吸血鬼だとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わう

―――のだろうか?


絶え間なく何かを叩きつける様な音が響く。
…禁書庫に侵入者?という予測を立てるが、残念ながら逆である。
その彼女を形容するなれば…そう―――「禁書庫からの脱獄者」であろうか。

その幾重かの壁を隔てて向こう側、一体何がいるのだろう。

アカズキン > 八回目を叩いた頃にはもう一度ガシャァン、と騒音をたてて、
扉は巨人でなければ通れるぐらいの空洞になって、その向こうには満足しきっている少女がポツンと立っている。
その見た目は絵に書いた赤ずきんが立っており、扉の向こうの雪谷に気付くと何の躊躇いもなく近付いていき、一言

「こんにちわ?こんばんわになりますか?お姉さん?」

赤ずきんが雪達の顔を見上げるぐらいまでに近付いて先程味わったであろう怪奇現象の正体とは思えないように満面の笑みを向けている
右腕は近づく間に元の人型の腕に戻っている。

「お姉さんは、え、えと。何人ですか?イギリス?それともフランスのヒトですか?」

先程禁書庫の中で見せた荒れている様子を感じさせない、まるで仮面を被ったかのように雪谷へ問いかける。

雪谷 憂乃 > 人一人、余裕で通れるレベルの穴が開いた。
ひび割れた扉。豪快に散らばる断片と硝煙。思わず一歩後退する。

それから、軈て見えるのは「赤ずきん」だった。
何処をどうとってもこれから森に行くような、そんな格好をしている。
一切の間をなくしてこちらへと近寄ってくる物だからまた一歩、ワンテンポ遅れて後退。

「え?!ひゃい?!」

取り敢えず、びっくりしたけれど…。
普通の女の子の様だ。
やたら怪力なのだが表情を見るに好意的?

「あ、はい。こんばんは。ですね。」

後ろに下がってもその赤ずきんはきっと私の方へと一歩歩んでくるのだろう。
怪異現象、ここに出現せり。
外を見ればわかる通り、今は真っ暗。
ついでにいえば私は吸血鬼なので夜しか出てこない。基本的には。

「ん?私は…そうですね、異世界人ですがルーツ的には日本人ですかね。…ハイ、これ。」

黒い髪をかき上げれば和製の蛇の目の日傘を広げて見せる。和風テイストな吸血鬼です。
多少引き攣りながらも、お返しばかりの僅かな笑み。

「…それで、その。貴方は禁書庫で…何を?…というか、貴方は何者ですか?!怪異現象ですか?!」

壊したとしてもどうせ明日には生活委員諸々が直してくれるのだが。
紫色の瞳をおっぴろげながら赤ずきんのコスプレとしか思えない少女に問。

アカズキン > 「こんばんは、なるほど夜なんですね、夜…夜。」

至って普通の事を大事にするかのように同じ言葉を繰り返す。
それはまるで時差ボケを避ける為に必死に時間を確認する外国人のようだが、アカズキンは分けてしまえばイギリス人ということになる。
今はそんな200年の時差ボケを埋める為に、夜であることを身体に覚えさせるかのように繰り返す呟く

「ニホン?あぁ、えーと。確か…江戸?ここは江戸?…いや、流石に違いますよね」

日本という言葉にあまりしっくりと着ていないのかうぅん、と唸っている。
傘を広げる様子を見れば「夜型の人?」と簡単ななぞなぞのヒントを探している子供のように首を傾げている

「へぇ、ここ禁書庫って言うんですか。確かに沢山本がありましたもんね。
 何者かって言われても…うーん、赤ずきんとしか私は言い様が無いですよ。」

怪奇現象と言われると突然むせ始める。そんな呼び方をされるとは思ってなかったらしく、笑いを堪えきれなかったようだ。

「か、怪奇現象って、私はただこの禁書庫から抜けだしただけなんですよ?」

赤ずきんは先程自分で作った扉の残骸を指差すとそういえば壊したんだった、と苦笑いを浮かべている

雪谷 憂乃 > 「夜ですね。ハイ。」

すっとそこの窓外を掌で示そう。
その先には真っ暗な空が…あるのだろうか。
兎も角。…彼女も何だか今こっちにやってきた!みたいな、そんな雰囲気である。

「…エド?…はて。いえ、知っていますが江戸ではないですね。
今は…なんでしたっけ。忘れちゃいました。
正解。私は夜型ですが…まぁ、人ではないです。ですが、扱いとしては人みたいですが。」

てへ、と薄く笑って見せる。

「んーと、ここは、常世島って言うらしいですね。
それで、ここは図書館なんです。その中でも、取り分け危険な禁書庫、ですね。」

どうやら、彼女も異邦人か、若しくはそれに似た境遇なのだろう。
なら、この慣れていない対応や、先程暴れた上でもにこにこしているのも分かった。
だったら、邪険にもせず、「お姉さん」と呼ばれた手前もあるし、年上として教えてあげるのがセオリーだろう。

「…赤ずきん?その、童話の…?
確かに、赤いずきんをかぶっていますけれど…御名前は?」

じー、と興味津々に赤ずきんをなのる少女に視線を遣る。
少女だ。赤ずきんだ。…うん、確かに赤ずきんだけど…。

「あ、そうですそうです。私は雪谷って言います。…図書委員です。
人の名前を聞くときは自分から、ですし、ね。」

慌てふためいて後付する。自分を指差して自己紹介。
そう付け加えてから、改めて彼女に視線を遣ろう。

「禁書庫から…?
んー…と。
その…よく分からないですが…ひょっとして、別の世界にいらっしゃいました?
全くここと雰囲気が違う、世界が丸ごと変わった、みたいな。」

それとなく、彼女の所在を尋ねて。
扉の残骸に一瞥を遣れば、困った様に僅かにだが顔を顰めた。

アカズキン > 「オォゥ。真っ暗です。」

口では驚いている様子だが、身体は特に驚く様子を見せていない。所謂棒読みと言えるようなものだ。

「ふーん?私が知ってる限りだと日本は江戸っていう幕府?に牛耳られてたとかなんとか聞いたけど違ったんだ。
 ま、違うなら違うで過去の事ですから捨て去っちゃいましょー」

はいデリートーとかそんな事を言いながら自分の中の記憶を一つ過去の出来事として忘れ去る事にした。
この女から話を聞いてみる限りかなりの時間が過ぎている、というのが分かる。
それがどれだけの時間かは追々確かめるとして

「トコヨ、常世島?って、お姉さんがらしいって言ったら私も不安になっちゃいますよ。
 へー…やっぱり危険だったんですね。あの中」

禁書庫の中に漂っていたピリピリ来る嫌な魔力のようなもの、瘴気にも似たようなものだったが、今は図書館よりの為先程より空気は美味しくはなっている。

「御名前はーって聞かれても困っちゃうかな。
 ずっとアカズキンって呼ばれてたから元の名前なんて忘れちゃった…こほん、忘れちゃいました。
 だから、呼ばれ慣れてるアカズキンで大丈夫です」

一瞬口調が崩れるが咳払いをして敬語に治す。
実際に元の名前はあるにはあるのだが、200年も呼ばれないで違う名前、アカズキンと呼ばれ続けていれば忘れてしまうものだ

「ユキタニ、それにトショイイン。
 中々ここは覚える事が多そうですね…一つ一つ覚えていくしか無いですか」

困ったようにうぅむ、と唸っている。
郷に入れば郷に従え、という言葉は万国共通らしく、物語の中でも無理矢理従わされたものだ

「あー…えぇ、と別世界。はい。別世界ですね。
 その、ユキタニさんの言う赤ずきんの世界って言ったらいいのでしょうか」

その世界から現れた身としてはまず信用され辛いだろうが、赤ずきんという単語を知っているならばここから理解してもらうしかない。
理解されないならば気にしないで欲しい、と一言を添えるだけでいいのだから気にしないで欲しいという言葉は便利である

雪谷 憂乃 > 「ん、真っ暗ですね。月光が綺麗で、…気持ちいいです。」

この辺は吸血鬼独特の感性である。

「んー…と。日本についてもあまり知らないんですけど…。和服とか、日傘って良いですよね。
その辺りは、歴史で習うことでしたっけ…あ、ええと。」

相手ののりに付いていけず。
補てんしようと思ったらいつの間にかデリートされていた。なにをいっているか以下略。

「ええ、あそこは危険ですよ。
世界各所から集められた危険の名前を冠する本が一杯らしいですから。
でも、物好きは入って行くみたいですが…どうにも。」

下手にはいれば命を落としかねないような場所でもある。危険区域と言うやつだろう。
私も、今はこうして近づいているが、あまり好き好んで近寄る事はない。

「は、はぁ…。あ、べつにタメ語でも構いませんよ。
…では、アカズキンと…しかし長いですし。やはり御名前はあった方が…要りませんか。」

どっちつかずに相手の言葉につけたしたり、自分で打ち消したり。

「はい、雪谷です。…図書委員は忘れてくれてもいいですけどね。
雪谷と御呼びくだされば、と思います。そうですね…何処に行っても、覚えることは多いです。」

こくん、と小さく頷いて、やや呆れたように共感。

「…うーん。成程。赤ずきん、読んだことはありますよ。
大人向けの赤ずきんも、子供向けの赤ずきんも。
…貴方はその世界からやってきた、のですね。多分、その…やってきてそう長くない感じ…ですよね?」

常世では常識で縛られてはいけない。
まさか、そんな手の込んだどうでも良い嘘を吐くこともないだろうし、本人がそういうならそうなのだろう。
何より、彼女の振る舞い一つ一つが、この世界に慣れていない事を示している。
赤ずきんの世界でこんな破壊的な赤ずきんがいるかどうかはさておきだが。

アカズキン > 「月光が綺麗なのはわかりますけど…気持ちいいって」

少し引き気味だが、それこそ人それぞれの感性なのだからこれ以上突っ込むのはやめておくことにした。
目の前の人物は折角この島についての情報を抱えているのだから無碍に怒らせて情報を引っ込ませるのはこちらにとってあまり利はない

「へー…危険なんですか。
 それで、そこから出てきた私が危険とか思ったりはしないんですか?
 もしかしたら今私がここから雪谷へナイフを刺したりとか―――するかもしれませんよ?」

一瞬雪谷を睨みつけながら殺意を纏わせるがそれらはすぐに消え去って、アカズキンはあははーと笑い飛ばしている。

「それじゃあ遠慮なく…
 流石にずっと呼ばれていた名前を今更捨てろーなんて言われても私がずっと首傾げちゃうだけだと思うんだ。
 呼びにくいかもしれないけどアカズキンって呼んでくれると嬉しいかな。」

タメ語、というものは良く分からなかったようだが
どうやら恐らく口調を崩したものなのだろう、と勝手に判断して咳払いを一つして肩の力を抜いて会話を続ける。

「うん。その世界からやってきたって言っても間違いじゃないかなー。
 それで禁書庫で封じ込められてたけど何故かその封印が弱まってたから抜け出してきたって訳。
 こっちにきてからまだ一時間とかそのぐらいじゃないかなって」

こちらの世界に来てからどのぐらい経ったか数えるように指を追って計算している。
正確な時間が分かる訳ではないが、あくまで体感時間として雪谷の参考になれば良いぐらいだろう。

雪谷 憂乃 > 「そういうものです。もっと近くで見て見たら、分かるかもしれませんよ。
眩いほどの月光は夜の象徴、ですから。」

目を細めて月を見遣る。引かれても遠慮する様は無いし、悪びれる様もない。
夜とは、即ち私の時間だ。

「ん。それは…怖いですね。やめてください、死んじゃいます。
けど、本当にそれをするなら、既に私は死んでいるかと。
これからそれをするにしても、貴方はキチガイか、それとも私に恨みがあるかのどちらかですね。
こうして、御話していますから、キチガイではないでしょう。それに、あなたから恨みを買った覚えはないです。
というか、話の流れからして恨みを買う事もありません。
証明完了。…どうでしょう?」

但し殺気には引き攣った笑いを浮かべながら後退する。警戒心が旺盛。

「そうですか。ではアカズキンさんと呼ばせて頂きましょうか。
私はこちらに来る際、名前変えましたけどね。
色んな名前の人がいますし…。」

あまり念を押すでもなく。やはり相手次第と言ったところの言葉だった。
さてアカズキンと呼ばれていたと言うが、やはりそれは赤ずきんの物語の主人公として、か。

「…成程。つまり貴方は禁書から出てきた怪異なのですね。」

冷静に解釈。
怪異といっても、一口に他を害するものばかりではなかろう。
建物に損害は出ているが、こうして話していられるのだから今のところは大丈夫だろう。

「一時間…?とすると、来たばかり、なんですね。
それにしては、大分落ち着いているようですが…?あ、でも壊しまくってたし落ち着いてもないんでしょうか…うーん。
それで、その…貴方の目的は何ですか?わざわざ自分で封印から出てくるだなんて。」

だが、警戒心の強さはやはり露見。
(自分もだが)相手が怪異存在だと知れば次の行動を伺う様に、じっと見つめる。
先程の破壊も彼女がしでかしたのだし、自分で証明しておいて自分の証明が不安である。
彼女が何をしに出てきたかとか、その辺り、信用に足るかどうか伺わねば。

アカズキン > 「アハハッ。中々面白い事を言うヒトだ。
 そうだね。私は今雪谷から情報という件で助けられてるからやる必要無いもんね。
 でも気をつけなよ。話をして油断しているところにサクっとヤっちゃうヒトもいれば、気が向いたから刃を向けるってヒトもいる。
 気をつけた方がいいよ?雪谷」

けらけらと笑いながら証明完了という言葉を崩すようなそんな助言。
これまでの人生経験という訳ではないが少なくとも
後者はそこにいるアカズキンの性格なのだから人生経験というよりは実在している物だから何もおかしくはない。

「ウンウン。アカズキン。数百年ぐらい呼ばれてるだけあってグッと来ちゃうね。」

アカズキンと呼ばれてうんうん、と馴染むように頷いている。
この名前は悪いことしか思い出さないが、だからといって捨てるにも捨てれないからどうしようもない

「怪異。ウーン、怪異なのかな?
 確かに私は本に封じ込められた存在だったけど、怪異と呼ばれる程ではないと思うんだよねー」

怪異という自覚が無いのは怪異という分かりやすい特徴かもしれない。
しかしその怪異と呼ばれるアカズキンは見た目は幼気な少女な為に中々パッと見て怪異と判断するのは難しいだろう…それこそ、あの扉を破壊する姿さえ見ていなければ

「目的…えーと、本から出ること?だから実質目的は達成してるんだよね。
 だからこれから好きに常世島?って所で生きていこうかなって。ここなら私を封印出来るヒトは中々いなさそうだし、さ
 それに――私は至って落ち着いてる、イイコ、ですよ?

にこり、と寒気を感じさせるかのような笑みを浮かべ、
思い出したかのように雪谷の横をすれ違って外へ、屋外へ続く道を歩いて行こうとする。
今のアカズキンに欲しいものは外の空気なのだから